飛行
『スーパーマン』(ドナー) クリプトン星で生まれ地球で育ったクラーク・ケントは、成人後、デイリー・プラネット社の記者となった。先輩記者のロイス・レーンが高層ビルから転落しかけた時、クラーク・ケントはスーパーマンに変身して空高く飛び上がり、ロイス・レーンを抱き止めて無事地上に降ろした。以後スーパーマンは、自在な飛行能力を用いてさまざまな活躍をした。
『ピーター・パン』(バリ)3~4 ある夜、空飛ぶピーター・パンが、ダーリング家の3階の窓から子供部屋に入って来て、子供たちをネバーランドの島へ誘う。ピーターが妖精の粉を吹きつけると、ウェンディもマイケルもジョンも、空を飛べるようになる。彼らは窓から夜空へ飛び出し、2つ目の通りを右に曲がって、それから朝までまっすぐに飛んで、ネバーランドを目指す。
*風の又三郎は、ガラスのマントを着て空を飛ぶ→〔風〕1の『風の又三郎』(宮沢賢治)。
★1b.修行して飛行術を身につけた人・身につけられなかった人。
『えんの行者』 大峯で前世の骸骨を見出した役の行者(*→〔前世〕3)に、弥勒菩薩が「孔雀明王の神呪を行なえ」と夢告する。役の行者は早速孔雀明王の神呪を学び、たちまち飛行自在の身となった。彼は、富士・浅間をはじめ霊岳66峯を巡り、時々は仙界に通い仙人を友として遊んだ。
『今昔物語集』巻13-3 陽勝は苦行して仙人となり、身に2つの翼が生じて、麒麟・鳳凰のごとく空を飛んだ。ある時地上に降りて、浄観僧都と一晩中語り合い、暁になって帰ろうとしたが、人間世界の俗気に長時間ふれたため、身体が重くなって飛び立てなかった。陽勝仙人は「香炉を私の近くへ寄せて下さい」と請い、香の烟(けむり)に乗って空に昇った。
『十訓抄』第7-1 河内国金剛寺の僧が仙人になろうと志し、2~3年の間、松葉ばかり食べて飛行の練習をする。彼は友人や弟子たちの見守る中、昇天すべく山の崖から身を躍らせるが、そのまま谷底に落下して、足腰の立たぬ身体になってしまった。
『今昔物語集』巻11-24 久米の仙人は、修行の甲斐あって飛行術を身につけた。吉野河の上空を飛び回っていると、若い女が立って着物を洗っていた。女は裾をふくらはぎのあたりまで上げていたので、その白い肌を見て久米は心穢(けが)れ、飛行する力を失って、女の前に落下した。彼は、その女を妻として暮らした〔*『徒然草』第8段に簡略な記事〕。
『サザエさん』朝日文庫版・第41巻105ページ 郊外の農村地帯。小型プロペラ機が超低空飛行をして墜落し、パイロットが目を回して倒れている。その場にいあわせた波平、鍬を持つ農夫、駆けつけた警官が、「なぜこんな低空飛行をしたんだろう?」と首をかしげる。近くに裸婦とカメラマンと照明係がいて、「わかりませんなあ。僕ら、ヌード写真をとってる最中でしたから」と言う。
★1d.幼時には飛行能力があったが、成長後、飛べなくなった。
『子不語』巻21-568 馮養梧先生が自ら語ったところでは、先生は小さい時、空を踏んで10数歩行くことができたそうだ。後唐(923~936)の頃の人・李ギョウ侯も、幼時には空を飛ぶことができたらしい。彼がどこかへ飛び去ってしまうのを恐れた母親が、葱(ねぎ)蒜(ひる)の類を食べさせて、その「気」を鎮静させたというのも、実際にあったことなのだろう。
『義経記』巻3「弁慶洛中にて人の太刀を奪ひ取る事」 6月17日の暁方、御曹司義経は笛を吹きつつ五条堀川辺を歩いていて、弁慶と出会った(*→〔九百九十九〕3)。御曹司は9尺の高さの築地(=土塀)にゆらりと飛び上がったので、弁慶は、「築地から下りるところを斬ってやろう」と待ち構える。御曹司は築地から飛び下りるが、地面から3尺ほどの空中で跳躍し、築地の上へゆらりと飛び帰った。
『空飛ぶ奴隷たち』(カリブ諸島の昔話) アフリカの黒人たちは、もともと小鳥のように空を飛べた。それが、何か不都合なことをしたため、神様が怒って、翼をもぎ取ってしまったのだ。昔、カリブ海のある島に、黒人奴隷を死ぬまでこき使う、鬼のような主人がいた。監督が奴隷たちをたえず鞭打ち、少しも休みを与えなかった。ある日、奴隷の中でいちばんの年寄りが、主人や監督にわからない言葉で、仲間たちに呼びかけた。すると彼らに備わっていた力がよみがえり、皆、両手を広げて次々と空へ舞い上がった。奴隷たちは森を越え川を越えて飛び続け、空の彼方へ消えて行った。
