ゲームとしての現在のタロット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 06:22 UTC 版)
「タロット」の記事における「ゲームとしての現在のタロット」の解説
ヨーロッパ大陸部では、タロットは現在でもゲームに使用されている。トランプと同じく様々な遊び方があるが、多くのゲームではトランプのトリックテイキングのルールに従う。特定のカードに得点がある、ポイントトリックゲームである。 とくにフランスと、旧ハプスブルク君主国諸地域(中央ヨーロッパのオーストリア・ハンガリーなどの諸国)で盛んであるが、両者でカードのデザインやルールがかなり異なる。 フランスでは、78枚のカードがそのまま使われる。切り札以外のスートはトランプと同じスペード・ハート・ダイヤ・クラブで、ジャックとクイーンの間に騎士(cavalier、略号C)が加わるため、56枚になる。切り札は1から21の番号がついており、番号の大きいほうが強い。そのデザインはオカルト用の大アルカナとはまったく異なっている(1=個人の狂気、2=幼年、3=青年、4=壮年、5=老年、6=朝、7=昼、8=夕方、9=夜、10=地・風、11=水・火、12=踊り、13=買い物、14=狩り、15=絵、16=春、17=夏、18=秋、19=冬、20=遊び、21=集団の狂気)。ゲームをプレイするにおいては番号のみに意味がある。愚者のカードは「l'Excuse」と呼ばれ、通常はマンドリンを持った道化師として描かれている。ゲームの上で切り札とは異なる独特の特徴を持つ。 中央ヨーロッパでもスートはフランス式のスペード・ハート・ダイヤ・クラブになっているが、トランプのスカートと同様、低位の数字札が存在しない。また、愚者は最強の切り札として扱われ、フランスでのような特殊な役割は持っていない。オーストリアでは通常54枚で、切り札22枚とそれ以外32枚(絵札16枚と高位の数字札16枚)よりなる。数字札は、黒いスート(スペード・クラブ)では数字が大きいほど強く(K > Q > C > J > 10 > 9 > 8 > 7)、赤いスート(ダイヤ・ハート)では数字が小さいほど強い(K > Q > C > J > 1 > 2 > 3 > 4)。これはうんすんカルタにも見られる古い特徴である。40枚しか使わない地域もある(切り札の2・3を使用せず、数字札は黒いスートの10と赤いスートの1しかない)。「ケーニヒルーフェン」というゲームでは、切り札の1・2・3・4は「Vogel(鳥)」と呼ばれ、特別な役割を持っている。 イタリアではラテン式スートが保たれており、数札は中央ヨーロッパと同様にスートによって強弱の順序が異なる。切り札のデザインも伝統的なデザインに近いが、順序はかなり異なっていて、天使( = 審判)がもっとも強い。フランス式と同様に、愚者は通常の切り札とは別の特徴を持つ。 以下はフランスの公式ルールにしたがって述べる。 原則として4人で遊ぶ。ゲームは反時計回りに進行する。競りと最初のトリックのリードはディーラーの右隣からはじめる。ディーラーはプレイごとに反時計回りに移動する。 手札は18枚で、残り6枚は伏せておく。この6枚を「chien(犬)」と呼ぶ。競技者は順に競りを行う。すなわち自分が立つことを宣言するか、パスする。宣言の種類は以下の4つのレベルがある。レベルの高い宣言はそれ以前のレベルの低い宣言に勝つ。 prise (ふつうの宣言、chienを使用する。chienの点数は宣言者のものになる) garde (priseと条件は同じだが、勝っても負けても点数が倍になる) garde sans chien (chienを使用しない。chienの点数は宣言者のものになる。点数は4倍になる) garde contre chien (chienを使用しない。chienの点数は宣言者の敵側のものになる。点数は6倍になる) 競りに勝った宣言者は、ひとりで残り3人の連合軍と戦う。chienを使用する契約の場合、宣言者はchienを表返してから手札に加え、かわりに不要な6枚を裏返しに出し(切り札は出してはならない)、それからプレイをはじめる。実際のプレイは通常のトリックテイキングのルールに従うが、リードと同じスートのカードを持っておらず、かつ切り札を持っている場合は、切り札を出さなくてはならない。また、切り札を出す場合は、場に出ているすべてのカードに勝てる切り札を持っている場合、それを出さなければならない。勝てる切り札がない場合は、どの切り札を出してもよい。切り札もない場合は、任意のカードを出してよい。 愚者はトリックテーキングのマストフォローのルールに従わず、いつでも出せる。愚者は通常もっとも低いカードなので、トリックに勝つことはできないが、愚者のカードはそのトリックに勝利した人ではなく、カードを出した人のものになる。 各カードはランクにより異なる点数を持っている。切り札の1・21および愚者の3枚は「oudlers」と呼ばれ、1枚あたり4.5点。それ以外はキングが4.5点、クイーンが3.5点、騎士が2.5点、ジャックが1.5点、それ以外が0.5点となる。全部のカードの点数を合計すると91点になる。 最終トリックで切り札の1が出た場合は、追加点10点がそのトリックに勝利した側に与えられる。 取らなければならないカードの点数には基本点があり、oudlersがなければ56点、1枚なら51点、2枚なら41点、3枚なら36点になる。宣言者が基本点以上の点数を取ったら宣言者の勝ちとなり、残り3人が点を宣言者に支払う。点数が基本点未満ならば、宣言者が残り3人に点を支払う。支払う点数は (25 + 基本点との差の絶対値 + 最終トリックで切り札の1が出た時の追加点)×(宣言により1・2・4・6のいずれか) となる。 全部のトリックを取った場合(グランドスラム)、200点のボーナス点がはいる。あらかじめ宣言しておけば倍の400点になるが、宣言しておいて失敗した場合は200点を支払わなければならない。 最初に配られたカードの中に切り札および愚者が10枚以上あったら20点、13枚以上なら30点、15枚以上なら40点のボーナス点がはいる。このボーナス点を得るには最初のトリックで自分の番が来た時にあらかじめカードをさらして宣言しておく必要がある。なお、カードをさらしておきながらプレイに負けた場合は、カードをさらした側のメンバーはそれぞれボーナス点を逆に相手に払う必要がある。
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