閾値
別表記:しきい値
閾値とは、ある値が所定の水準を超えると特定の変化が生じたり判定・区別が変わったりする、という場合の「所定の水準」「数値的な境目」「境界線となる値」を意味する語である。
「閾値」の読み方は「いきち」と「しきいち」の2通りある。生物学の分野などでは「いきち」と読むことが多い。工学・ IT関連の分野では「しきいち」と読むことが多い。「しきい値」と表記されることも多い。
英語では「閾値」は threshold(スレッショルド)という。文脈によっては「閾値」を border line(ボーダーライン:境界線)と訳することもある。
閾値の「閾」の字は「域」(いき)および「敷居」(しきい)に通じる言葉で、境目・区切り・境界といった意味合いを含む字である。「閾」の字は常用外漢字(非常用漢字)であるため「しきい値」と表記される場合が多々ある。なお「閾値(しきい-ち)」という読み方は訓読み+音読みの湯桶読みである。
生物学には「悉無律」(全か無かの法則)と呼ばれる法則がある。おおざっぱに言うと「刺激が加えられても所定の値に満たない場合は全く反応せず、所定の値を超えた場合は完全に刺激に反応する」という趣旨の法則である。この法則において反応する・しないの境目となる値が、生物学における「閾値」である。
閾値
別名:しきい値
【英】threshold
閾値とは、その値を境にして、動作や意味などが変わる値のことである。
閾値は、ユーザーの使い方や好み、動作環境などにより大きく異なり、プログラムを制御するために一意に決めることが難しいパラメータに対して使用されることが多い。
人間であれば曖昧な条件でも許されても、コンピュータには明確な指示を与える必要があり、そのような場合に閾値と呼ばれることが多い。また、動作を確認しながら、その値を決めていくチューニング値の場合も閾値と呼ばれる。
しきい値
英語表記:thresholds
放射線による被ばく影響は、障害の種類によって異なるが、一定の放射線量以下では発生せず、これを超えて始めて発生すると考えられており、この障害が起きる境目の線量をしきい値という。
外部から影響(作用量)によりある現象や効果が発生する場合、必要とする最少の影響(作用量)で、それ以下の量ではその現象や効果は起こらない。
皮ふの紅斑、脱毛、不妊などの放射線による確定的影響では、それらの影響を生ずる最小の線量が知られており、これを「しきい値」という。
ICRP勧告の線量限度を決定するための大原則として、いかなる理由があってもしきい値を超えるような線量を与えないことがうたわれている。ICRP勧告における「組織線量当量限度」はこの考え方に基づいている。(2001年4月より法改正で「組織線量当量」は「等価線量」に用語変更)
しきい値
しきい値
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/20 22:51 UTC 版)
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しきい値(閾値、しきいち、英語: threshold )あるいは閾値(いきち)は、境目となる値のこと。「閾」(しきい)の字は日本の常用漢字外である。
生理学や心理学では「いき値」が、物理学や工学では「しきい値」が、学術用語として定着している。
19世紀の生理学から精神物理学を介して現代の心理学に受け継がれる用法では、刺激の存在、あるいは刺激の量的差異を感覚するに必要な最小限の刺激値(刺激閾と弁別閾)を指す。
現代の生理学では、神経細胞が平常状態から活動状態へ転換するのに必要な最低限の電気的信号の強さの値を指す。
デジタル画像処理の分野においては、減色処理で使われる用語である。例えば、ある基準の濃度を超える色を黒、それ以外を白にする2値化処理において、この色濃度の基準(黒とするための最小限の濃度)をしきい値、閾値と呼ぶ。また、このように基準を設定して色を区別する処理のことをしきい値処理、または閾値処理と呼ぶことがある。
このほか、電子回路におけるオンオフの境界電圧や、放射線、毒物などの分野でも用いられる。
電子回路
電子回路の分野においては、主にデジタル回路で「高電位」と「低電位」を区別する境となる電位を指す。多くの大学の工学部のカリキュラムに組まれている。
デジタル回路では、信号線の電位がしきい値の付近にある場合、電位のごくわずかな揺らぎによって論理「H」として解釈されたり論理「L」として解釈されたりするため、正しい処理ができなくなる。さらに、CMOSによる回路ではしきい値付近の電位を入力信号線に与えると内部に大電流が流れて素子破壊の危険がある。このため、しきい値に大きな幅を持たせて、「○○ V以下ならLとする」「○○ V以上ならHとする」というように上下限が規定されていることが多い。
同じデジタル回路でも、素子の構造によってしきい値範囲は大きく異なる。このため、動作電圧が同じであってもしきい値が異なる場合には回路を直接接続することはできない。例えば、TTLのしきい値は0.8 V - 2.0 Vであるが、これをしきい値が1.0 V - 3.5 VであるCMOSと接続することはできない。ただし、CMOS標準ロジックICの場合、回路を工夫してTTLとしきい値をほぼ同一にした製品群があるため、この問題は解決されている。
このように、入力電位がしきい値範囲内になることを避けなければならないが、電気回路である限り電位の過渡状態は必ず存在し、その時間をゼロにすることはできない。特に通信線などの配線長が長い回路の場合には、配線部分の静電容量と抵抗により電位変化がゆっくりになり、しきい値範囲に入ってしまう時間が長くなることがある。
このような場合には、回路素子を工夫することにより、「低電位から高電位に変化する際のしきい値」と「高電位から低電位に変化する際のしきい値」を異なるものとする。例えば低電位が0 V、高電位が5 Vだとして、低電位から高電位に変化する際のしきい値を4 V、高電位から低電位に変化する際のしきい値を1 Vとなるようにつくられた回路で説明をしよう。入力信号が0 Vから5 Vまでゆっくりと上昇した場合、4 Vを超えるまでは「低電位である」と判断されるため、1 V付近で電位が揺らいでも問題が無い。ひとたび4 Vを超えると、今度は「高電位である」と判断されるので1 Vのしきい値を下回らない限り高電位であるという判断は変わらない。つまり、4 V付近で電位が揺らいでも問題が無い。入力信号が5 Vから0 Vに変化する場合も同様で、この回路は入力信号の揺らぎに対して安定して動作することになる。
このように工夫した入力回路は、「シュミットトリガ」や「入力ヒステリシス回路」などと呼ばれる。
関連項目
外部リンク
「しきい値」の例文・使い方・用例・文例
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