『向こう半分の人々の暮らし』とは? わかりやすく解説

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『向こう半分の人々の暮らし』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 04:33 UTC 版)

ジェイコブ・リース」の記事における「『向こう半分の人々の暮らし』」の解説

本来リーススラム街での十数年間にわたる取材の中で撮影した写真集出版するつもりであった。しかしどの雑誌社関心を示さなかったところ、『スクリブナーズ・マガジン』の編集者興味示したため、雑誌記事向こう半分人々暮らしニューヨークテネメント実態調査(How the Other Half Lives: Studies Among the Tenements of New York)」は1889年クリスマス刊行された。当時ヘンリー・ジョージ単一税制支持しジョージ理論分析学んでいたリースは、この機会を「ジョージ主義的な情熱」で地主非難するのに使った記事の中では21挿絵用いられたが、ほとんどがリースらが撮影した写真をもとに5人の挿絵画家によって木版画写し換えられたものであった挿絵掲載され理由としては、当時ハーフトーン技術がまだ確立しておらず、不鮮明な上にコストかかったことに加え、まだ絵画比べ写真芸術的価値低かったことが挙げられる出版社側としても撮影技術構図未熟な写真掲載するより、手慣れてセンスのある挿絵画家による修正版を好んだこのため自分文章と全く関係ない絵が挿入されていたことに、リース少なからず苛立ち覚えていたとみられるリースリース保管していた雑誌掲載記事には「記事中にこの絵がこっそり入れられた。これは私のではないし、なんの関係もない」という殴り書き残されている。 本の中ではイタリア人街やユダヤ人街チャイナ・タウン人種混合地帯ドヤ街などスラム形成する様々な地区住宅模様住民悲惨な生活と労働描いている。加えて人口密度乳幼児死亡率少年非行率などの一般的な記述とともに様々な事例具体的な体験談織り交ぜて貧し人々の生活記している。 翌1890年11月に、書籍向こう半分人々暮らし(How the Other Half Lives)』は出版された。大幅に加筆されて25からなる本文に、21挿絵、そして新たに17ハーフトーン印刷写真テネメント平面図4鳥瞰図統計資料巻頭詩と序文付け加えられたものであったハーフトーン印刷用いた写真図版17写真からおこされ木版画19からなっており、当時としてはハーフトーン印刷全面的に取り入れた最初の本であった。なお新聞におけるハーフトーン印刷導入1880年だとする説が一般的であるが、それ以前写真文章同時に印刷することはできなかった。加えてハーフトーン印刷普及には高速性能のよい印刷機械登場を待たねばならなかった。『ニューヨーク・トリビューン』では1897年からハーフトーン印刷常用するようになったが、大多数新聞社では線画凸版並行して使っていた。それゆえに、ハーフトーン技術複製可能な写真潜在能力爆発させ、豊穣20世紀の映像文化生み出す上で、非常に重要なものであったことを、ヴィッキ・ゴールドバーグ(Vicki Goldberg)は指摘している。 『向こう半分の人々の暮らし』は順調に売れ、よく引用された。いくつかの書評ではあまりに単純化し誇張しすぎていると批判されたが、概して好評であったリース自身は、この成功は、ウィリアム・ブースの『最暗黒英国とその出路(In Darkest England and the Way Out)』や、またワード・マカリスター(Ward McAllister)が富裕層描いた、『Society as I Have Found It』によって社会改良への人々関心高まったおかげであると考えていた。この本は模倣作助長してしまい、『Darkness and Daylight; or, Lights and Shadows of New York Life』(1892)などはどいうわけかリース自身写真盗用していた。その後反響呼び刊行後5年で版は11版にも及んだ本書の訳(ジェイコブ・リース 2018)を出版した千葉喜久あとがきにて、「フォトジャーナリズムという新しい手法通して社会的に大きな役割果たした作品であると同時に19世紀末ニューヨーク移民暮らし文章と写真記録した作品として、今なお重要な意味をもつといえる。」と評価している。

※この「『向こう半分の人々の暮らし』」の解説は、「ジェイコブ・リース」の解説の一部です。
「『向こう半分の人々の暮らし』」を含む「ジェイコブ・リース」の記事については、「ジェイコブ・リース」の概要を参照ください。

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