援助交際
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/12 00:40 UTC 版)
日本における歴史的経緯
ここでは、援助交際が行われる舞台の変遷について記載する。
1980年代
- 1982年頃に、女子大生を売りにした愛人バンク「夕ぐれ族」が世間から注目を集め、類似組織が多数生まれた。
- 1985年の風俗営業法改正後に「テレフォンクラブ」(テレクラ)が注目される。
- 1986年4月3日の朝日新聞夕刊(東京版)の記事に、「テレクラで男性客とデートをしていた家出中の女子高生が補導された」という内容が掲載された。同記事によれば、テレクラは1985年秋頃から新宿・渋谷などに急増し、この頃までに100軒ほどあったという。
1990年代
- バブル崩壊直後の1992年から1993年にかけて、スカートを短くしてルーズソックスを履いた女子高生が登場し、物珍しさからそれをマスメディアが「コギャル」と呼び頻繁に取り上げた。以降、1980年代から続いていたOL・女子大生ブームと入れ変わる形で世間から注目を集め、「女子高生ブーム」が発生した。それ以前の1980年代にも、おニャン子クラブ等のヒットで女子高生が注目された時期があったものの、あくまでエンタメ業界が中心で尚且つ同世代の学生をターゲットとしていた局地的な流行であった。しかし、1990年代前半からの女子高生ブームは実社会の一般の女子高生を中心とした流行であり、大人にまでその流行が到達していたことが、それ以前の状況とは大きく異なっていた。
- そのような流れの中で女子高生ブームは性産業にまで波及してしまい、同時期に誕生した「ブルセラショップ」は社会問題となった。1993年(平成5年)8月には、古物営業法および職業安定法違反で警視庁は初めてブルセラショップを摘発した。
- 1994年にはダイヤルQ2を使い「援助交際クラブ」(デートクラブ)と称し、児童を使って売春(組織売春)をしていた業者が摘発されたことがきっかけで、マスコミに初めて「援助交際」のワードが出現するようになる[22]。
- 1995年以降、1993年前後から既に流行していたポケットベルや携帯電話・PHSが社会人や青少年に爆発的に普及しはじめ、家族や学校などの周囲に悟られないコミュニケーションが可能となった。また、バブル崩壊等による機能不全家族の増加とそれに伴うネグレクトや、平成以降の日本の核家族の増加による親子関係の希薄化と非行問題の関連が指摘され始める。
- 1996年に『週刊文春』にて、援助交際についてのルポルタージュが連載される[注 1]。レポーターの黒沼克史はテレフォンクラブやデートクラブに潜入し、その実態を抉り出して世間を騒然とさせた。このルポルタージュは純粋な調査報道だったが、これがいったん世に出ると大衆紙や低俗週刊誌は興味本位に書き立て、それまで援助交際など知らなかった女の子たちまでやりたがるようになり、それがまた報道を過熱させるという悪循環が起きた[23]。こういった経緯で当時日本中で話題になっていった「援助交際」という言葉は、この年ユーキャンが主催する毎年恒例の流行語大賞にノミネートされた。流行語大賞(の選考)で「援助交際」は惜しくも年間大賞を逃したものの、上位でのトップテン入りを果たし、全国放送されたテレビ特番の授賞式で「援助交際」が発表され、1996年の日本を象徴する流行語となった。「援助交際」は特に(1990年代前半から)"女子高生ブーム"を起こしていた当時の女子高生を象徴する言葉であったが、女子高生以外の学生(専門学生・短大生・大学生・大学院生)やフリーター・女性会社員・女性公務員・主婦なども幅広く象徴する流行語であった。
- 1996年の東京都生活文化局の男子を含む当時の中高生を対象にした調査によると、援助交際を経験したことがある者は3.3%。1997年のベネッセ教育研究所の調査では、女子を対象として4.4%であった[24]。
- 1997年、援助交際の急増を受けて警察(大阪府警)により「援助交際は売春です。」との内容のポスターが製作され、同じ内容のテレビコマーシャルも全国放送されるにまで至った。
- 1999年にはNTTドコモがiモードのサービスを開始し、iモード用の匿名掲示板や出会い系サイトが登場して社会問題となる。
- 1999年11月1日、援助交際の社会問題化を受けて「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」が施行され、法規制が強化された。
2000年代
- 2003年に「出会い系サイト規制法」が制定され、法規制が強化された。
- 2006年、法規制が行われた出会い系サイトと入れ替わる形で店舗型の「出会い喫茶」が拡大する。法規制が明確でない業態であることから、新たな援助交際の温床となる可能性が指摘されていた[注 2]。
- 2008年頃から、後に「JKリフレ」と呼ばれる形態の店舗が拡大し始める。
2010年代
- 2010年7月4日に風営法施行令が改正され、出会い喫茶を「店舗を設けて、専ら、面識のない異性との一時の性的好奇心を満たすための交際(会話を含む。)を希望する者に対し、当該店舗内においてその者が異性の姿態若しくはその画像を見てした面会の申込みを当該異性に取り次ぐこと又は当該店舗内に設けた個室若しくはこれに類する施設において異性と面会する機会を提供することにより異性を紹介する営業」と定義して、性風俗関連特殊営業の規制対象とし、2011年1月1日より施行された。これにより、出会い喫茶は18歳未満の者の立ち入りや営業地域・営業時間・広告宣伝などが全国的に規制されるようになった。
