エックスハイト
【英】X-height
エックスハイトとは、アルファベットの小文字表記において「x」に代表される字で用いられる高さ(上から下までの部分)のことである。「a」「c」「e」などもエックスハイト内に収まる。
「b」や「d」のような字はエックスハイトよりも上に突き出る部分が生じる。この上に突き出た部分はアセンダと呼ばれる。また、「g」や「j」のように下に伸びる場合、下の部分をディセンダという。
エックスハイト
(X-height から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/28 01:37 UTC 版)

エックスハイト(x-height、別名コーパスサイズ (corpus size))とは、タイポグラフィにおいて書体のベースラインから小文字のミーンラインまでの距離を指す。一般に文字「x」の高さで示され、他にv、w、zが同じ高さを持つ。曲線を持つa、c、e、m、n、o、r、s、uといった文字は、オーバーシュートによってわずかにエックスハイトを超える傾向がある。また、小文字のiはエックスハイトより上に突き出ている。エックスハイトは書体設計における最も重要な寸法の一つであり、アセンダーのない小文字が大文字の高さ(キャップハイト)と比べてどの程度の高さを持つかを決定する。


看板やポスターなど大きなサイズで用いることを前提としたディスプレイ書体では、エックスハイトの大きさは一定しない。多くの書体は遠距離での判読性を高めるためエックスハイトを高めているが、CochinやKoch-Antiquaのように、エレガントで繊細な外観を与える目的でエックスハイトを低く設計したものもある。これは20世紀初頭に広く見られたスタイルである[2][3]。HelveticaやImpactなど、ディスプレイ用に設計された多くのサンセリフ体は、エックスハイトを高くとっている。

書体デザインにおける特徴
本文用の書体では、中程度のエックスハイトが一般的である。これにより大文字と小文字のバランスが整い、紙面が明るく見えるとされる。小さなサイズで印刷されるキャプション用書体など、光学サイズに応じて設計されたフォントでは、文字が潰れないようエックスハイトを大きくとる傾向がある[4][5]。

1960年代から1970年代にかけては、エックスハイトを高めたディスプレイ書体が特に一般的となった。この時代、インターナショナル・タイプフェース・コーポレーション (ITC) は、既存デザインを基にエックスハイトを拡大したバリエーションを多数発表した。代表例としてAvant Garde GothicやITC Garamondがある[6][7]。1990年代以降は、エレガントな印象を重視し、Mrs Eaves、Neutraface、Brandon Grotesqueなど、意図的に低いエックスハイトを採用した書体も登場している。コンピュータの普及によって任意のサイズで印字可能となったが、アドビなどのフォントメーカーは依然として光学サイズを考慮した書体を提供している[8]。例えばMrs Eavesには、オリジナルのデザインに加えて、本文用に調整された「XL」バージョンが存在する[9]。
研究によれば、高いエックスハイトは小さな文字の可読性を高める一方、過度に高い場合は逆効果となる可能性があると指摘されている。これは文字の高さが均一に近くなると、単語の形状を識別しにくくなるためと推測される。同様の理由から、一部の標識作成マニュアルでは全文大文字表記を避けるよう勧告している[10][11][12]。
ウェブデザインでの使用
コンピューティングにおいてエックスハイトは、ウェブページでの測定単位としても利用される。CSSやLaTeXでは、エックスハイトを基準とする単位「ex」が存在する。ただし、exの扱いはブラウザによって異なるため、オブジェクトの寸法指定としてはemに比べ安定性に欠ける。Internet Explorerはexをemのちょうど半分とみなし、Mozilla Firefoxはフォントの実際のエックスハイトに近い値として現在のフォントのピクセルハイトを基準に丸めて寸法を決める。そのため、算出値がピクセル単位で丸め処理される際、exとemの正確な比率はブラウザ内でフォントサイズによって変化する可能性がある。例えば高さ10ピクセルのフォントでエックスハイトが45%と計算される場合、exの値は4ピクセルか5ピクセルに丸められるか、または4.5ピクセルのままで解釈されることがある。
関連する寸法
エックスハイトを超える小文字には、y、g、q、pのようにベースラインより下に伸びるディセンダーを持つものと、l、k、b、dのようにエックスハイトより上に伸びるアセンダーを持つものがある。ボディハイトに対するエックスハイトの比率は、書体の印象を大きく左右する重要な要素である。大文字の高さはキャップハイトと呼ばれる。エックスハイトは、セリフ体やサンセリフ体など標準的な書体設計において特に重要であるが、手書き風やカリグラフィーを模したスクリプト体では、すべての文字が一定のエックスハイトを持つとは限らない。
関連項目
出典
- ^ Vervliet 2008, p. 220; Type Specimen Facsimiles, p. 3
- ^ “Chaparral® Pro release notes”. Adobe. 2014年11月5日閲覧。
- ^ Tracy, Walter (1986). “Proportion”. Letters of Credit. pp. 48–55
- ^ “Optical Size”. Adobe. 2014年11月7日閲覧。
- ^ Frere-Jones, Tobias. “MicroPlus”. Frere-Jones Type. 2015年12月1日閲覧。
- ^ Simonson, Mark. “Indiana Jones and the Fonts on the Maps”. 2014年11月6日閲覧。
- ^ Bierut, Michael. “I Hate ITC Garamond”. Design Observer. 2024年4月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年11月6日閲覧。
- ^ Slimbach & Brady. “Adobe Garamond”. Adobe. 2015年2月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年11月6日閲覧。
- ^ “Introducing Mrs Eaves XL”. Emigre. 2014年11月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年11月6日閲覧。
- ^ Bertucci, Andrew. “Sign Legibility Rules of Thumb”. United States Sign Council. 2021年11月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年6月22日閲覧。
- ^ Herrmann, Ralf (2012年4月9日). “Does a large x-height make fonts more legible?”. 2015年6月22日閲覧。
- ^ Herrmann, Ralf (2009年9月). “Designing the ultimate wayfinding typeface”. 2015年6月22日閲覧。
注釈
- ^ 出典にある「Petit Canon de Garamond」という表記は誤りで、実際にはロベール・グランジョンによるものである[1]。
外部リンク
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