若者の車離れ 購入対象車種の変化と自動車メーカーの責任

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若者の車離れ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/05 11:16 UTC 版)

購入対象車種の変化と自動車メーカーの責任

2009年10月19日の毎日jpのコラムにて、トヨタ自動車幹部による、「リアルな自動車ゲームがあれば車は要らなくなる」という主旨のコメントが掲載された。

しかしその一方、悪いのはエコや機能性に腐心して魅力あるクルマを作ってこなかった自動車メーカーおよびその製品ラインナップであると指摘する向きもある。

  • 「今の車には魅力がない」とする指摘
    • ガリバー自動車研究所所長は「(確実に)売れるミニバンや軽自動車ばかり(さらに2010年代以降はハイブリッドカーや一部のアイドリングストップ機構を装備したエコカーも)作り、スポーツカーなどの魅力的な車を作らなくなったメーカー側に問題がある」と述べている[37]
    • 自動車評論家島下泰久も「行き過ぎたエコ偏重の商品作りが、車本来の楽しさをドライバーから奪い、結果として車離れを加速させている」と指摘している[38]
    • また同じく自動車評論家の徳大寺有恒は、日本車の「機械としては優秀だが、愛着を持てるか?」という疑問に触れつつ、「セクシーじゃない(つまり魅力に乏しい)クルマから、若者が離れていくのは当然のことなんだ。」と述べている[39]
  • 「車が好きになるキッカケ作りが必要」とする指摘
    • ソニー・コンピュータエンタテインメント広報は、前出のトヨタ幹部の意見に対し「車のゲームをきっかけに、実車に興味を持つ人がいると聞いている」と、否定的な態度を採った。
    • 田中辰巳は(自動車メーカーほどの力があれば)「トレンディードラマのデートシーンに、車を登場させることなども難しくない」などとし、最近のメーカーが若者がクルマに乗りたくなるような仕掛けを行っていないという点を指摘した[40]
  • 「上述のどちらも原因だ」とする指摘
    • デザイナーの根津孝太は、上記2点の両方を指摘している。彼はかつてトヨタのデザイナーもつとめ、更に北米市場で若者向けブランド「サイオン」ブランド[注釈 4]を立ち上げた人物で、「ハマる! ミニ四駆LIFE」(主婦と生活社)誌内のインタビューにおいて「トヨタ在籍時、中高年層がカッコいいクルマに乗って若者の憧れになる必要があると言った」という旨のコメントを残している。

しかし、自動車メーカーは排出ガス規制が厳しいうえに飽和状態になった日本市場よりも需要の堅調な海外市場を重視するようになっている。特に仏ルノー傘下となった日産自動車は、日本でも好調な販売実績を示したティーダを2012年度までで日本国内販売を中止し、主要国ほど自動車排出ガス規制が厳しくないアジアやアフリカ諸国など海外の新興国向けの専用車とする戦略を採った。

なお、20世紀末までは日本国内にもスポーツカーなどの魅力的な車が多数存在したが、平成12年排出ガス規制によって多くの車種が廃止された。この影響も含め、車種だけでなく車両仕様にも変化があり、その例の一つが前輪駆動車(FF車)への偏重化である。FF車のスポーツカーで一定の成功を収めた車種(ホンダ・シビックタイプR)も存在するが、かつて後輪駆動車(FR車)で設計されていた車がモデルチェンジを機にFF車に設計変更されたり(トヨタ・カローラレビン)、FR車で売り出されていた車種が後継に当たる車種が開発されずに絶版になる(日産・シルビア)など、FR車のスポーツカーといった車としての魅力を前面に打ち出した車種は減少傾向となった。実際、経営方針の変化という面もあるが、新規販売されているものの大半がFF車であり、FR車の新車が希少化しているのも事実である。また、魅力の一つとして語られるマニュアルトランスミッション(MT)だが、採用車種の極端な減少(ブランディングとして走りの楽しさを強調するマツダを除くとCセグメント以上のスポーツ車以外ではほとんど選べない)が起きているのも事実だが、マシンのハイパワー化によってMT操作のほうが危険であるという見方[41]が強くなっており、高価格帯のスポーツカーメーカーとして代表的なフェラーリマクラーレンなどは軒並みMTを廃止してセミオートマチックトランスミッション(セミAT)への切り替えが進んでいる。そのため、MT仕様のスポーツカーがないが故の車離れについては評価が分かれる。

一方2013年度の日本国内自動車販売は、トヨタ車のシェアが3割を下回った反面、輸入車が過去最高の国内販売シェアの5%を占めるなど「(上級車の)日本車離れ」も懸念される状況になっている[42]

