若者の車離れ 若者の車離れの概要

若者の車離れ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/05 11:16 UTC 版)

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根拠

定義とその疑問

この言葉の出自は明らかではないが[1]、用語が用いられたのは2000年代初頭頃であり[1]松田久一の著書「『嫌消費』世代の研究」に代表されるような若者の消費離れがクローズアップされた時期に一致する[2]。また、「若者たちの○○離れ」[3]というニュアンスのひとつとして語られることもある。

ところが、「若者の車離れ」という言葉はしばしば「若者文化論[4](現代若者論)」の一環としても論じられる側面にある。そのため、『若者』とされる対象の年齢変化、時代変化などを厳密に考慮しないまま議論となっていることが指摘されている[5]

統計との関連性

電通の同社のクロスメディア行動調査である「d-camp」によると、「自動車に関心がある」と答えた割合が2001年度から2011年度にかけて20代男性29.4%、女性では25.3%減少していることが明らかになっている[2]

一般社団法人日本自動車工業会は2015年度乗用車市場動向調査[6]にて若年層車非保有者の特性を調査し、「関心層は3割程度で、3割は全く関心なし。関心が高いのは男性既婚者、男性単身者。女性の関心度はやや低い。車購入意向層は4割強。非意向層が5割を超える」、「買いたくない理由は『買わなくても生活できる』『今まで以上にお金がかかる』『車以外に使いたい』。特に車の必要性が低いことが理由」と分析している。

また、トヨタ自動車は「市場低迷」の要因のひとつとして、20代の運転免許証保有人口が減少していること、世帯別の車両保有率が20代から70代のうち2番目に低いことを指摘し、「市場背景の変化」をこの一因としている[7]

一方、2000年代初頭から、日本国内での新車・中古車販売が伸び悩む傾向にあるが、この自動車販売台数の減少傾向は「平均使用年数」の長期化傾向によるものであるとみられる[8]。た、警察庁の運転免許統計では、例えば25歳〜29歳は1990年から2009年までずっと90%を超えているような状況であるという一面をもつ。

要因とされるもの

若者層の車離れに対し、調査によって要因とされるものを以下に示す。

経済的理由

  • 若者層の収入および購買力の低下 - 詳細は「#経済的理由(「買わない」のではなく「買えない」)」を参照。
  • 運転免許証に対する認識の変化 - そもそも、運転免許の取得にはある程度の指定自動車教習所運転免許試験場へ通う費用と時間が掛かることは避けられず[9]、これを忌避して運転免許の取得そのものを諦める人も少なからず存在した。それでも、将来のためという社会通念的な面から運転免許証の取得が促されていたが、近年は公共交通機関の発達などの移動手段の変移により社会通念的な面が弱くなり、取捨選択という位置づけへ変化した。その結果、収入が少ないものは取得しない決断をするものが増え、間接的に購買力が低下する形となった。
  • 車両価格の高額化 - 日本車の新車価格高騰はスポーツ&スペシャリティに限らずカジュアル志向の大衆車においても発生している。軽自動車(とりわけ軽トールワゴン)ですら諸経費を入れると200万円、小型(Cセグメント)車だと税込本体価格ですら300万円かかることもある。2000年前後だとカローラ、ランサーと言ったCセグメント車には1.5リッター車で本体税抜価格110~130万円前後、ファミリアの1.3リッター車に至っては100万円を切るグレードまで存在した[10]が、2020年4月時点ではカローラセダン(12代目)の最廉価グレードで税抜180万円弱、シビックセダン(10代目)に至っては250万円を超えている。なお参考までにシビックの価格はフォルクスワーゲン・ゴルフ(8代目)の最廉価グレード(税抜240万円弱)よりも高額な状況である。かつては関税の影響もあり輸入車のほうが高額なケースが多かったが、近年はそうとは言えず、「日本車はコストパフォーマンスが高い」という定説は必ずしも正しいものとは言い切れなくなった[11]自動車取得時の自動車取得税(2019年10月1日より廃止)の存在[12]
    • 価格の変遷という意味でトヨタ・カローラハッチバック[注釈 1]を見てみると、10年毎に50万円前後ずつ値上がりしている状況である。
    • 若者層に特有の顕示的消費を満たすはずのスポーツカースペシャリティカーの類(クーペスポーツセダンホットハッチ)に関しては若者層の期待所得に比べて高価格化が進む一方であり、その結果として以下の現象が起こっている。
      • スポーツ&スペシャリティに関しては若者に売れない→生産台数を絞り、海外のユーザーや車への憧れやこだわりが強いとされている団塊の世代からバブル世代団塊ジュニア世代までをメインの顧客層とする→さらなる高価格化あるいは国内販売中止・・・といった悪循環に陥っている。おまけにこの手の車種はコアな層(主にファンや走り屋の類)からの需要は根強く、中古車も高値安定どころか後述のように価格高騰すら起こっている。よって新車どころか中古車ですら若者が安く買えるというチャンスは減っている。
      • さらに、この手の車種・グレードは他のグレード(ともすれば1~2クラス上の車種)と比較するとかなり割高である場合もある。例えばFK8シビックタイプRは2017年時点で税抜420万円弱[13]であり、2020年4月時点での「ゴルフGTIより高額」「あと50~70万円ほどでクラウンの廉価グレードが購入可能」な価格であり、内容はともかく価格面ではEK9シビックタイプRのような「若者が手を出せるブランド」や「比較的安価なスポーツカーという売り文句」から程遠い存在になってしまった。
      • その上で追い打ちをかけるように、日本の中古車の海外流出による市場変動も起こっている。特に昨今の「JDMブーム(スポーツコンパクトの項目も参照)」といわゆるアメリカの「25年ルール」による並行輸入障壁の解消などの影響で日本の中古車は海外流出が著しく、車種(極例を挙げるならスカイライン、特にGTーRを筆頭とする80~90年代のスポーツカー各車)によっては価格高騰の流れすらあり若年層でなくとも手が届かない事態になっている。
  • 維持費の問題 - 高額な車両価格もあるが、仮に車両本体価格と購入時に要する維持費を一括で支払えたとしても、毎月(ないし毎年)の定期的な支払いが必要な維持費(自動車税重量税自賠責および自動車任意保険料車検代ガソリンなど燃料代・駐車場料金など)の経済的な問題[14][15][16]の観点から断念することも少なくない。
  • これらの自家用車の維持費を考慮すると、自転車、原動機付自転車(原付)かタクシーレンタカーカーシェアリングを利用した方が、かえって安上がりになる場合もある。

