アンビバレント
アンビバレントとは「相反する感情や考え方を同時に心に抱いている」さまを指す言葉。英語のambivalent をカタカナ表記した外来語。英語の ambivalent の品詞は形容詞で、日本語の「アンビバレント」は形容動詞の性格を持っている。ambivalent の名詞形は ambivalence で、日本語でも「アンビバレンス」が名詞として用いられる(「相反性」などと訳されることも多い)。
日本語で「アンビバレント」という言葉が使用される場合には、人間の感情の状態を表すために使用されることが多い。ある対象に対して肯定的な感情と、否定的な感情を同時に持っている場合などに、「アンビバレントな感情」というような表現で使用されることがある。
相反する感情が併存している(=アンビバレントな)状況は、どっちつかずの状態を維持していることでもあり、文脈によっては「曖昧」と訳しうる意味合いで解釈されることもある。これはどちらかといえばネガティブなニュアンスを含む。あるいは、2つの価値観を同時に持っているという点で「両価性を持っている」という意味で使用されることもある。この場合にはどちらかといえばポジティブなニュアンスを含むこともある。
「アンビバレント」は個人の心境だけでなく集団の状態を表す言葉としても用いられることがある。たとえば、一個の集団の中に見解を異にする人が含まれているような場合「アンビバレント」と形容できる。
アンビバレント
アンビバレントとは、心理学の用語であり、同一の対象に対して同時に相反する感情を抱く状態を指す。例えば、愛情と憎しみ、喜びと悲しみ、希望と絶望など、二つの感情が同時に存在する状態を示す。この言葉は、人間の複雑な感情の一面を表現するために用いられる。 アンビバレントは、一般的には矛盾した感情や態度を持つことを指すが、特に人間関係においてよく用いられる。親子関係や恋愛関係など、深い感情が絡む関係性において、愛情とともに怒りや憎しみを感じることは珍しくない。このような状況を表す際にアンビバレントという言葉が用いられる。 また、アンビバレントは、選択肢が二つある状況において、どちらを選ぶべきか決めかねる心情を表す言葉としても使われる。選択肢それぞれに対して肯定的な感情と否定的な感情を同時に抱くことから、決断が難しくなる状況を指す。
アンビバレント
「アンビバレント」とは・「アンビバレント」の意味
「アンビバレント(ambivalent)」とは、相反する感情や考えを同時に持ったことで、葛藤状態に陥った精神を意味する心理学用語。例えば「愛憎併存」しているような場合を指す。「アンビバレンス(ambivalence)」ともいう。なお、「アンビバレント」は医療分野でよく用いる言葉のため、その意味を問う質問は看護師国家試験における頻出問題となっている。「アンビバレント」の元となった「アンビバレンス」は、スイスの精神医学者オイゲン・ブロイラー(Eugen Bleuler)が1914年に発表した論文で初めて使われたとされている。オイゲン・ブロイラーは統合失調症における基本的な症状に着目し、(人は)相反する傾向や性質あるいは傾向を、精神の中に持つことを発見。これを「アンビバレンス」と呼んだ。
オイゲン・ブロイラーは論文のなかで、精神病に罹患した母親が子どもを毒殺してしまった例を挙げている。母親は、子どもの死に対して、深い悲しみで涙を流すと同時に、口元に笑みを浮かべた。オイゲン・ブロイラーによると、精神病に罹患した者がこのことを意識的に行っているわけではない。健常者であるなら(熟慮あるいは本能で)自らの主観的な評価によって、不利益を最小におさえ利益が最大限となるように行動する。だが、ある主の精神疾患によって分裂した精神状態は、利益と不利益を同時に評価しようとしても、それらを統一的な均衡に導けない。これが「両価性(アンビバレンス)」だとオイゲン・ブロイラーは定義した。
子どもを毒殺した母親の例では、母親は過失ではなく争いの果てに子どもを殺害していた。母親が夫を愛していなかったため、2人の間にできた子どもの存在に対して、強い恐怖を持ったことが殺害の理由だ。子ども毒殺するにいたって望む結果を得たため、母親は顔に笑みを浮かべる。だが、同時に自らの子どもを愛していたため、悲しみで涙したのだ。しかし、精神の両面性を統一的な均衡に導けずに、笑みと涙の両方が現れたものと考られる。
