USADAによる告発
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「ランス・アームストロングのドーピング問題」の記事における「USADAによる告発」の解説
2012年(以下、年が記されていないものについては2012年のことを指す)6月12日、全米アンチドーピング機関(USADA)はアームストロングに対し正式にドーピング違反であるとの判定を下した。ウォールストリートジャーナルはこれについて、「ツール・ド・フランスでの通算7回の総合優勝記録を一部ないしすべてはく奪される可能性がある」と報じた。USADAは、12日にアームストロング宛に15ページに亘る告発状を送付。またワシントン・ポストにも同様の書面が送付され、14日、同紙が内容の概要を公開。USADAによると、アームストロングにはエリスロポエチン(EPO)、輸血(時ドーピング)、テストステロン、コルチコステロイド及びそのマスキング剤の使用疑惑があり、さらにそれらを他の選手に横流ししていた可能性があるとしている。またUSADAは、当時アームストロングのチーム・マネジャーであったヨハン・ブリュイネールが深く関与している点も告発している。さらに上記に関連して、かつてUCIのバイオロジカルパスポートのパネラーだったマイケル・アシェンデン博士は、UCIがアームストロングのドーピング違反隠蔽に関与していた可能性に含みを持たせる発言を行った。これに対し、1999年から2004年までUSポスタル、2009年及び2010年までアスタナのチームドクターを務めたガルシア・デル・モラルは、USADAのアームストロングに対する告発状を全否定した。 イタリアのガゼッタ・デロ・スポルトによると、イタリアの捜査官が、2006年にアームストロングが、ミケーレ・フェッラーリ(英語版)博士に46万5000ドルを支払っていたことをつきとめた。フェッラーリはこれまで、フロイド・ランディスなど、ドーピング違反となった選手の指南役として活動していた経験がある。6月19日、アームストロングのドーピング疑惑に関連して、イタリアオリンピック委員会(CONI)は、フィリッポ・ポッツァートがミケーレ・フェッラーリに4万~5万ユーロを支払っていたという、同月16日付のラ・レプッブリカの報道を受け、当日、ポッツァートに聴聞した。6月29日、合衆国アンチ・ドーピング機関(USADA)の独立機関、アンチ・ドーピング審査会(ADRB)が、満場一致でアームストロングに対するドーピング告発例を支持することを表明した。 7月5日、オランダの日刊紙、デ・テレフラーフ(en:De Telegraaf)は、ジョージ・ヒンカピー、リーヴァイ・ライプハイマー、クリスティアン・ヴァンデヴェルデ、デヴィッド・ザブリスキーの4選手が、合衆国アンチドーピング機関(USADA)において、自らのドーピングを認め、アームストロングについての証言を行った後に、6か月間の出場停止処分を受け入れる考えがあることを報道。しかし、ライプハイマーはそのようなことは何も知らないと述べた。加えて、USADAのチーフ、トラヴィス・タイガートは、「メディアの憶測は、不正確な情報につながる」として、証人を保護する立場であることを踏まえ、特に4人を名指しで報じたことに不快の念を示した。 7月10日、アメリカ合衆国連邦裁判所のテキサス州オースティン地方裁判所は、USADAの規則が公正な裁判を受けるアスリートの基本的権利を侵害すると主張して上訴していたアームストロングの訴えを却下した。同日、USADAは、自転車チームのコンサルタント医師を務めたミケーレ・フェッラーリ、アスタナのチームドクターだったガルシア・デル・モラル、USポスタルサービスやディスカバリーチャンネルでトレーナーを務めたペペ・マルティーの3名に対し、永久追放勧告を行った。 7月11日、USADAはアームストロングに対し、2012年6月13日に告発したドーピング違反に対する制裁措置について、受け入れるか、はたまた不服申し立てを行うかについての決断期間を、当年7月14日から起算して、30日間延長することを了承した。 7月13日、ニューヨーク・デイリーニューズは、USADAが2008年から2012年までの間、アームストロングから採取した血液サンプルのうち、38体が異常の兆候が現れていると報じた。例えば、2009年5月31日に採取されたサンプルのヘマトクリット値は38.2%だったにもかかわらず、同年6月16日に採取されたものは45.7パーセントにもなっていた、としている。また、『渦中の人物』となっているミケーレ・フェッラーリ博士は、USADAが調査中の一連のドーピング疑惑について、全く身に覚えがないとする表明を、メディアを通じて行った。さらに、ジョン・マケイン・アメリカ合衆国上院議員は、USADAが調査中のアームストロングのドーピング疑惑解明に全面的に協力する旨を公表。 8月4日、USADAが、アームストロングに関する一連のドーピング疑惑についての管轄権を移管するようUCIから求められたが、それを拒否していたことが明らかになった。8月9日、USADAは、USポスタルサービスやディスカバリーチャンネルでトレーナーを務めたペペ・マルティーを、選手にドーピングを誘導し続けたとして「永久追放処分」とすることを決した。8月17日、USADAが、アームストロング問題についての、大詰めの論議に入った。 国際オリンピック委員会(IOC)は8月9日、2004年のアテネオリンピックの個人タイムトライアルにおけるタイラー・ハミルトンの優勝記録を取り消すことを決し、これに伴い、ヴィアチェスラフ・エキモフ(ロシア)を金、ボビー・ジュリック(アメリカ)を銀、マイケル・ロジャース(オーストラリア)を銅の各メダル獲得認定者とする見通しとしていたが、同月10日、ハミルトンの金メダルはく奪を決定した。なお、ハミルトンは上記の通り、自身のドーピング違反例を認め、かつアームストロングのドーピング違反例を告発した人物である。 8月20日、アメリカ合衆国連邦裁判所のテキサス州地方裁判所は、USADAのアームストロングに対する告発例は正当なものであるとして、過日、アームストロングが人権侵害等であるとしてUSADAを相手取って上訴した事例を却下した。 8月23日、アームストロングと弁護士団は、USADAから提示されていた制裁措置についての今後の取り扱いについて、「これは魔女狩りである。」として、制裁を受け入れるつもりもなければ、USADAに不服申し立てを行うつもりもないことを明らかにした。またサイクリングニュース(cyclingnews.com)によると、USADAのアームストロング対するドーピング告発事例は1998年からにまでにさかのぼり、違反事例は、エリスロポエチン(EPO)、コルチコステロイド、ヒト成長ホルモン、輸血時ドーピング及びそのマスキングにまで及ぶとしている。
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