「マイカーのある暮らし」に魅力がなくなった

  • ライフスタイル自体の変化
  • 車以外の物への関心、移動手段の変移(自転車通勤や鉄道やバスなどの公共交通機関機関の発達。特に大都市圏において顕著)、必要性の高まりなど、趣味の多様化[14][15]
  • 競争・差異化意識が低下し、車の所有価値の低下[7][17]
  • 日本国内でもカーシェアリングが普及しつつあり、このような比較的廉価な料金で、自動車が気軽に利用ができる環境が日本にも整い始めたこと。
  • オートマチック限定免許の制定により自動車が白物家電化した結果、魅力的な車がない→#購入対象車種の変化と自動車メーカーの責任を参照。
  • 車を維持できるだけの経済的な余力があったとしても、車検や居住地変更(引っ越し・転勤など)の際に生じるナンバープレートの変更などの煩雑な手続き[18]があり、車に興味のない人間の場合はそれらの手続きを忌避し、自家用車を保有しない。

居住環境によるもの

  • 地方の集合住宅アパート)では、大半の物件で部屋数と同数(1部屋に1台分)の駐車場が確保されているうえ、料金も低額(または家賃に含まれる形)で貸し出されるが、都市部では部屋数と同数の駐車場がほとんどなく、外部で借りる場合年額20万から30万以上別途高額の負担がかかる。駐車場代を負担できる経済的余裕があったとしても、都市部では居住地から離れた場所にしか駐車場がない場合もあるため、利便性に劣る。
    • そのほか、都市部では用務先に駐車場がないことも多く、やむなく用務先から離れた場所の有料駐車場を利用するしかないが、都市部では慢性的な駐車場不足から駐車料金が高額になることが多く、都心3区では5分100円(1時間なら1200円)も珍しくない。大都市部では駐車場を立地するだけの土地がほとんどないため、ビルの地下やタワーパーキングを用いることになるが、火災対策やパーキングマシン、更にはターンテーブルの設置や維持費で多大なコストがかかることが多く、それが大都市での駐車料金高額化の要因になっている。
    • 都市部では排泄行為や荷物の積み下ろしなど、わずか数分の路上駐車でも取り締まりの対象になり、四六時中駐車監視員が目を光らせている。
  • 住居が五大都市圏の場合、陸の孤島がほとんどないため、乗り物は自転車や公共交通機関だけで全くの不便なく十分日常生活を送ることが理論上可能[注釈 2][注釈 3]
  • 経済の大都市圏への集中により、上記の集合住宅での駐車場代が高額であり公共交通機関が発達している都市部に人口が増える一方で、公共交通機関が廃止され自動車が生活に必要不可欠となる地方都市では過疎による人口流出が起きており、結果的に自動車を必要としない家庭が増えている。

