はしご自動車各種
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はしご付消防自動車 はしご付消防ポンプ自動車 屈折はしご付消防自動車 屈折はしご付消防ポンプ自動車 高所の消火及び救助に使用される。日本では最低10メートルから最大50メートル(規格地上高50.3メートル)の高さまで届くものもある。メーカーによってラインナップは異なる。なお国内最長は2020年時点、金沢市消防局、岡崎市消防本部、徳島市消防局、埼玉県南西部消防本部、豊橋市消防本部配置の54.7メートル。消防車の日本最大手メーカーであるモリタによると、車体サイズの法規制と技術力の限界がこの高さであるという。 はしご車自体が高額なため、更新時期は地域によって異なり、平均で14年から16年、遅いところではオーバーホールを重ね30年超とばらつきがある。はしご車は安全性を担保するため法律によりオーバーホール(大規模分解・修理・改良)が購入後7年から8年ごとに義務付けられている。 はしごが長いタイプだと車体が大きくなるため、道が狭いところなどでは進入が困難になったりはしごの稼働範囲に制限がでてくる。そのため日本では30メートルタイプのはしご車が標準車両として全国に普及している。また、高層ビル・マンションの多い地域では40メートルから50メートルの長いタイプが、道の狭い地域や中層ビル・マンションが多い自治体では10メートルから20メートルの短いタイプのはしご車を配備している。 はしごの角度は仰角のみではなく、俯角、すなわち斜め下方向にはしごを伸ばす機能を有するものもあり、例えば水難事故等で、はしご車の部署した位置よりも低い位置に要救助者がいる場合にも活用できる。 はしご部分には、人を乗せる機構として、バスケットやリフターが設けられている。1950年代までのはしご車には、はしごにバスケットやリフターは無く、1960年代に技術の進歩により、リフターが開発された。1980年代からは、はしご先端にバスケットが付けれるようになった。リフターは、はしご部分を上下するリフト(エレベーター)であり、はしごを目的とする位置に一度セットすれば、連続的に消防隊員を送り込んだり、救助者を救出することができる。バスケットは、はしご先端部につけられた籠であり、3人から5人乗りが標準である。消防隊員の搭乗や活動のしやすさ、救助者の安心感はあるが、人員の乗り降りには、毎回、はしごを縮めて、はしご先端のバスケットを地上まで動かす必要があり、効率が悪い面もある。最近では、バスケットとリフターを併設するはしご車もある(放水時は、耐荷重90キログラムから270キログラムほど制限される)。また、近年では車椅子対応型はしご車も登場している。 先端屈折機構を有するはしご車はメーカー各社から発売されており、バスケットの手前数メートルの位置ではしごの先端が屈折することにより、電線等の障害物を避けてはしごを目的とする位置に接近させることができる。ドイツのマギルス製先端屈折はしご車は先端屈折機構に加えて、先端が1.2メートルほど伸縮するため、屈折部の梯体が2連式になっている(通常の先端屈折はしご車は1連)。 この他に、はしごを屈折させる屈折はしご車(シュノーケル車。標準型、Σ型、先端屈折型)や、はしごではなく、先端に放水銃と破砕用クラッシャーを装備して隊員が近付けない場所への放水が可能な屈折放水塔車(スクアート車)がある。これらの車両は高所放水車とも呼ばれる。高所放水車は、福島第一原子力発電所事故で東京消防庁による使用済み核燃料プールへの放水活動に使用され活躍した。近年は高所放水車の機能と大型化学消防車の機能を併せ持つ大型化学高所放水車も登場している。大型化学高所放水車は高所放水車と化学消防車の機能を搭載している。石油コンビナート火災に対応する大型化学車、泡原液搬送車、高所放水車(屈折放水塔車など)の3台をまとめて化学車3点セットと呼ばれていたが、大型化学車と高所放水車の機能が一つになったことで大型化学高所放水車と泡原液搬送車の2点セットの運用が可能となった。 海外輸入のはしご車を導入する消防本部もある。2019年に、スカニア・Pシリーズをベースとしたイヴェコ・マギルス製のはしご車が、名古屋市消防局に納入されている。また、2020年にはベンツの特装車向けシャーシエコニックをベースとしたローゼンバウアー製のはしご車が東京消防庁に納入されている。同じく、2020年にはにいすゞ・ギガをベースとした日本機械工業製のバス型はしご車が千葉県の山武郡市消防本部に納入されている(車内はバス型のため、広くまた、後部の積載庫は梯子操作時に邪魔にならないように、可動式になっている)。また、マギルス製はしご車はアウトリガーが通常の国産メーカで採用されているH型ではなく、バリオジャッキと呼ばれるX型のアウトリガーである。H型は縁石など障害物を乗り越えて設置できる点がメリットだが、軟弱地盤に弱いというデメリットがある。X型は駐車車両の下に設置可能、H型より張り出し量が少なく、軟弱地盤に強い点がメリットだが、比較的傾斜地に弱く、アウトリガーを張り出した先に縁石など障害物があった場合、設置できないため車両を移動させなければならず、タイムロスになる点などがデメリットである。 日本国内では国内メーカーのモリタ社製のはしご車がトップシェアを得ている。理由として、日本国内トップのトラックメーカー日野自動車と共同ではしご車専用シャーシ「MH型」「MHII型」を開発し、採用している点や、はしごの動きに合わせて動作する伸縮水路をはしご本体下部に装備した「水路付はしご車」など定期的に新機構を投入して改良している点が挙げられる。 はしご付消防車(50メートル級)日野・スーパードルフィンプロフィア(札幌市消防局・更新済廃車) はしご付消防車(40メートル級)日野・モリタ・スーパージャイロラダーMH(三郷市消防本部・更新済廃車) はしご付消防車(30メートル級)日産ディーゼル・ビッグサム(名古屋市消防局・更新済廃車) はしご付消防ポンプ自動車日野・TE120(元沖縄市消防本部) はしご車(スーパージャイロラダー(40メートル級)日野・プロフィア川越地区消防局 Σ型屈折はしご車日野・レンジャープロ(朝霞地区一部事務組合和光消防署) 屈折放水塔車日野・スーパードルフィン(東京消防庁・更新済廃車) 屈折放水塔車日野レンジャー(東京消防庁) 水槽付小型はしご車(15メートル級)(稚内地区消防事務組合消防署豊富支署) 屈折はしご車(札幌市消防局・更新済廃車) 国産モリタ社製の先端屈折はしご車(日野・モリタ・スーパージャイロラダーMH 日本製車台にドイツ製はしごを搭載したもの(40メートル級)日野・イヴェコ・マギルス プロフィア(東京消防庁丸の内消防署) 2軸型のはしご車日野・モリタ・スーパージャイロラダーMH(東京消防庁中野消防署) 先端を屈折させる先端屈折式はしご車(豊田市消防本部) 屈折はしご車(足利市消防本部 屈折はしご車(さいたま市消防局) 二軸型はしご車(東京消防庁府中消防署)
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