- 出会い喫茶が規制された2011年以降、入れ変わるような形で秋葉原を中心に所謂「JKビジネス」店が急拡大し、2010年代前半から後半にかけて国際的な社会問題となる。
- 2013年4月以降、警察は「JKリフレ」「JK撮影会」「JKお散歩」等の「JKビジネス」に従事している、18歳未満の従業員を補導の対象とした[25]。
- 2014年には、アメリカ合衆国国務省がレポートを纏めた『人身売買に関する年次報告書』において、日本の「JKお散歩」が性目的の人身売買の例として取り上げられた[26][27]。
- 2015年3月には全国に先駆けて、愛知県が青少年保護育成条例の改正という形で、JKビジネスを「有害役務営業[注 3]」と位置付けて、18歳未満による接客を禁じ、有害役務営業をしている店舗には行政が立ち入り調査し、違反があれば営業停止命令を出し、停止命令違反者は1年以下の懲役又は50万円以下の罰金を科される内容を盛り込む条例『JKビジネス包括的規制条例』が制定され、7月1日に施行された[28]。
- 2017年(平成29年)3月には、警視庁の有識者懇談会(座長:藤原静雄中央大学教授)の提言を受け[29]、東京都がJKビジネスを「特定異性接客営業[注 4]」と位置付けて、18歳未満による接客を禁じ、店舗には行政が立ち入り調査し、違反があれば営業停止命令を出し、停止命令違反者は1年以下の懲役又は50万円以下の罰金を科される内容を盛り込む新条例「特定異性接客営業等の規制に関する条例」が制定され[30]、7月1日に施行された[31]。また条例施行規則では、「特定異性接客営業」における「青少年が客に接する業務に従事していることを明示し、若しくは連想させるものとして東京都公安委員会規則で定める文字、数字その他の記号[注 5]」が規定され、対象となる営業所の名称は条例の規制対象となった。
- 2017年頃から、JKビジネスの摘発の厳罰化に伴い再び店舗の存在しないSNS援交が流行し始める[32]。
2020年代
- 2020年頃から、不良行為少年である所謂「トー横キッズ」を中心とした児童売買春が社会問題となる。
- 2023年7月、強制性交、準強制性交罪が「不同意性交罪」として、罰則が強化される。「盗撮処罰法」が新設され、各都道府県の迷惑防止条例ではなく、国の法律により重く罰せられることとなる。
注釈
- ^ のちこれをまとめたのが、黒沼克史『援助交際 - 女子中高生の危険な放課後』(文藝春秋、1996年)である。
- ^ 2008年4月29日朝日新聞によれば、出会い喫茶を利用した18歳未満の少女19人が摘発されている。
- ^ 「喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、客に接する役務を行う者に、客の性的好奇心をそそる、水着、制服等を着用した姿態又は着衣内の下着を客が見ることができるような姿態をさせるもの」「個室を設け、当該個室において専ら異性の客に対し接触する役務を提供する営業」「店舗を設けて、客の性的好奇心をそそる、水着、制服等を着用した人の姿態又は着衣内の下着を客が見ることができるような人の姿態を客に見せる役務を提供する営業」「店舗を設けて、営業に従事する者を専ら異性の客に同伴させて客に遊興をさせる営業」「人の住居又は人の宿泊の用に供する施設において専ら異性の客に対し接触する役務を提供する営業で、当該薬務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの」「客の性的好奇心をそそる、水着、制服等を着用した人の姿態又は衣服内の下着が見ることができるような人の姿態を客に見せる役務を提供する営業で、当該薬務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの」「営業に従事する者を専ら異性の客に同伴させて客に遊興をさせる営業で、当該同伴をさせる者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの」
- ^ 「青少年が客に接する業務に従事していることを明示し、若しくは連想させるものとして東京都公安委員会規則で定める文字、数字その他の記号、映像、写真若しくは絵を営業所の名称、広告若しくは宣伝に用いるもの又は青少年が客に接する業務に従事していることを明示し、若しくは連想させるものとして公安委員会規則で定める衣服を客に接する業務に従事する者が着用するもので、青少年に関する性的好奇心をそそるおそれがあるもの」であって「専ら異性の客に接触し、又は接触させる役務を提供する営業」「専ら客に異性の人の姿態を見せる役務を提供する営業」「店舗を設け、当該店舗において専ら異性の客の接待をする役務を提供する営業」「客に接する業務に従事する者が専ら異性の客に接するもの」
- ^ JK、15歳、16歳、17歳、高1、高2、高3、高校1年生、高校2年生、高校3年生、こども、インターハイ、ジャージ、スクール、スクール水着、スク水、セーラー服、ティーン、テスト、ブルマ、ブレザー、ランドセル、乙女、女の子、開校、課外、学院、学園、学生、学生服、学年、学校、家庭科、教育実習生、教師、教室、現役、高校、高校生、校則、公立、黒板、在校生、児童、授業、授業料、出席表、出席簿、少女、女子校生、女子高生、私立、新学期、新入生、生徒、制服、先生、全日制、卒業、体育祭、体操着、体操服、担任、中学生、通学路、転校生、同級生、登校、当校、特待生、日直、入学、部員、部活、部活動、放課後、娘、優等生