市場の縮小

  • 単身・夫婦のみ世帯の増加。特に親と同居している独身者層の新車購入率の極端な低下[7]
  • 少子高齢化社会に代表されるように、そもそも若者の割合・絶対数が年々減少している[17]
  • 燃費や法改正により車の魅力が半減したことを背景として、年配のユーザーも欲しい車がないとの意見も多数ある。現在の自動車産業で日本車人気が高いのは自動車メーカーのブランド力に依る部分があり、実際、人気車種となった軽自動車を見ても、車の性能を左右するエンジンは様々な要因もあり、ほぼ横並びとなっているが、それにもかかわらず販売数が減少することがないことない。また、人は視覚や感覚などの数字では表せない感性領域で車を楽しむ側面がある。2010年代現在各自動車メーカーは燃費の追求やASV/サポカーコネクテッドカーといった新システムの開発投入に腐心しているが、ユーザーは美しさ(カッコ良さや可愛さ)と必要最低限の装備を備えた車両を求めている。それらを考慮すれば、ブランド力の依存やユーザーが求めるデザイン性のすれ違いという指摘はあながち間違っていないと言える。

注釈

  1. ^ 全て車両本体・消費税抜き価格。価格に関してはFX、ランクスはGoo-net掲載情報に基づく。オーリスに関しては2013年2月版新車カタログより。スポーツに関してはトヨタ公式サイトに税抜価格が掲載されていなかったため、同サイト掲載の税込価格より算出。全て2019年9月29日閲覧。
  2. ^ このような大都市部では、タクシー会社も非常に充実している。このため、このような地域ではタクシーを日常生活で頻繁に利用しても、自家用車を保有するより金銭的負担が少ない場合もある。
  3. ^ このような大都市部では、ビジネスホテルや、それより安価に利用できるインターネットカフェが多数存在しているため、自動車が無い場合でも、深夜帯の行動も可能である。
  4. ^ なお、サイオンブランド設立の背景にはトヨタ/レクサス両ブランドで付いてしまった「機械としては優秀だが退屈」というトヨタ車のネガティブイメージを払拭し、いわば「若者のトヨタ離れ」を阻止する目的がある。