また、トヨタは日本市場では車の販売が大幅に増える見込みは少ない事、また車の利便性を高めるには公共交通機関など他の交通モードとの連携を高める必要があること[43]から、2018年よりMobility as a Service(Maas)に力を入れ始めるなど車社会から一歩進んだ交通システムを構築しようとしている[44]

日本でシボレー・カマロを購入する年齢層は20代が28%と最も多いが、これは親の趣味や子供の頃に見たトランスフォーマー (2007年の映画)に登場するバンブルの影響が指摘されている[45]


注釈

  1. ^ 全て車両本体・消費税抜き価格。価格に関してはFX、ランクスはGoo-net掲載情報に基づく。オーリスに関しては2013年2月版新車カタログより。スポーツに関してはトヨタ公式サイトに税抜価格が掲載されていなかったため、同サイト掲載の税込価格より算出。全て2019年9月29日閲覧。
  2. ^ このような大都市部では、タクシー会社も非常に充実している。このため、このような地域ではタクシーを日常生活で頻繁に利用しても、自家用車を保有するより金銭的負担が少ない場合もある。
  3. ^ このような大都市部では、ビジネスホテルや、それより安価に利用できるインターネットカフェが多数存在しているため、自動車が無い場合でも、深夜帯の行動も可能である。
  4. ^ なお、サイオンブランド設立の背景にはトヨタ/レクサス両ブランドで付いてしまった「機械としては優秀だが退屈」というトヨタ車のネガティブイメージを払拭し、いわば「若者のトヨタ離れ」を阻止する目的がある。

