プログラム‐さいぼうし〔‐サイバウシ〕【プログラム細胞死】
アポトーシス
プログラム細胞死
プログラム細胞死
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/02/13 08:32 UTC 版)
プログラム細胞死(プログラムさいぼうし、英: Programmed cell death, PCD)は多細胞生物における不要な細胞の計画的(予定・プログラムされた)自殺である。組織傷害などで細胞死を起こす壊死と異なり、一般にはPCDは生物の生命に利益をもたらす調節されたプロセスである。PCDは植物、動物、一部の原生生物で正常な組織形成や病原体などによる異常への対処として働く。
分類
プログラム細胞死は、細胞死を起こしたときの形態学上の違いから次の3つのタイプに分類されている:
- タイプ1細胞死
- アポトーシスによるもの。クロマチンが凝縮(核濃縮)して細胞核が断片化する(核崩壊)という形態上の特徴を示す。動物におけるPCDの重要な一形式である。
- タイプ2細胞死
- オートファジーを伴う細胞死である。細胞質内にオートファゴソームと呼ばれる小胞が形成されるという形態上の特徴を示す。細胞核の萎縮が見られるが、断片化はあまり見られない[1][2]。
- その他の細胞死
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→詳細は「パノトーシス」を参照
- タイプ1、タイプ2のPCDの他にも、細胞死の経路が知られている[3]。非アポトーシス性プログラム細胞死」(または「カスパーゼ非依存性プログラム細胞死」「ネクロトーシス」)と呼ばれるこれらの代替的細胞死経路はアポトーシスと同様に効率的であり、バックアップ機構として、あるいは主要なPCD(プログラム細胞死)の形態として機能し得る[4]。
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具体的には、誘導方法以外はアポトーシスとほぼ同一のアノイキス、表皮に特有の細胞死である角化、興奮毒性、鉄依存性の細胞死形態[5]であるフェロトーシス、およびワーラー変性がある。
- ネクロトーシスはプログラムされた壊死、即ち炎症性細胞死の一形態である。従来、壊死は細胞損傷や病原体の浸潤に起因する非プログラム細胞死と関連付けられており、アポトーシスによる秩序だったプログラム細胞死とは対照的である。
- ネモーシスは線維芽細胞において生じる別のプログラム壊死形態である[6]。
- アポネクローシスはアポトーシスと壊死のハイブリッドであり、不完全なアポトーシス過程が壊死によって完了する状態を指す[7]。
- 赤血球死[8]は赤血球の自殺的死滅の一形態である[9]。
- ネトーシスは好中球の細胞死過程の一つであり、好中球細胞トラップ(NETs)を生じる[10]。
- パラトーシスはIGF-1の活性化を介してMAPKによって媒介される、非アポトーシス性細胞死の一種である。細胞内での液胞形成とミトコンドリアの膨張を特徴とする[11]。
- ピロトーシスは炎症性細胞死の一種であり、特定の微生物による感染に応答して、アポトーシスに関与しない酵素であるカスパーゼ-1によって特異的に媒介される[11]。
植物細胞のPCDはオートファジーによる細胞死に類似しており、PCDの幾つかの特徴は、植物と後生動物の両方で高度に保存されている[4]。
PCDの概念は1964年(「アポトーシス」の語ができる8年前)昆虫の組織発達に関して用いられた。PCDはアポトーシスより一般的な広い概念として用いられた。植物でも「アポトーシス」の語を使うことがあるが、これは正確でない。
植物のPCD
維管束植物ではPCDは発達と形態維持において重要な役割を担っている。木部(導管)は細胞壁の肥厚とPCDによって形成される。
植物のPCDは動物と共通した点(たとえばDNAの断片化)もあるが、導管形成では液胞の崩壊が核の分解の引金となるという点は特殊である[12]。一方ヒマワリの細胞質雄性不稔ミトコンドリアで、動物と同様に重要な役割を担うことが示唆されている[13]。
また植物ではウイルスなどの病原体を封じ込める過程として「過敏感細胞死」がよく知られている。これも液胞の崩壊によって惹き起こされるが、最近、反応の中心となる液胞のプロテアーゼ(動物のカスパーゼ類似の活性をもつが機能は異なると考えられる)が同定された[14]。
細胞性粘菌におけるPCD
細胞性粘菌(原生生物)のDictyostelium discoideum は、はじめはバクテリアを捕食する単細胞アメーバ状だが、餌が少なくなると合体してナメクジ状の偽変形体になる。これはさらに茎を形成しその上に子実体を形成して胞子を作る。茎は一種のPCDを経て死んだ細胞からなるが、このPCDはオートファジー性細胞死の性質(小胞の形成、クロマチンの凝縮)を有する。ただしDNAの断片化は起こらない。これは植物のPCDに似ている[16]。
引用文献
- ^ Schwartz, L.M., S.W. Smith, M.E. Jones, and B.A. Osborne(1993). "Do all programmed cell deaths occur via apoptosis?" PNAS 90(3): 980-984.
- ^ Bursch W, Ellinger A, Gerner C, Fröhwein U, Schulte-Hermann R.(2000). "Programmed cell death (PCD). Apoptosis, autophagic PCD, or others?" Ann N Y Acad Sci 926:1-12.
- ^ “Caspase-independent cell death”. Nature Medicine 11 (7): 725–730. (July 2005). Bibcode: 2005NatMe..11..725K. doi:10.1038/nm1263. PMID 16015365.
- ^ a b Tait, Stephen W. G.; Ichim, Gabriel; Green, Douglas R. (2014-05-15). “Die another way--non-apoptotic mechanisms of cell death”. Journal of Cell Science 127 (Pt 10): 2135–2144. doi:10.1242/jcs.093575. ISSN 1477-9137. PMC 4021468. PMID 24833670.
- ^ “Ferroptosis: an iron-dependent form of nonapoptotic cell death”. Cell 149 (5): 1060–1072. (May 2012). doi:10.1016/j.cell.2012.03.042. PMC 3367386. PMID 22632970.
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- ^ “Aponecrosis: morphological and biochemical exploration of a syncretic process of cell death sharing apoptosis and necrosis”. Journal of Cellular Physiology 182 (1): 41–49. (January 2000). doi:10.1002/(sici)1097-4652(200001)182:1<41::aid-jcp5>3.0.co;2-7. PMID 10567915.
- ^ “慢性腎臓病の進行に伴う貧血、赤血球生存率の低下が関与”. academia.carenet.com. 2026年2月13日閲覧。
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- ^ Levraud, J.P. et al.(2003) "Dictyostelium cell death : early emergence and demise of highly polarized paddle cells" Journal of Cell Biology 160(7): 1105-1114.
外部リンク
プログラム細胞死
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/14 02:38 UTC 版)
詳細は「プログラム細胞死」を参照 プログラム細胞死(英: programmed cell death、PCD)とは、細胞内のプログラムによって引き起こされる細胞死のことである。PCDは制御されたプロセス(英語版)で行われており、通常、生物のライフサイクルの中で利点がもたらされる。たとえば、発生中のヒト胚における指と足指の分化は、指の間の細胞がアポトーシスすることで起こり、指が分離される。PCDは、植物や後生動物(多細胞動物)の両方で、組織形成において基本的な機能を果たしている。
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