参照元

  1. ^ a b 四元正弘 2012, p. 39.
  2. ^ a b 四元正弘 2012, p. 40.
  3. ^ 無署名 (2008), “「若者たちの○○離れ」”, 週刊ダイヤモンド 2008年12月27日・2009年1月3日合併号 (ダイヤモンド社): 174頁 
  4. ^ 西村大志 2012, p. 22.
  5. ^ 西村大志 2012, p. 21.
  6. ^ 2015年度乗用車市場動向調査 (PDF)” (日本語). 日本自動車工業会. p. 14 (2016年3月). 2016年6月17日閲覧。
  7. ^ a b c 廣田利幸(トヨタ自動車) (2010年7月26日). “「若者のクルマ離れについて」 (PDF)”. 国土交通省. 2014年8月11日閲覧。
  8. ^ 財団法人自動車検査登録情報協会[1] (PDF) [リンク切れ]
  9. ^ 仮運転免許は道路交通法第87条第6項の規定により、仮運転免許の運転免許試験(適性検査)を受けた日から6か月とされている。そのため、取得に専念する時間が一定期間発生することが避けられないため、仮に期限が切れてしまった場合、講習は一からの再スタートとなる(正確には技能実習が再スタートとなる)。
  10. ^ カローラ セダン1.5X 5M/T(2000年8月) 税抜127.3万円
    ランサーセディア セダン1.5MX 5M/T(2001年5月) 税抜112.3万円
    ファミリア セダン1.3ES 5M/T(1999年8月) 税抜99.1万円
    すべてGoo-net.comより、2020年4月5日閲覧
  11. ^ 価格は各社公式サイトより(カローラ、ゴルフは税抜価格が掲載されていなかったため税込価格より算出)。2020年4月5日閲覧。
  12. ^ a b 池原照雄 (2009年1月14日). “若者のクルマ離れ、その本質は「購買力」の欠如”. 日経ビジネスオンライン (日経BP). http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20090109/182410/ 2017年5月19日閲覧。 [リンク切れ]
  13. ^ 新型「CIVIC」を発売 2017年7月27日、ホンダ公式。2020年4月5日閲覧
  14. ^ a b c d 高木啓 (2007年3月9日). “若者のクルマ離れ…都会で売れない”. Response.. 2008年10月5日閲覧。
  15. ^ a b 清水典之「若者はもはや「クルマ離れ」ではなく「クルマ嫌い」になった(4/5)」『SAPIO』第22巻第06号、小学館、2010年3月31日、 pp.96-97、2016年6月17日閲覧。
  16. ^ “自動車ユーザーの98%が自動車にかかる税金に負担を感じています。” (プレスリリース), 日本自動車連盟, http://www.jaf.or.jp/profile/news/file/2012_34.htm 2012年10月22日閲覧。 
  17. ^ a b 清水典之「若者はもはや「クルマ離れ」ではなく「クルマ嫌い」になった(3/5)」『SAPIO』第22巻第06号、小学館、2010年3月31日、 pp.96-97、2016年6月17日閲覧。
  18. ^ 詳しくは自動車検査・登録ガイド(国土交通省)を参照
  19. ^ a b c d 若者のクルマ離れに関する検証 (PDF) M1F1総研、2007年2月28日
  20. ^ 地域別最低賃金に関するデータ(時間額)、厚生労働省、2020/4/5閲覧
  21. ^ 東京都、最低賃金30円上げ初の800円台 生活保護よりなお低く 日本経済新聞(2010/8/25)、2020/4/5閲覧
  22. ^ 地域別最低賃金の全国一覧、厚生労働省、2020/4/5閲覧
  23. ^ 第7回 みんなで考えようクルマの税金”. 自動車税制改革フォーラム (2009年10月31日). 2011年7月27日閲覧。
  24. ^ 知れば知るほどいいね!軽自動車 (PDF)”. 全国軽自動車協会連合会 (2009年10月31日). 2013年5月9日閲覧。
  25. ^ JAMA レポート No.78 自動車関係諸税の国際比較”. 日本自動車工業会. 2005年5月29日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2016年6月17日閲覧。
  26. ^ 自動車ユーザーの98%が自動車にかかる税金に負担を感じています。”. 日本自動車連盟(JAF) (2012年9月28日). 2012年10月22日閲覧。
  27. ^ 古谷経衡 『欲望のすすめ』 ベストセラーズ〈ベスト新書〉、2014年、94頁。
  28. ^ 古谷経衡 『欲望のすすめ』 ベストセラーズ〈ベスト新書〉、2014年、89頁。
  29. ^ 中野剛志 『レジーム・チェンジ-恐慌を突破する逆転の発想』 NHK出版〈NHK出版新書〉、2012年、35頁。
  30. ^ 高橋洋一 『日本の大問題が面白いほど解ける本 シンプル・ロジカルに考える』 光文社〈光文社新書〉、2010年、25頁。
  31. ^ ガソリン8月に190円突入? 石油元売大手が値上げを検討”. J-CASTニュース (2008年7月23日). 2011年7月27日閲覧。
  32. ^ 自動車保有台数、7か月連続の減少…若者のクルマ離れ影響 読売新聞、2008年9月10日[リンク切れ]
  33. ^ 椿山和雄 (2008年9月10日). “トラスト、民事再生法の適用を申請…負債65億円”. Response.. 2008年10月5日閲覧。
  34. ^ 「若者の車離れ」が響く 大手損保が自動車保険料引き上げへ”. J-CASTニュース (2008年6月23日). 2008年10月5日閲覧。
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  37. ^ 若者の車離れ「自動車ゲーム」が原因 「トヨタ自動車幹部」発言に異論続々 J-CASTニュース、2009年10月22日
  38. ^ ホントのエコカーって何だ? 「カー不在」のエコ Carview、2009年12月30日
  39. ^ 若者の車離れの理由「クルマにセクシーさがないから」 NEWSポストセブン、2011年7月11日
  40. ^ 若者の車離れの次は熟年の車離れ トヨタの過ちを専門家指摘 NEWSポストセブン、2012年2月5日
  41. ^ スーパーカーから姿消すMT仕様 フェラーリなどすでに廃止「無謀な行為」 (1/4ページ)www.sankeibiz.jp(2016年7月5日)2020年2月20日閲覧
  42. ^ 【池原照雄の単眼複眼】挟撃で苦戦したトヨタ…13年度国内シェア Response.、2014年4月9日
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  45. ^ シボレー・カマロを20代の若者が最も多く購入している理由とは?” (日本語). clicccar.com(クリッカー) (2018年11月25日). 2019年6月25日閲覧。
  46. ^ 若者のクルマ離れ、米国でも進む ネットや携帯が原因? CNN.co.jp、2012年9月18日
  47. ^ 米国、85歳超の運転者が増加-若者は車離れ WSJ
  48. ^ EU カーシェアリング、各社が参入:若者の車離れに対応 エヌ・エヌ・エー、2010年5月13日
  49. ^ イタリアですら「若者のクルマ離れ」加速 IT化で変わる価値観 SankeiBiz、2012年10月14日




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