『ヴェルンドの歌』 ニーズズ王が、鍛冶の名人ヴェルンドを捕らえ、膝の腱を切って、沖の島に置く。王はヴェルンドに命じて、剣や腕輪などさまざまな宝物を造らせる。ヴェルンドは、王の2人の息子を殺し、1人の娘を犯した後、鳥の羽を集めて大きな翼を作り、空を飛んで島から脱出する。ヴェルンドは空中から王に、「お前の息子の頭蓋骨は酒杯にした。お前の娘は私の子をはらんでいる」と教える。
『変身物語』(オヴィディウス)巻8 クレタ島に幽閉されたダイダロスは多くの鳥の羽根を集め、紐と蝋でつなぎあわせて、自分と息子イカロスのために巨大な翼を作った。ダイダロスとイカロスは空高く飛んで、クレタ島を脱出した〔*『ギリシア神話』(アポロドロス)摘要第1章に簡略な記事〕→〔父と息子〕2。
*小説の作中人物イカロスが、空を飛ぶ→〔作中人物〕3bの『イカロスの飛行』(クノー)。
『オズの魔法使い』(ボーム) オマハ生まれの、サーカスの芸人が気球に乗り、風に流されてオズの国に降りる。オズの国の人々は、男が雲の中から降りて来たので、「魔法使いだ」と思って恐れ敬う。男は人々に命じて宮殿を建てさせ、ついたての陰に身を隠し、腹話術を用いて魔法使いらしくふるまう〔*男は長年にわたって魔法使いを演じ続ける。彼が老年に達した頃、カンサスからドロシーがやって来る〕。
『太平広記』巻460所引『広異記』 ある男の美人妻が、化け物にとりつかれて病気になった。夜になると妻は馬に乗り、女中は箒に乗って、空を飛ぶ。男が後をつけると、妻は山の頂上へ降り、酒宴に加わった。7~8人の男女が、夫婦同然に仲むつまじく楽しんでいる。男から相談を受けた西域人が、術を用いて化け物を捕らえる。黒い鶴が焚火の中へ落ちて死に、妻の病気は治った。
『たのしいムーミン一家』(ヤンソン) 世界の果てに高い山があり、頂上に飛行おにの家が建っている。飛行おには毎晩、黒豹に乗って空を飛び回り、ルビーを集めては帽子の中へ入れて戻って来る。飛行おには月や惑星へも飛んで行き、3百年もの間、「ルビーの王さま」を捜し続けている〔*物語の最後で飛行おには、「ルビーの王さま」に匹敵する「ルビーの女王」を手に入れ、喜んで家へ帰って行く〕。
『ほらふき男爵の冒険』(ビュルガー)「ミュンヒハウゼン男爵自身の話」 戦争の時、「ワガハイ(ミュンヒハウゼン男爵)」は敵陣偵察のために、味方が発射した砲弾にまたがって、敵の要塞めがけて飛んだ。しかし空中で、「下手をすると、敵につかまって縛り首になるかもしれぬ」と思い直し、敵の要塞から撃ち出された砲弾に跳び移って、味方の陣地へ戻って来た。
『千一夜物語』「第八の警察隊長の語った物語」マルドリュス版第949~950夜 少年が、3人の男から横取りした空飛ぶ絨毯を使って、宮殿の王女をさらい、カーフ山の頂上まで連れて行く。少年は王女と交わろうとするが、王女は少年を絨毯の外へ蹴飛ばし、1人で絨毯に乗って宮殿へ戻る〔*しかし最後には少年は王女の婿になる〕。
『空飛ぶトランク』(アンデルセン) 父親の遺産を使い果たした息子が(*→〔長者〕3d)、友人から古いトランクをもらう。それは空飛ぶトランクだったので、息子はトルコの国まで飛び、「僕はトルコの神様だ」と言って、王女と婚約する。婚礼の夜、息子は空を飛んでお祝いの花火を打ち上げる。ところが、その火の粉が残っていて、トランクは燃えて灰になる。息子はもう空を飛べず、王女の所へ行けなくなった。王女は今でも屋根の上で、息子を待っている。
『啌多雁取帳(うそしっかりがんとりちょう)』(奈蒔野馬乎人) 箍屋金十郎が、啌を筑紫の果ての雁国へ行き、池に凍りついた多くの雁を取って腰にはさむ。氷が溶けて鳥たちは飛び上がり、金十郎は空中旅行をして大通国や女護の島を見、大人国に落ちる。しばらく滞在の後、箍に撥ね飛ばされて、金十郎は浅草の自家へ戻る。
『鴨取り権兵衛』(昔話) 権兵衛が、池の氷のため動けぬ鴨をたくさんつかまえ、腰にはさむ。鴨たちは権兵衛もろとも空に舞い上がり、権兵衛は寺の大木の梢に取りすがる。僧たちが布団を広げ、その上に権兵衛が飛び下りると、重みで僧たちは鉢合わせし、火花が出て寺は焼ける。
