『論考』出版とは? わかりやすく解説

『論考』出版

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/26 16:45 UTC 版)

ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン」の記事における「『論考』出版」の解説

ウィーン戻ったウィトゲンシュタインは『論理哲学論考』の原稿をヴィルヘルム・ブラウミュラー社へ持ち込んだが、印刷代を自分で持つなら出版してもよいとの返事し帰ってこなかったため、この出版社からの刊行断念するというのもウィトゲンシュタイン復員し間もなく親類弁護士説得耳を傾けずに全財産放棄していたためである。次いで彼はゴットロープ・フレーゲ論文載せていた『ドイツ観念論哲学への寄与』という雑誌フレーゲ通じて掲載依頼するが、無名新人哲学者のために雑誌全紙面を割くわけにはいかないとの返事によりこれも断念。またこの間やり取りによりフレーゲが『論考』をまったく理解していないことを知り落胆するその後、かつてライナー・マリア・リルケゲオルク・トラークルらへ財政支援をした際の代理人であり編集者でもあるルートヴィヒ・フォン・フィッカーを通じていくつかの出版社打診するいずれもよい返事得られず、ウィトゲンシュタイン失意の底へ落ち込むこととなる。この年1919年)の12月ウィトゲンシュタインラッセルハーグ待ち合わせ再会する二人はこの本について語り合い、その議論基づいた序文高名なラッセル書いて付け加えれば出版望みは増すだろうというアイディア達する。予想通りレクラム文庫関心寄せてきたためラッセル序文執筆するが、その原稿見たウィトゲンシュタインは、ラッセルフレーゲ同様に論考』を理解できていないことを知りまたも失望する1920年レクラム社からも断り返事戻ってきたころ、ラッセルは「私の序文などどうでもいいイギリス出版してみてはどうか」と手紙を書くが、もはや『論考』出版への情熱を完全に失っていたウィトゲンシュタインは「ご自由にどうぞ」と返信この頃ウィトゲンシュタインは再び自殺考えるようになっていた。 著者であるウィトゲンシュタイン哲学への熱意失い田舎小学校教師になったあとも(次節参照)なおラッセルは『論考』出版のために奔走した1921年には友人チャールズ・ケイ・オグデン通してイギリスのキーガン・ポール社から英訳版出版契約を、さらにヴィルヘルム・オストワルト編集するドイツ雑誌自然哲学年報』にオリジナルドイツ語版掲載する契約取り付けるに至る。ラッセル知らせ受けたウィトゲンシュタイン初めこそ素直に喜んだものの、オストワルトから送られてきた雑誌見て余り誤植多さ愕然としたというのもウィトゲンシュタインオストワルト送ったタイプ原稿では、タイプライター上に存在しないさまざまな論理学記号をそれに似た形の別の記号代用していたのであるが(例えば「⊂」の代わりに「C」など)、それがウィトゲンシュタイン校正経ずそのまま印刷されていたのである。しかしそれにやや遅れて開始され英語版編集作業に関しては、翻訳あたった数学者フランク・ラムゼイオグデン誤植だらけのドイツ語版見て感じた疑問点などをウィトゲンシュタイン問い合わせながら行ったため、その仕上がりウィトゲンシュタインも満足のゆくものとなった。このときオグデンからウィトゲンシュタイン寄せられ質問一つ題名に関するものであったオストワルトドイツ語版原題 " Logisch-philosophische Abhandlung " のまま出版されたが、これをそのまま英訳すると意味の取りづらいものとなるため、英語版用に新しく題名考えた方がよい、とオグデン主張したのであるラッセルは " Philosophical Logic " という案を寄せたが、ウィトゲンシュタインは「哲学的論理学」などというものは存在しない拒否しムーア提案したラテン語表題 " Tractatus Logico - Philosophicus " を採用した。このタイトルは、バールーフ・デ・スピノザの " Tractatus Theologico-Politicus " (『神学政治論』)になぞらえたのであるオグデンらとの打ち合わせ踏まえてウィトゲンシュタイン綿密な推敲校正行い英独対訳版『論理哲学論考』は1922年11月、ようやく陽の目を見ることとなった

※この「『論考』出版」の解説は、「ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン」の解説の一部です。
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