ヨガの宇宙観 ヨガの宇宙観の概要

ヨガの宇宙観

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2011/05/12 11:00 UTC 版)

目次

ヨガにおける宇宙創生のプロセスの体系

本源の意識の実在

  1. はじめに存在したのは、「存在のすべて」、それだけであった。ほかにはなにもなかった。(『神との対話』参照)
    この「存在のすべて」とは、本源意識、無限意識、無限生命、本源の大本の神、在りて在るもの、とも呼ばれる。
  2. 本源意識の望み
    本源意識は、「存在するすべて」であることの絶対的な素晴らしさを概念的には知っていたが、体験的には知り得なかった。そこで、みずからの素晴らしさを体験したいと強く望んだ。(『神との対話』参照)
  3. 宇宙創造計画の立案
    己のほかには何も存在しないため、己の内部に己の代わりに体験する意識存在と、体験対象と、体験する宇宙)とを創造することによって、代理体験意識が体験したものを己も同時に体験できるというシステムを考えた(『神との対話』参照)。「大実在原理(マハー・タットヴァ)」いわゆる宇宙創造計画なるものを「想い」によって設計したのである。

神我の創造

本源意識は、その宇宙創造計画に基づいて代理体験存在と体験対象と体験する場である宇宙とを本源意識に代わって創造し運営する「神我」を創造し、本源意識が有する意識と智慧能力のすべてを神我に付与した。この「神我」が、最初の神の子、絶対者ブラフマンとか最高神クリシュナとか神我・キリストと呼ばれる存在である。

  1. 真我の創造
    「神我」はその意識の一部を個別化して、代理体験意識としての「真我(アートマン)」を多数創造した。
  2. 根本自性の創造
    神我は、大実在原理(マハー・タットヴァ、宇宙創造計画)に基づいて、代理体験者である個性を有する「魂」と、様々な体験対象と、多様な体験する場(多次元宇宙)とを創造するため、その原材料(原質料)としての「根本自性」を創造した。
    根本自性からは先ず、精妙な空間と、時間と、方向とが創り出された。
    次に、この根本自性から大明性・大動性・大暗性と呼ばれる3種の根源エネルギーが創造された。インド・ヨガではこの3種類の原初光粒子エネルギーを「3グナ」と名付けている。
  3. 根本自性の3種の根源エネルギーからの創造
    大明性(マハー・サットヴァ)を優位とした「宇宙心素(アーカーシックレコード、アカシックレコード)」の創造。
    大動性(マハー・ラジャス)を優位とした「宇宙理知」の創造。
    大暗性(マハー・タマス)を優位とした「宇宙我執」の創造。
  4. 宇宙我執の分化
    明性優位の「宇宙我執」から5種の「知覚器官(嗅覚・味覚・視覚・触覚・聴覚)」を創造。
    動性優位の「宇宙我執」から5種の「運動器官(排泄・生殖・移動・授受・発声)」を創造。
    明性優位と動性優位の「宇宙我執」を合わせて「意思」を創造。
    暗性優位の「宇宙我執」から、5種の「微細元素(香・味・色・触・音)」を創造。
  5. 魂の創造
    同質の「真我」に個性を持たせるために、各「真我」を「心素」で包み、それを「我執」で包み、それを「理知」で包み、それを「意思」で包むことによって『魂』を創造した。
  6. 微細元素の分化
    「明性優位」の微細元素から、神々、人間、動物、植物、などの微細体を創造。
    「動性優位」の微細元素から、微細体によって経験される精妙な物質を創造。
    「暗性優位」の微細元素から、5種の「粗雑元素(空・風・火・水・地)」を創造。
  7. 粗雑元素の分化
    「明性優位」の粗雑元素から、神々や、人間や、妖精などの生き物の肉体を創造。
    「動性優位」と「暗性優位」の粗雑元素から、鳥や獣や昆虫などの肉体を創造。
    「動性優位」の粗雑元素から、空気水分などを創造。
    「暗性優位」の粗雑元素から、鉱物岩石天体などを創造。

以上のプロセスを経ることによって、この「宇宙」が多次元的に創造されたと、ヨガでは説明されている。(『魂の科学』『ヒマラヤ聖者の生活探究』『心身の神癒』『世界文学大系<第4>インド集』参照)

