バイオマスエタノール
英語:Biomass Ethanol、Bioethanol
バイオマス(生物資源)から得られるバイオマス燃料のうち、特にエタノールとして生成される燃料のこと。
バイオマスエタノールは燃焼によって二酸化炭素と水に分離される。ガソリンなどの液体化石燃料をバイオマスエタノールで代替できれば、二酸化炭素を排出しないクリーンエネルギーの実現が可能になるとされており、バイオマス燃料の中でも特に研究が進んでいる。
バイオマスエタノールの原料としてはサトウキビやトウモロコシ、イモ類などが主に利用されている。これらを発酵・蒸留させることでエタノールを生成させる。炭水化物を含む資源であればバイオマスエタノールの精製は可能であり、廃材木や残飯などからも精製できる。
バイオマスエタノールを含むバイオ燃料は、太陽光発電などと共に次世代エネルギーとして研究・開発が進められている。
関連サイト:
バイオマスエタノールの製造等(PDFファイル) - 沖縄県
独立行政法人産業技術総合研究所 バイオマス研究センター
バイオエタノール【bioethanol】
バイオエタノール
京都議定書目標達成計画では、輸送用燃料におけるバイオマス由来燃料の利用について、2010年に原油換算308万キロリットルの導入を目指し、うち50万キロリットルをエタノールとバイオディーゼルでカバーしようとしています。エタノールはE3燃料(エタノール3%混合ガソリン)かガソリン添加剤のETBE(エチルターシャリー・ブチルエーテル)で導入を目指しています。バイオ燃料は、糖質から発酵で作られるエタノール(エチルアルコール)や原料の燃焼ガスを改質して作られるメタノール(メチルアルコール)、食用油などからメチルエステルなどを作り、これを自動車用燃料として利用することです。そのまま燃料としたり、化石燃料系のガソリンや軽油と混ぜて利用されます。いろいろな形態があり、バイオエタノール、バイオエタノール混合ガソリン、バイオディーゼル(メチルエステル)などと区別して呼ばれています。
海外では、米国でガソリンと9:1で混合した「E10燃料」にバイオエタノールを使ったり、EU諸国におけるバイオディーゼルの利用促進など、バイオ燃料の実用化が各国で進められています。いずれにしても太陽と水があれば育成でき、光合成を行って成長する植物や木材を原料とすることから、枯渇が心配されている化石系原料に対して持続的に利用可能な原料といえるでしょう。
環境省は、現在は飼料程度にしか利用されないサトウキビの精糖後に残った糖蜜から燃料用エタノール生産プロセスの開発とE3燃料などの実証試験を沖縄県宮古島で実施します。あわせてE3燃料の実車走行試験も行う予定。E3燃料製造に用いるバイオエタノールは、当面島外から調達するものの、エタノールを生産する設備が完成する05年度末以降は、沖縄県産エタノールでE3燃料を製造するとしています。またバガス(さとうきびの搾りかす)も大量に出るためエネルギー源でも使用できます。今後、地域のバイオマス資源を有効利用したエネルギーの地産地消による地球温暖化対策のモデルとなることが期待されます。この他にも、建築廃材や古紙などからセルロースを原料に利用することも考えられています。
環境省は、2012年までにバイオエタノールを使ったE3燃料の全面普及を目標にしていますが、さらに、経済産業省でも今年から、石油精製施設など全国6カ所でE3燃料製造の実証実験を開始するとしています。
(掲載日:2005/11/10)
バイオエタノール−植物の茎や葉など原料に−
地球環境産業技術研究機構(RITE)とHondaの研究開発子会社である本田技術研究所は、植物由来の再生可能資源であるソフトバイオマス(注参照)からエタノールを製造する技術に関する共同研究の成果を昨年9月14日に発表しました。
本稿は左記本田技研工業(株)のプレスリリースをもとに引用(一部引用)して作成しています。
現在、現在、世界の燃料用バイオエタノール製造は、サトウキビの糖質やトウモロコシの澱粉質など食用と同じ部分を原料にして、酒類を作るのと同じように酵母で発酵させてエタノールを取り出しています。今回の共同研究では、これまで困難とされてきた稲藁(わら)など、食用に供さない植物の茎や葉といったソフトバイオマスに含まれるセルロース類からアルコール燃料を製造する技術の基盤を確立したもので、実用化へ大きなステップを踏み出したといえます。
07年内に実証設備を設置。2・3年をめどにわが国や東南アジア、米国で実用化を目指したいとのこと。また、実証実験ではエタノールステーションも設置し、ホンダのFFV(フレキシブル・フューエル・ビークル)を使って走行実証も行われるとのことです。
このエタノール転換技術はRITEの湯川英明微生物研究グループリーダーを中心に遺伝子組み換え菌体(RITE菌)を使って開発されました。これまで糖類のアルコールへの転換に関しては、菌体利用で副生物が発生し、前工程に回収工程が必要となります。これに対して同菌体は、不純な微生物を生育させない状況下で増殖し、不純物の除去プロセスが不要となります。糖をアルコールに転換するのを阻害する不純物質による影響が非常に少なく円滑に転換でき、従来の発酵法に比べて5倍程度、ほぼ100%の効率で転換できることを実証しました。
燃料用バイオエタノールは、全てトウモロコシやサトウキビを原料に使っていますが、当然、供給可能量に限りがあります。今後、世界で大幅な需要増が見込まれる中、非食用系からのエタノール生産がエネルギーの安定供給につながることから、セルロース系への関心が大変高まっています。
