シャム双生児
『大智度論』巻3 摩伽陀国王の子は、頭が1つ・顔が2つ・腕が4本あった。国王はその子の身体と首を引き裂き、荒野に捨てた。すると女羅刹が来て、身体を接合し乳を与えて育てた。この子は成長後、強大な力を持ち、天下を治めた。
『日本書紀』巻11仁徳天皇65年 飛騨国の宿儺(すくな)という人は、身体は1つで2つの顔があった。顔はそむき合い、頭頂は1つだった。それぞれ手足があり、左右に剣を佩いて、4つの手で弓矢を使った。皇命に従わず民を略奪したので、難波根子武振熊がこれを殺した。
『酉陽雑俎』続集巻3-947 太和6年(832)の秋、梁州の西県の百姓の妻が産んだ男児は、手が4本、足が4本、1つの身体が2つの顔に分かれていた。頭頂部の髪の1本は、長くて足までとどいた。
*原始時代の人間は、シャム双生児のごとき形態をしていた→〔人間〕1bの『饗宴』(プラトン)。
『半神』(萩尾望都) 「わたし(ユージー)」と妹ユーシーは、シャム双生児である。妹は「わたし」から養分を吸い取って生きており、天使のごとく美しい。「わたし」は、妹にはない知性を持っているが、醜くやせている。このまま放置すれば2人とも死ぬので、「わたし」たちは13歳の時、手術で切り離される。妹はかつての私のようにやせて死に、「わたし」はかつての妹そっくりの美しい少女になる。
★1c.シャム双生児の分離手術には、危険がともなう。
『シャム双生児の秘密』(クイーン) 16歳のフランシスとジュリアンのシャム双生児が、彼らの美しい母キャロー夫人とともに、外科医ザヴィヤー博士邸に滞在する。ザヴィヤー博士は、シャム双生児の分離手術の可能性を検討していた。ところがザヴィヤー博士は、何者かに殺されてしまう。分離手術には命の危険があるので、シャム双生児が自分たちの身を守るために博士を殺したか、と思われた。実は、博士の妻セーラが、夫(=博士)とキャロー夫人の仲を疑い、嫉妬して博士を殺したのだった。
『子易物語』(御伽草子)寛文刊本 天武天皇の代、佐伯長者が豊受明神に申し子して、背中合わせに癒着した男女の双子(玉松丸・玉若姫)を授かった。彼らは、日本を滅ぼす第六天の魔王の化身と間違われたが、神が2人を救い、背中も離れる。後、天皇の勅で結婚した2人は、人々の安産を願う子易地蔵を桜木で造り、昇天した〔*赤木文庫蔵写本は、70歳過ぎの尼が、腋で癒着した男女を産むなど、大きく異なる〕。
『捜神記』巻14-1(通巻340話) 兄妹婚をした2人が山に追われ、死んだ。神鳥が飛んで来て不死草を亡骸にかぶせておくと、7年後に、頭が2つ・手足が4本・胴体が1つの男女が生まれた。
『孤島の鬼』(江戸川乱歩) 佝僂(せむし)として生まれた諸戸丈五郎は、世を呪い人を呪ったあげく、貧しい人々から嬰児を買い集め、箱詰めにしたり皮をはいだりして不具者を作り、見世物小屋に売る。丈五郎は、かつて彼の求愛を拒絶した未亡人の孫娘・緑を手に入れ、これを別の男児と腰部で癒合させてシャム双生児とし、育て上げて高く売ろうとする。「私(蓑浦青年)」は、紀州の孤島にある丈五郎の屋敷へ乗り込んで緑を救い出し、彼女は手術で男児から切り離される。「私」は緑と結婚する。
★4.シャム双生児のような姿になることを望む。
『パンチャタントラ』第5巻第8話 職工の男が、樹に住む精霊から「何でも望みをかなえてやろう」と言われる。職工の妻が、「前と後ろで、今までの倍の布を織れるように、もう1つの頭と、もう1対の腕を望みなさい」と勧め、職工は2つの頭と4本の腕を持つ身体にしてもらう。しかしその姿を見た人々は、「こいつは羅刹だ」と言って、職工を殺してしまった。
『ギリシア神話』(アポロドロス)第2巻第5章 ゲリュオネスは、3人の男の上半身が腹で1つになっていて、わき腹と太腿から下は、また3つに分かれる、という身体を持っていた。ヘラクレスが彼の牛を盗んだため、ゲリュオネスはヘラクレスを追い、射られて死んだ。
シャム双生児
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/23 20:10 UTC 版)
シャム双生児(シャムそうせいじ)
- 1 シャム双生児とは
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「シャム双生児」の例文・使い方・用例・文例
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生児に関連する言葉 | 早生児(そうせいじ) 一卵性双生児(いちらんせいそうせいじ) シャム双生児(シャムそうせいじ) 双生児(そうせいじ) 私生児(しせいじ) |
双生児に関連する言葉 | 双生児(そうせいじ) シャム双生児(シャムそうせいじ) 二卵性双生児(にらんせいそうせいじ) 一卵性双生児(いちらんせいそうせいじ) |
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