注釈

本源意識

イエス・キリストの説明によると、神(本源の神)は言葉で説明できるものではないが、次のような性質を持つ存在としている。

  • 存在するすべてのものの背後にある非人格的な原理であり、全能・全智・遍在の大
  • 一切の善きものを生み出し、それを支配している原因である唯一
  • すべての形あるものを結合させている一切の真実の
  • 決して死ぬことがない生命そのもの。
  • 個人に対しては、すべてを与える人格的な愛深きにしてとなる。
  • 人が近づいていくなら、両手を差し伸べて抱擁してくださる。
  • 本来、人は何時でも、父母や兄弟や友人に対するように、神を見たり神と語ることができる。
  • 神は誰よりも身近におられる存在であり、どんな友よりも遙かに慕わしく、また忠実である。
  • 神は決して興奮せず、意気消沈することもなく、その等である生きものや被造物を破壊することはなく、傷つけることもなく、妨げることがない。
  • 人は誰でも意欲さえすれば、常に神の霊感を受けることができ、人が正しいことをする時は霊感を与えてくださる。
  • 神の愛は、変幻自在である。
(イエスはインドやチベットでも学んだのちエジプトでヨガ瞑想を行って「神我」の意識に到達しているとされるが、イエスはこのような自分の言葉は、イエスの口を通して自己の内なる神我・キリストが語っていると言っている。「天」とは遠いどこかにあるのではなく各自の内側にあるとも言っている)(『ヒマラヤ聖者の生活探究』『心身の神癒』参照)

イエス・キリスト以外の表現では、α から ω、すべてのすべて、I am that I am 、在りて在るもの、遍在する無限の生命、無条件の無限の愛、無限の智慧、全知全能、無、絶対の真理、などがある。

神我

神我は、本源意識から意識と智慧と能力のすべてを付与されているため、その性質は本源意識とまったく同じである。形も大きさも存在しないが、無限に大きくも小さくもなることができる。 違いは、神我は本源意識の一部から創造された(本源意識の一部が変身した)ものであるという点と、神我は代理体験意識たちと体験対象と体験する場である宇宙とを創造し運営する役割を持っているという点である。(『ヒマラヤ聖者の生活探究』『人間の永遠の探究』『心身の神癒』『宝瓶宮福音書』参照)

本源意識と神我と魂との関係

  • 本源意識と神我との関係は、父ないし母と、その子という関係となる。
  • 神我と真我とは同であるが、真我は神我の意識の一部が個別化されたものであるので、父ないし母とその子等という関係でもある。
  • 神我とたちとは、父ないし母とその子等という関係であり、本源意識と魂たちとの関係もまた、父ないし母とその子等という関係にある。
(『ヒマラヤ聖者の生活探究』『心身の神癒』『人間の永遠の探求』参照)

根本自性(プラクリティ)の性質

宇宙に存在するもののうち、「神我」と「真我」以外(厳密には真我と神我はいわゆる「空(くう)」とされる多次元宇宙の存在ではなく実相の実在であるが)の根本自性から創造されたすべてのもは、必ず「サットヴァ」と「ラジャス」と「タマス」の3種類のグナ(gunas、根源エネルギー)で構成されている。「優位」とは、その根源エネルギーの構成割合が多いことを意味する。(『魂の科学』『超越瞑想と悟り』『人間の永遠の探究』『世界文学大系<第4>インド集』参照)

  • インド・ヨーガの見解
    • サットヴァ……明性、善性、智慧、照らし出す光、など。
    • ラジャス……動性、活動、運動、など。
    • タマス……暗性、無智、妨害、愚鈍、など。
インド・ヨーガでは3種のグナに関して、サットヴァをなるもの、ラジャスを中立なもの、タマスをなるもの、として捉えているものが多い。その理由は、タマスとラジャスの活動を完全に止めて意思を真我の方向にだけ向けて、真我が鏡のようになった心素に映し出された己の姿を純粋に観照(照らして観察)したときに、はじめて自分が真我(神の子)であったことが理解できるからである。
  • サキャムニ(釈迦牟尼)の見解
    • サットヴァ……貪り(貪)。
    • ラジャス……怒り(瞋)。
    • タマス……無智(痴)。
サキャムニ自身が悟り解脱を得た方法はヨガによってであり、解脱して「仏陀」となったサキャムニが説いた仏陀となるための教えが「仏教」であるが、彼は、「アートマン(我、真我)」を取り巻いて苦悩をもたらしている3グナこそが「根本煩悩」であり、この3つの「根本煩悩」から「アートマン」が解放されることによって唯我独尊(真我独尊、解脱)がもたらされるとして、3グナそれぞれのマイナスの性質面を捉えて説明している。 なお、これについては、「仏教」では真我を否定する解釈をする立場の者も多く存在している。(この部分の詳細は「参考」の「2. サキャムニ(釈迦牟尼)の見解の解釈が分かれる理由」を参照のこと)
  • バガヴァッド・ギーターの見解
    • サットヴァ……明性、照らし出す光、進展。
    • ラジャス……動性、活動。
    • タマス……維持、抑制、遅らせる。
タマスを創造した理由は、サットヴァの明性やラジャスの運動加速を抑制して宇宙に調和をもたらすためであり、また、魂が貪りや活動を制御することができるようにするためでもある。真我を取り巻いている諸要素がタマス優位になりすぎると、魂にとって不都合と感じる様々な過度の抑制による影響が生じることになる。バガヴァッド・ギーター(古代インドの聖典の1つ)は、神我(最高神クリシュナ)の立場から説明している。