国産のバイオマスでガソリンの10%をカバーしようというのが政府の方針。非常にハードルが高い努力目標とはいえ、わが国では穀物の2倍以上を森林の茎や葉などから得られる潜在量があります。現在の技術の延長であれば100万キロリットル程度の国産バイオエタノールを実用化できるかも知れません。しかしそれ以上となると新たなセルロース転換技術が必要です。エタノールで180万キロリットル以上のオーダーは、時間軸の中で技術が可能になっていくことで実現していく(農林水産省)というように研究開発も10年、20年先を見たロードマップで臨んでいかなければなりません。
注:ソフトバイオマス
生物由来の再生可能な有機物資源で化石資源を除いたものがバイオマス。
バイオマスは、農林水産物からその廃棄物まで幅広い物を指す。動・植物由来の資源として、私たちの食べ物や木材などから、家畜の糞尿や廃木材や、食用部分を取り除いた後の植物の残渣(ざんさ)などを指すことも。もともと生物が光合成により大気中のCO2と水から生成した有機物であり、これを燃やしても大気中のCO2は増加しないことから、カーボン・ニュートラル(CO2の増減に影響を与えない性質)と呼ばれている。
(掲載日:2007/01/05)
バイオマスエタノール
(バイオエタノール から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/12 06:07 UTC 版)
バイオマスエタノール (Biomass Ethanol)、またはバイオエタノール (Bioethanol) は、産業資源としてのバイオマスから生成されるエタノールを指す。一般には内燃機関の燃料としての利用を意識した用語である。微細藻類の炭化水素生合成[1]は本稿では扱わない。
- ^ 岡田茂、「バイオ燃料として期待される微細藻類の炭化水素生合成酵素」 『化学と生物』 Vol.50 (2012) No.2 p.93-102, doi:10.1271/kagakutoseibutsu.50.93
- ^ 小川喜八郎、セルロースおよびクズの生変換-21世紀のバイオエタノール-
- ^ うどん汁からバイオ燃料精製(中国新聞 '09/8/29)[リンク切れ]
- ^ 内田基晴、「日本の水産分野におけるバイオ燃料研究の動向」 『日本水産学会誌』 Vol.75 (2009) No.6 P.1106-1108, doi:10.2331/suisan.75.1106
- ^ 佐賀清崇、横山伸也、芋生憲司、稲作からのバイオエタノール生産システムのエネルギー収支分析 電子ジャーナル2008「エネルギー・資源学会論文誌」2008年1月号, Vol.29 No.1, 通巻167号
- ^ 折笠貴寛, 徳安健, 井上貴至 ほか、「稲わら由来のバイオエタノール生産におけるエタノール変換効率の違いがコスト,CO2排出およびエネルギ収支に及ぼす影響」 『農業機械学会誌』 2009年 71巻 5号 p.5_45-5_53, doi:10.11357/jsam.71.5_45
- ^ セルロース系バイオマスからのエタノール製造新技術を共同開発
- ^ 食料と競合しない多様なバイオマス資源を用いて環境に優しい非硫酸方式によるエタノール製造
- ^ Ethanol Can Contribute to Energy and Environmental Goals
- ^ UM Scientists Find Key to Low-Cost Ethanol in Chesapeake Bay
- ^ a b セルロースを分解しディーゼル、アルコール等を作る新しい微生物
- ^ 正念場を迎えた米国の第二世代バイオエタノール(2)
- ^ セルロース分解細菌「Saccharophagus dengradans」の パイロット試験
- ^ 北秋田市:木質バイオエタノール製造実証施設安全祈願式
- ^ シロアリによるバイオエタノール製造に弾み
- ^ シロアリがエタノール生産の救世主に? 代替燃料技術の現在
- ^ シロアリの腸からバイオ燃料生産効率を高める新酵素を発見
- ^ 国エネルギー省(DOE: Department of Energy)の共同ゲノム研究所
- ^ “廃材をバイオ燃料に”. 沖縄タイムス (沖縄: 沖縄タイムス): pp. 1面. (2008年7月3日)
- ^ シロアリの新しい利用法
- ^ シロアリ腸内共生系の高効率木質バイオマス糖化酵素を網羅的に解析
- ^ バイオエネルギー生産のためのシロアリ共生系高度利用技術の基盤的研究
- ^ バガス等の熱水処理による自動車用 エタノール製造技術の研究開発
- ^ アグリバイオ 環境に優しい燃料づくり - トヨタ自動車(更新日不明)2018年11月23日閲覧
- ^ トヨタ、バイオ燃料実用化へ 酵母菌使い2020年メド - 日本経済新聞 2011/10/3 20:18版
- ^ 総合資源エネルギー調査会石油分科会石油部会燃料政策小委員会(第8回)議事録(2009年7月17日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
- ^ バイオエタノール用2燃料自動車を開発 ダイハツ自動車
- ^ http://www.paj.gr.jp/eco/biogasoline/index.html