オイゲン・ブロイラーはさらに統合失調症における基本的な症状は4つあると定義し「4つのA」と名づけた。それぞれの症状は「連合弛緩(loosening of association)」「感情鈍麻(flattening of affect)」「自閉(autism)」「両価性(ambivalence, アンビバレンス)」である。だが、今日では統合失調症の診断基準において、オイゲン・ブロイラーの定義は用いられていない。
なお、「アンビバレンス」の元となった語はドイツ語の「ambivalenz(アンビヴァレンツ)」。これが英語で「アンビバレンス(ambivalence)」と呼ばれるようになり、形容詞化して「アンビバレント(ambivalent)」となった。日本語に訳す場合は「両価(感情)」「両価性」「両面価値」といった語となる。だが、訳さずにそのまま「アンビバレント」と呼ぶのが一般的となっている。また、日本語では「アンビバレンス」と「アンビバレント」をあまり区別せずに用いられている。どちらの語も同じ意味合いであると捉えてよいだろう。
「アンビバレント」の熟語・言い回し
アンビバレントな気持ちとは
2つの互いに相いれない感情の間で、揺れ動く精神状態を表す言葉である。これは、誰もが持つ感情の1つだ。例えば「おいしいものは食べたいが太りたくはない」「外に出かけたいが面倒だ」「異性の事が気になっていじわるな態度をとる」といったものは「アンビバレントな気持ち」の状態といえるだろう。また、心理学ではアンビバレントな心理状態を指して「アンビバレントな感情」と呼ぶ。これが誤用され「アンビバレントな気持ち」と言われることも少なくない。
「アンビバレント」の使い方・例文
・人は常にアンビバレントな矛盾を持った存在なのだ。・アンビバレントな状態を解決しなければならない。
・彼らの関係は愛憎渦巻くアンビバレントなものである。
・買うべきか買わざるべきか、僕はアンビバレントな状態で悩んでいる。
・その対立には両者傾聴すべき点があったので、私はアンビバレントな気持ちで眺めていた。
・その社会政策の評価はアンビバレントなものだ。
・私を捨てた父に対してアンビバレントな気持ちを抱いてしまう。
・アンビバレントな心理的摩擦に疲れている。
・両国の関係はアンビバレントなもので、憎んではいるものの、互いを失ってはやっていけない。
・「保守」と「進歩」はアンビバレントな関係にあると必ずしもいえないだろう。
アンビバレント
アンビバレント
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/05 14:47 UTC 版)
アンビバレント、アンビヴァレント(英: ambivalent)は、ひとつのことに2つの相反する感情を抱いている状態。
音楽
アルバム
- AMBIVALENT - 布袋寅泰のアルバム(2007年)
- Ambivalent (ユッコ・ミラーのアルバム) - ユッコ・ミラーのアルバム(2023年)
楽曲
- AMBIVALENT (Anli Pollicinoの曲) - Anli Pollicinoの配信シングル(2015年)
- アンビバレント (欅坂46の曲) - 欅坂46のシングル(2018年)
- アンビバレント (Uruの曲) - Uruのシングル(2024年)
その他
- Ambivalent - アメリカ合衆国出身のアーティスト、プロデューサー、DJ[1]
- アンビバレント(Ambivalent) - アイルランド産出の競走馬(2009年2月26日生)。主にイギリス、フランス、アメリカで活躍[2]。
- 最愛アンビバレント - 葛井美鳥の漫画シリーズ
- アンビバレント - 日本産出の競走馬(2020年4月8日生)[3]
脚注
出典
- ^ “Ambivalent”. Resident Advisor. 2022年11月19日閲覧。
- ^ “Ambivalent(IRE)”. JBISサーチ. 2022年11月19日閲覧。
- ^ “アンビバレント”. netkeiba.com. 2022年11月19日閲覧。
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