参照元

  1. ^ a b 四元正弘 2012, p. 39.
  2. ^ a b 四元正弘 2012, p. 40.
  3. ^ 無署名 (2008), “「若者たちの○○離れ」”, 週刊ダイヤモンド 2008年12月27日・2009年1月3日合併号 (ダイヤモンド社): 174頁 
  4. ^ 西村大志 2012, p. 22.
  5. ^ 西村大志 2012, p. 21.
  6. ^ 2015年度乗用車市場動向調査 (PDF)” (日本語). 日本自動車工業会. p. 14 (2016年3月). 2016年6月17日閲覧。
  7. ^ a b c 廣田利幸(トヨタ自動車) (2010年7月26日). “「若者のクルマ離れについて」 (PDF)”. 国土交通省. 2014年8月11日閲覧。
  8. ^ 財団法人自動車検査登録情報協会[1] (PDF) [リンク切れ]
  9. ^ 仮運転免許は道路交通法第87条第6項の規定により、仮運転免許の運転免許試験(適性検査)を受けた日から6か月とされている。そのため、取得に専念する時間が一定期間発生することが避けられないため、仮に期限が切れてしまった場合、講習は一からの再スタートとなる(正確には技能実習が再スタートとなる)。
  10. ^ カローラ セダン1.5X 5M/T(2000年8月) 税抜127.3万円
    ランサーセディア セダン1.5MX 5M/T(2001年5月) 税抜112.3万円
    ファミリア セダン1.3ES 5M/T(1999年8月) 税抜99.1万円
    すべてGoo-net.comより、2020年4月5日閲覧
  11. ^ 価格は各社公式サイトより(カローラ、ゴルフは税抜価格が掲載されていなかったため税込価格より算出)。2020年4月5日閲覧。
  12. ^ a b 池原照雄 (2009年1月14日). “若者のクルマ離れ、その本質は「購買力」の欠如”. 日経ビジネスオンライン (日経BP). http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20090109/182410/ 2017年5月19日閲覧。 [リンク切れ]
  13. ^ 新型「CIVIC」を発売 2017年7月27日、ホンダ公式。2020年4月5日閲覧
  14. ^ a b c d 高木啓 (2007年3月9日). “若者のクルマ離れ…都会で売れない”. Response.. 2008年10月5日閲覧。
  15. ^ a b 清水典之「若者はもはや「クルマ離れ」ではなく「クルマ嫌い」になった(4/5)」『SAPIO』第22巻第06号、小学館、2010年3月31日、 pp.96-97、2016年6月17日閲覧。
  16. ^ “自動車ユーザーの98%が自動車にかかる税金に負担を感じています。” (プレスリリース), 日本自動車連盟, http://www.jaf.or.jp/profile/news/file/2012_34.htm 2012年10月22日閲覧。 
  17. ^ a b 清水典之「若者はもはや「クルマ離れ」ではなく「クルマ嫌い」になった(3/5)」『SAPIO』第22巻第06号、小学館、2010年3月31日、 pp.96-97、2016年6月17日閲覧。
  18. ^ 詳しくは自動車検査・登録ガイド(国土交通省)を参照
  19. ^ a b c d 若者のクルマ離れに関する検証 (PDF) M1F1総研、2007年2月28日
  20. ^ 地域別最低賃金に関するデータ(時間額)、厚生労働省、2020/4/5閲覧
  21. ^ 東京都、最低賃金30円上げ初の800円台 生活保護よりなお低く 日本経済新聞(2010/8/25)、2020/4/5閲覧
  22. ^ 地域別最低賃金の全国一覧、厚生労働省、2020/4/5閲覧
  23. ^ 第7回 みんなで考えようクルマの税金”. 自動車税制改革フォーラム (2009年10月31日). 2011年7月27日閲覧。
  24. ^ 知れば知るほどいいね!軽自動車 (PDF)”. 全国軽自動車協会連合会 (2009年10月31日). 2013年5月9日閲覧。
  25. ^ JAMA レポート No.78 自動車関係諸税の国際比較”. 日本自動車工業会. 2005年5月29日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2016年6月17日閲覧。
  26. ^ 自動車ユーザーの98%が自動車にかかる税金に負担を感じています。”. 日本自動車連盟(JAF) (2012年9月28日). 2012年10月22日閲覧。
  27. ^ 古谷経衡 『欲望のすすめ』 ベストセラーズ〈ベスト新書〉、2014年、94頁。
  28. ^ 古谷経衡 『欲望のすすめ』 ベストセラーズ〈ベスト新書〉、2014年、89頁。
  29. ^ 中野剛志 『レジーム・チェンジ-恐慌を突破する逆転の発想』 NHK出版〈NHK出版新書〉、2012年、35頁。
  30. ^ 高橋洋一 『日本の大問題が面白いほど解ける本 シンプル・ロジカルに考える』 光文社〈光文社新書〉、2010年、25頁。
  31. ^ ガソリン8月に190円突入? 石油元売大手が値上げを検討”. J-CASTニュース (2008年7月23日). 2011年7月27日閲覧。
  32. ^ 自動車保有台数、7か月連続の減少…若者のクルマ離れ影響 読売新聞、2008年9月10日[リンク切れ]
  33. ^ 椿山和雄 (2008年9月10日). “トラスト、民事再生法の適用を申請…負債65億円”. Response.. 2008年10月5日閲覧。
  34. ^ 「若者の車離れ」が響く 大手損保が自動車保険料引き上げへ”. J-CASTニュース (2008年6月23日). 2008年10月5日閲覧。
  35. ^ 若者の車離れの次は熟年の車離れ トヨタの過ちを専門家指摘 NEWSポストセブン、2012年2月5日
  36. ^ “伸び悩むIKEA、都区内駅周辺に小型店開業へ”. YOMIURI ONLINE (読売新聞社). (2018年8月30日). https://www.yomiuri.co.jp/economy/20180830-OYT1T50017.html 2018年8月30日閲覧。 
  37. ^ 若者の車離れ「自動車ゲーム」が原因 「トヨタ自動車幹部」発言に異論続々 J-CASTニュース、2009年10月22日
  38. ^ ホントのエコカーって何だ? 「カー不在」のエコ Carview、2009年12月30日
  39. ^ 若者の車離れの理由「クルマにセクシーさがないから」 NEWSポストセブン、2011年7月11日
  40. ^ 若者の車離れの次は熟年の車離れ トヨタの過ちを専門家指摘 NEWSポストセブン、2012年2月5日
  41. ^ スーパーカーから姿消すMT仕様 フェラーリなどすでに廃止「無謀な行為」 (1/4ページ)www.sankeibiz.jp(2016年7月5日)2020年2月20日閲覧
  42. ^ 【池原照雄の単眼複眼】挟撃で苦戦したトヨタ…13年度国内シェア Response.、2014年4月9日
  43. ^ トヨタはマイカー時代の終焉の訪れを覚悟したのか? – WEDGE Infinity 2018年10月12日掲載 2019年8月24日閲覧
  44. ^ トヨタが本格的なMaaSを小さく始めたわけ – WEDGE Infinity 2018年11月6日掲載 2019年8月24日閲覧
  45. ^ シボレー・カマロを20代の若者が最も多く購入している理由とは?” (日本語). clicccar.com(クリッカー) (2018年11月25日). 2019年6月25日閲覧。
  46. ^ 若者のクルマ離れ、米国でも進む ネットや携帯が原因? CNN.co.jp、2012年9月18日
  47. ^ 米国、85歳超の運転者が増加-若者は車離れ WSJ
  48. ^ EU カーシェアリング、各社が参入:若者の車離れに対応 エヌ・エヌ・エー、2010年5月13日
  49. ^ イタリアですら「若者のクルマ離れ」加速 IT化で変わる価値観 SankeiBiz、2012年10月14日


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