- ^ ブラジルのバイオエタノールをめぐる動向,柴田明夫,独立行政法人農畜産業振興機構,2012年
- ^ a b 国内事情の変化する中国における自動車用代替燃料の展望
- ^ 石井吉徳著 『石油最終争奪戦』 日刊工業新聞社 2006年7月30日初版1刷発行 ISBN 4526056987
- ^ ブラジル・バイオ燃料の現状と展望
- ^ 第二世代バイオ燃料の可能性
- ^ a b レスター ブラウン「フード・セキュリティー―だれが世界を養うのか」、ワールドウォッチジャパン、2005年4月、ISBN 978-4948754225。
- ^ 揮発油等の品質の確保等に関する法律の一部を改正する法律案(2004年12月21日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project 経済産業省報道発表(同法案は平成15年5月成立)
- ^ 揮発油等の品質の確保等に関する法律施行規則の改正案について(概要)(2004年12月21日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project 2003年(平成15年)6月26日資源エネルギー庁資源・燃料部石油精製備蓄課・石油流通課
- ^ 「高濃度アルコール含有燃料は、車の安全にNO!環境にNO!」)(2008年2月6日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project 経済産業省・資源エネルギー庁HP
- ^ 品確法の施行規則改正及び告示制定について(12/03/30)(2012年10月1日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
- ^ ガソリン代替新燃料ガイアックスが潰される[リンク切れ]
- ^ 社団法人アルコール協会編 『バイオエタノール製造技術』 工業調査会 2007年12月25日初版1刷発行 ISBN 9784769371571
- ^ トヨタ自動車、バイオエタノール混合率10%燃料対応車の国土交通大臣認定を取得
バイオエタノール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/13 03:40 UTC 版)
バイオエタノールは、トウモロコシやサトウキビをアルコール発酵させエタノールを作る。バイオマスエタノールは、再生可能な自然エネルギーであること、および、その燃焼によって大気中の二酸化炭素量を増やさない点から、エネルギー源としての将来性が期待されている。他方、生産過程全体を通してみた場合の二酸化炭素削減効果、エネルギー生産手段としての効率性、食料との競合、といった問題点も指摘されている。
※この「バイオエタノール」の解説は、「アルコール発酵」の解説の一部です。
「バイオエタノール」を含む「アルコール発酵」の記事については、「アルコール発酵」の概要を参照ください。
バイオエタノール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/09/15 15:56 UTC 版)
「メタノール経済社会」の記事における「バイオエタノール」の解説
バイオエタノールは現状ではサトウキビやトウモロコシのような穀物から製造されており、セルロシック・エタノールに転換しない限り、これ以上生産量を増やそうとすれば、飼料用穀物の相場が上昇することで悪影響が懸念される。
※この「バイオエタノール」の解説は、「メタノール経済社会」の解説の一部です。
「バイオエタノール」を含む「メタノール経済社会」の記事については、「メタノール経済社会」の概要を参照ください。
バイオエタノール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 01:41 UTC 版)
「再生可能エネルギー」の記事における「バイオエタノール」の解説
穀物・果実・植物繊維等に含まれるブドウ糖や炭水化物を発酵または化学反応させたエタノールとして利用。
※この「バイオエタノール」の解説は、「再生可能エネルギー」の解説の一部です。
「バイオエタノール」を含む「再生可能エネルギー」の記事については、「再生可能エネルギー」の概要を参照ください。
「バイオエタノール」の例文・使い方・用例・文例
- バイオエタノールを使う方が地球に優しい
- 私の技術は、バイオエタノール生産に貢献できると信じています。
- 稲わらからできたバイオエタノール
- 川崎重工業は10月6日,同社が稲わらからバイオエタノール燃料を製造することに成功したと発表した。
- 2009年,川崎重工は秋田県農業公社と共同で稲わらからバイオエタノールを製造する試験事業を開始した。
- 川崎重工は秋田県潟(かた)上(がみ)市(し)にある同社の実証プラントでバイオエタノールを製造する。
- 川崎重工は先日,自社のバイオエタノールの実験を行った。
- 同社はその燃料が自動車を安全に動かせることを確認し,そのバイオエタノールが自動車燃料の品質基準を満たしているという確証を得た。
- 同社は自社のバイオエタノールを市場に出すため,製造コストを1リットルあたり40円以下にしたいと考えている。
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