宇宙我執の分化

マハー・タマス(大暗性)優位の「宇宙我執」によって、魂が利用する身体の「知覚器官」と「運動器官」、ならびに宇宙を構成する諸元素とを創造したのは、魂に相対的な体験をさせるためである。「素晴らしいもの」を体験するためには、その対照となるもの、すなわち素晴らしくないものを体験することによって、はじめて「素晴らしい」という体験ができるからである。(『魂の科学』『神との対話』参照)

魂の創造

  • 魂の創造理由
同質の「真我」どうしが出逢っても新たな経験が生じないため、代理体験意識である「真我」にそれぞれ異なった個性を持たせることによって様々な相対的な体験をさせ、そうした体験を通して己(真我および神我および本源意識)の素晴らしさを体験するためである。
  • 魂の創造のプロセスと宇宙我執の分化のプロセスとは同時並行的に行われている。

(『魂の科学』『神との対話』参照)

魂の構造と機能

ここではヨガにおける魂の構造機能について解説する。(『魂の科学』参照)

魂の構造

  • 中心に「真我」……光り輝くダイヤモンドのように輝いている。
  • その外側を取り囲む「心素球」……白色の光球。
  • その外側を取り囲む「我執球」……青色の球体。
  • その外側を取り囲む「微細生気球」……赤色の球体。
  • その外側を取り囲む「理知球」……黄色の球体。
  • その外側を取り囲む「意思球」……白色の球体。
  • その外側を取り囲む「知覚器官」と「微細運動器官」……5つずつの青色の球体とオレンジ色の球体。
  • その外側を取り囲む5種の「微細元素」
  • それら全体としては、球体ないし椰子の実状の輝く光の球として視える。

瞑想に熟達したヨギには、魂は瞑想によって上のように視えるとされている。

身体内での存在形態

1. 心臓内部での構造

  • 中心に「真我」。
  • その外側を「心素球」、「我執球」、「微細生気球」、「微細根本自性」が順に取り囲んでいる。
  • それら5つの光球全体に浸透する形で「神我」が取り囲んでいる。
  • 心素と我執とは「原因体(コーザル体)」と呼ばれている。

2. 脳内での構造

  • 中心に「意思球」……金星のように輝き、常に活発に「知覚器官」や「運動器官」や他の光球に働きかけている。
  • 意思球を取り囲む「理知球」……白色の光球。
  • その外側を取り囲む5つの「知覚器官」と5つの「微細運動器官」……青白色とオレンジ色の円球が交互に並んでいる。
  • 脳内のものは、「微細体(アストラル体)」に属するとされる。

3. 心臓内と脳内との情報伝達

心臓内の内的心理器官と、内の内的心理器官との間の情報伝達は、2つのルートによって行われている。
1. 意思の光線によるルート……「行(ぎょう)」情報の授受。
2. スシュムナー気道(脊髄に沿った中央気道)によるルート……知識と運動に関する情報の授受。