出典
- ^ 瑞穂, 高木. “「お金よりも“求められてる感”が…」歌舞伎町で体を売り続ける17歳女子高生が告白した援助交際の“居心地””. 文春オンライン. 2022年3月11日閲覧。
- ^ 百科事典マイペディア,デジタル大辞泉. “援助交際とは”. コトバンク. 2022年3月11日閲覧。
- ^ 櫻庭隆浩, 松井豊, 福富護, 成田健一, 上瀬由美子, 宇井美代子, 菊島充子「女子高校生における『援助交際』の背景要因」『教育心理学研究』第49巻第2号、日本教育心理学会、2001年、167-174頁、doi:10.5926/jjep1953.49.2_167、ISSN 0021-5015、NAID 130004624081、NDLJP:10625459。 p.167 より
- ^ 2008年1月17日産経新聞[要ページ番号]
- ^ JK=女子高生、これって常識ですか? 元はネットスラングなのに、大手新聞サイトも使用
- ^ “「ママ活」で補導された17歳男子高校生とのお茶の値段は?「パパ活」より市場は活性化”. AERA dot. (朝日新聞出版). (2018年11月9日). オリジナルの2019年4月9日時点におけるアーカイブ。 2021年8月10日閲覧。
- ^ “News Letter of The Dawn Center”. 財団法人大阪府男女共同参画推進財団. 2016年3月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年3月18日閲覧。
- ^ SEX IN DEPTH / The young ones(Asia Times Online、2008年5月10日付)。記事にて「Enjo kosai」を「Compensated dating」と解説し、「日本では援助交際はほぼ売春と看做され違法であるものの、その実態はアジア諸国にも知られており、真似をする少女も多い」としている。
- ^ Girls sell sex in Hong Kong to earn shopping money(CNN、2009年9月24日付)。CNN香港支局からの「ショッピングの小遣いを得るために、香港の少女たちが性を売っている」とする記事。写真のキャプションには「援助交際に関わるほとんどの少女が自分自身を売春婦とは考えていないと、社会福祉関係者は語る (Most girls who engage in compensated dating don't view themselves as prostitutes, a social worker says.) 」とある。
- ^ “夫婦円満な外資OLが"パパ活"をするワケ 「夫にバレない自信はある」”. PRESIDENT Online (2018年11月14日). 2019年3月22日閲覧。
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- ^ “パパ活で月100万稼ぐ女性にインタビュー!パパ活アプリの実態や使い方を聞いた”. 2023年6月27日閲覧。
- ^ パパ活女子「お手当、現金だからバレない♪」はずが…税務調査→唖然の追徴課税額に「なにかの間違いでは」【税理士が解説】
- ^ 梅毒が最多ペースで急拡大 「パパ活も一因」と専門家が指摘
- ^ “「ママ活」の意外な実態、東大生男子に地味め主婦が多い理由”. DIAMOND online (2019年2月23日). 2021年11月1日閲覧。
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- ^ マット・アルト 『新ジャポニズム産業史 1945-2020』第6章「女子高生王国」 日経BP社、2021年、pp.234-235。
- ^ “国連担当者が「日本の女子学生の30%が援交経験」 根拠は不明のまま、記者会見で「いいかげん発言」2015年10月28日19時20分”. J-CASTニュース. 2024年2月5日閲覧。
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- ^ “JKビジネスは「有害役務営業」 全国初の全面規制、愛知で条例改正”. 産経新聞. (2015年3月20日)
- ^ “JKビジネス 18歳未満は禁止 警視庁有識者懇が報告書”. 毎日新聞. (2016年5月25日) 2020年7月8日閲覧。
- ^ “JKビジネス規制条例案可決、全国初 東京都議会、18歳未満就労禁止へ 水着や下着姿で接客するガールズ居酒屋も”. 産経新聞. (2017年3月30日) 2020年7月8日閲覧。
- ^ “ネットに氾濫 JKビジネス 規制条例施行”. 東京新聞. (2017年7月2日)
- ^ “SNS援交が蔓延 少女たちを食い物にする悪徳業者も存在”. www.news-postseven.com. 2019年4月9日閲覧。
- 1 援助交際とは
- 2 援助交際の概要
- 3 日本の法律
- 4 日本における歴史的経緯
- 5 援助交際防止への取り組み
- 6 脚注
- 援助交際のページへのリンク