『ほらふき男爵の冒険』(ビュルガー)「ミュンヒハウゼン男爵自身の話」 「ワガハイ(ミュンヒハウゼン男爵)」は、長い紐にベーコンの脂身をゆわえつけて湖へ投げた。脂身を鴨が呑むと、消化されずに尻から出、それをまた別の鴨が呑んで、多くの鴨が紐で数珠つなぎになった。「ワガハイ」は鴨を家に持って帰ろうと、紐を身体に巻きつける。鴨たちは「ワガハイ」もろとも空へ舞い上がり、「ワガハイ」は服の裾で舵を取りつつ、我が家へ向けて飛行する→〔落下〕10。
『弥兵衛鼠絵巻』(御伽草子) 都の東寺の塔に住む白鼠弥兵衛は、懐妊した妻の望みで雁の肉を得ようと、群れいる雁をねらって飛びつく。雁は驚いて飛び上がり、弥兵衛は雁の胸にぶら下がったまま、東国の果て常磐の国まで運ばれる〔*後に弥兵衛は帰京して妻と再会する〕。
★5.物を飛ばす。
『古本説話集』下-65 信貴山の命蓮は、麓に住む富者の蔵へ鉢を飛ばし、食を得ていた。富者がこれを厭い、鉢に食物を入れずにおいたところ、鉢は蔵全体を乗せて山へ飛び帰った。命蓮は蔵の中の米を富者に返すべく、1俵を鉢に乗せて飛ばすと、雁などが連なって飛ぶように残りの米俵もこれに続いた。
『今昔物語集』巻11-24 久米の仙人は妻帯して只の人になってしまった後、大和国高市郡の新都造営工事に従事した。彼がもと仙人だったことを知った役人が、「術を用いて材木を飛ばせよ」と戯れたので、久米の仙人は7日7夜祈り、山林から多くの材木を工事現場に飛来させた。
『今昔物語集』巻11-36 信貴山に庵を造って修行する僧明練(命蓮)は、訪れる人のない時は、鉢を人里に飛ばして食を得、瓶を川に飛ばして水を汲んだ。
『今昔物語集』巻19-2 渡宋した寂照は、斎会の場で皇帝から法力を試され、鉢を遠く飛ばして食事を受けた。
『発心集』巻4-2 浄蔵貴所は比叡山から鉢を飛ばして食を得ていたが、ある時、空鉢が帰って来たので山の峰から伺うと、別の鉢が飛んで来て浄蔵の鉢の中の物を移し取り、北方へ去った。北の山奥には仙力を得た老僧と天童が住んでいたのだった。
★6a.自ら飛ぶ鏡。
『神道集』巻2-6「熊野権現の事」 第7代・孝霊天皇の代。紀伊国牟婁郡の猟師千代包(ちよかね)が天を仰ぎ、櫟(いちい)の大木の上に光る物を見つけた。彼が怪しんで矢をつがえると、光る物は「我は熊野三所の神体である3枚の鏡だ」と告げた。千代包は木の下に3つの宝殿を造り、3枚の鏡はそれぞれの宝殿へ飛び入った。
『平家物語』巻11「鏡」 天徳4年(960)9月23日の深夜、内裏が炎上した。その時、内侍所(神鏡)は自ら炎の中を飛び出、南殿の桜の梢にかかって輝いた。小野宮殿実頼が、「天照大神の御守護が今なお代々の天皇の上にあるならば、神鏡、我が袖に宿らせ給え」と言うと、内侍所は実頼の左袖に飛び移った。
★6b.自ら飛ぶ梅の木。
飛び梅の伝説 菅公(菅原道真)は筑紫へ配流される時、庭前の梅に名残を惜しみ、「東風(こち)吹かば匂ひおこせよ梅の花あるじなしとて春な忘れそ」と詠じた。菅公が大宰府に着くと、都から一夜のうちにその梅が飛んで来た。大宰府天満宮前の飛び梅がそれである(福岡県太宰府市太宰府。*『源平盛衰記』巻32「北野天神飛梅の事」では、道真が筑紫安楽寺で歌を詠むと、梅の枝が裂け割れて都から飛んで来た、と記す)。
『かもめのジョナサン』(バック) かもめのジョナサン・リヴィングストンは、他のかもめたちと異なり、食物を得るために飛ぶのではなく、飛ぶという行為そのものが重要だと考えていた。彼は超低空飛行や垂直急降下など、さまざまな試みに挑戦し、ついに、宙返り、緩横転、分割横転、背面きりもみ、逆落とし、大車輪、などの高等飛行技術を身につけた。やがてジョナサンは、かもめの一生が短いのは退屈と恐怖と怒りのせいであることを、発見する。この3つのものが心から消え失せた後、彼は長くて素晴らしい生涯を送ることになった→〔空間移動〕1c。
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