心素

  • 「心素」は、絶えず変化する水晶のように透明で澄んだ美しい精妙な光を放つ小さな光の粒子の固まりで、その集合球体は「真我」を内包し、同時に外側の「我執」を支える土台でもある。
  • 「宇宙心素」が「大明性」から創造され、この宇宙心素から各魂に宿る「心素」が生じて各「真我」と共存している。
  • 「心素」は、「真我」を映し出す「」の役割をするとともに、潜在化した種子の状態での多くの『行』や残像印象や記憶などをその内部に貯え、「真我」に知識と運動に関する情報を提供して真我に様々な経験をさせる個別「経験データバンク」の役割をしている。
  • 心素内部では機の熟した『行』が次々と間断なく湧き上がっている。湧き上がった『行』は「我執」の働きで「意思」に引き渡され、「理知」の許に運ばれて現象や行為として結実していく。「意志」とは、この間の行為のプロセスの中で、特に強い原動力となる心理作用のことを指す呼び名である。
  • 様々な経験から生じる情報の影響によって、「心素」自体が3種のエネルギー徳性(明性・動静・暗性)の影響を受けるようになる。その影響を受けた「心素」の様々な状態を、自分自身と一体化したように錯覚している「真我」に経験させることになる。「真我」が解脱の状態になるのも、束縛された状態になるのも、この「心素」の状態にかかっている。
  • また、「心素」は生命力を持った「真我」と接触することで活動的になり、「微細生気」と呼ばれる生命力を絶えず発生し、「我執」の力を借りてその生気(生命エネルギー、プラーナ)をその魂の他のすべての器官(微細体と肉体)に供給して活性化させている。

理知

  • 「理知」は、澄んだ透明な光が集まってできており、楕円形となって太陽のように光り輝いており、大きさを自由に変えることができる。
  • 「宇宙理知」が「大動性」から創造され、この宇宙理知から各魂に宿る「理知」が生じて各「真我」と共存している。
  • 「理知」は「意思」を介して、知識や認識などのあらゆる情報を受け取って分析や確認を行って決定を下す働きをしている。「理知」は粗雑次元でのあらゆる経験を「真我」に伝えているが、「理知」が何かある経験に関して働いているときは「真我」をもその経験の虜にしてしまう。
  • 「理知」は「意思」によって心臓内部から運ばれてきた『行』を、「意思」の助けを受けながら感覚器官が経験できるように粗雑なものに変化させる。
  • 一方、「理知」は感覚器官から絶えずいろいろな情報を「意思」から受け取り、それらの情報を分析・判断して再び微細次元のものに変え、「意思」はこれらの情報を『行』として「心素」に運んでいく。
  • 「理知」は知覚器官や運動器官から「意思」によって伝えられた情報の重要性を判断し、ふるいに掛けてから最終的決定を行っている。人が目覚めているときに行うすべての行為は「理知」の助けで行われており、この世で間違いを犯さずに生きていくための正しい判断を下し、精神的に向上していくのに不必要なものを捨て去らせ、人として取るべき道を力強く照らし出してくれる働きをする。
  • 「理知」は最終的には深い精神集中と瞑想から生じる「有想三昧(「空虚三昧」以外の有種子三昧)」の境地の中で、物事の正しい因果関係を明らかにし、宇宙の真理を直覚できる状態に導くことを目指している。
  • 「理知」が不純や動揺に支配されると、「真我」に様々な苦悩をもたらし、生・死・再生という終わりなき苦悩の輪廻の中に陥らせることになる。

意思

  • 「意思」は精妙に輝く小さな光の集まりであり、大きさを自由に変えることができる。
  • 意思は明性優位の宇宙我執と動性優位の宇宙我執とから創造されたために、強力かつ何よりも最速で動き回ることができ、明性優位の「知覚器官」と動性優位の「運動器官」の働きを左右することができるとともに、「感覚器官」からもたらされた運動と知覚の情報を脳の「理知」とやりとりしたり、心臓内部の「心素」や「我執」とも情報をやりとりすることができる。
  • また、「意思」は心臓内部から湧き上がってくる「感情」や心素から湧き上がってくる『行(ぎょう)』を自己のもとに引き寄せてこれらの情報を「理知」に伝える働きもしている。
(『』とは、粗雑次元で体験した「印象」や微細次元で生じた感情などの「印象」が心素に貯えられたものであり、真我がこれから経験する現象を生起させる情報エネルギーでもある。この「印象」には、自己の印象だけでなく、自己の身・口・意の行為が原因となった現象の影響を受けた魂たちの印象も含まれる)
  • この「意思」は、情報を探し、運搬し、授受する機能を持った「内的心理器官」である。
  • こうした意思の働きは、「思考」や「想像」といった働きに分けて考えることもできる。






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