灰
『花咲か爺』(昔話) 正直爺の家の臼を、隣の爺が焼いてしまう。正直爺は、臼を焼いた残りの灰を笊(ざる)にいっぱいもらって帰り、庭へまく。すると、枯れていた梅の樹や桜の樹に、一時にパッと花が咲く。正直爺は、殿様の御殿の枯れ木に花を咲かせて、褒美をもらう。隣の爺が真似をするが花は咲かず、殿様の目や鼻に灰が入る。殿様は立腹し、隣の爺を牢屋へ入れる。
*空へ投げた灰が、天の川になる→〔天の川〕4の星を作った少女(アフリカ、ブッシュマンの神話)。
『孤島の鬼』(江戸川乱歩) 「私(蓑浦青年)」の恋人・木崎初代は、悪人によって殺された。初代の火葬後の骨上げの時、「私」は鉄板の上から一握りの灰を盗み取る。そして付近の広い野原へ逃れて、「私」は愛の言葉をわめきながら、その灰を、「私」の恋人を、呑み込んでしまった〔*「私」は後に、初代の妹にあたる「緑」と結婚する→〔シャム双生児〕3〕。
『マディソン郡の橋』(イーストウッド) カメラマンのロバートはマディソン郡のローズマン・ブリッジの写真を撮りに来て、人妻フランチェスカと出会う。2人は4日間の恋をして別れる(*→〔人妻〕4)。17年後、ロバートは死んだ。彼は土葬ではなく火葬を望み、「灰をローズマン・ブリッジからまいてほしい」と遺言した。それから何年かして、フランチェスカも死んだ。彼女も火葬を望み、子供たちが母親の灰を、ローズマン・ブリッジからまいた。
*人を火あぶりにし、灰を河へ棄てる→〔密通〕1aの『ウェストカー・パピルスの物語』(古代エジプト)。
★2b.不死身の怪人も、身体を焼いて灰にしてしまえば、生き返ることはできない。
『伊賀の影丸』(横山光輝)「若葉城の巻」~「由比正雪の巻」 阿魔野邪鬼(あまのじゃき)は2百年も生きており、殺されても3時間ほどすれば蘇生する、不死身の怪人だった。伊賀の影丸が、しびれ薬を用いて、邪鬼を身動きできぬようにする。影丸は邪鬼にむかって言う。「お前の身体を焼いて灰にすれば、再び生き返ることはできまい。しかし今さらお前の命をとっても、どうにもならぬ」。影丸は邪鬼をそのままにして、立ち去る。
『灰かぶり』(グリムKHM21) 母を亡くした娘がいた。継母とその連れ子の姉妹が、娘をいじめた。娘は綺麗な着物を取り上げられ、古い灰色の上着を着せられる。水運びや炊事・洗濯をし、さらに、灰の中から豌豆(えんどう)や扁豆(ひらまめ)を拾い出す仕事まで、せねばならない。夜になってもベッドへ入れず、かまどのそばの灰の中で横になる。世間の人は、娘を「アッシェンプッテル(灰かぶり=シンデレラ)」と呼んだ。
★4.灰で縄をなう。
『うばすて山』(昔話) 60歳以上の老人は山へ棄てる、という国があった。隣国が、「灰で縄をなって持って来い。できなければお前の国を攻める」と言って来る。殿様が困っていると、ある百姓の老母が、「固く縄をなって塩水につけ、よく乾かしてから戸板の上で燃やせば、灰の縄ができる」と教える。殿様は老母の知恵に感心し、以後、棄老の制度を廃止した。
『鯉の報恩』(昔話) 殿さまが、「灰でなった縄を持って来う(=来い)」と、村の男に命ずる。男が困っていると、嫁が(*→〔魚〕6)、「少し大き目の縄をなわっしゃい」と言い、その縄を石の上で焼いて、すっかり灰にしてしまう。そして「これを持って行かっしゃい」と言うので、見ると、ちょうど灰でなった縄のようになっていた。男はそれをそっと殿さまの所へ持って行った(新潟県南魚沼郡)。
★5a.床に灰をまき、足跡を取る。
『ダニエル書への付加』(旧約聖書外典) バビロニア人たちはベル神の偶像に、毎日多くの酒食を供えた。翌朝には酒食はすべてなくなったので、人々は「ベル神が供え物を納受した」と信じる。ある夜、ダニエルが神殿の床に灰をまいておくと、翌朝、男や女や子供の多くの足跡が床に残っていた。大勢の祭司たちとその家族が、秘密の扉から出入りして、供え物を飲み食いしていたのだった。
『ジャン・クリストフ』(ロラン)第9巻「燃ゆる荊」 ジャン・クリストフは医者ブラウンの家に滞在するうちに、ブラウンの妻アンナと関係を持つようになる。ある夜アンナは、クリストフの部屋へ行く時、足裏に違和感を覚えて、廊下に灰がまかれていたことを知る。それは、2人の仲を疑う女中の仕業だった。アンナは箒を使い、灰の上の足跡を消した〔*後にクリストフとアンナは心中を計るが失敗し、2人は別れる〕。
(灰)と同じ種類の言葉
Weblioに収録されているすべての辞書から(灰)を検索する場合は、下記のリンクをクリックしてください。

- (灰)のページへのリンク