2021年3月のブリンケン国務長官との会談
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「楊潔篪」の記事における「2021年3月のブリンケン国務長官との会談」の解説
2021年3月18日にアメリカ合衆国のアラスカ州アンカレッジで開催されたハイレベル戦略対話に王毅国務委員兼外交部長と共に出席した。アントニー・ブリンケン国務長官、ジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官とジョー・バイデン政権発足後初の対話を行った。ブリンケンは日韓を訪問して中国に立ち寄らず、米国に帰国する途中でアラスカに立ち寄ったところだった。昨年6月に楊と当時のポンペオ国務長官がハワイで米中外交トップ会談を行っており、外交上の相互主義の原則に従うなら、今回は中国で会談を行う必要があったが、そうはならなかった。 会談は冒頭から激しい非難の応酬になるという異例のものとなり、米中新冷戦が始まったことを象徴する会談となった。ブリンケンが冒頭から「新疆ウイグルや香港、台湾、アメリカへのサイバー攻撃や同盟国への経済的搾取について深い懸念を議論する。これらの行動はルールに基づく秩序を脅かしている」と述べると、楊は怒りに満ちた表情になり、冒頭発言は2分ずつという双方の合意を無視して20分近い反論を始めた。「新疆ウイグル自治区、チベット自治区、そして台湾は中国の不可分の領土であり、内政に干渉する行為には断固として反対する」「アメリカにはアメリカの民主主義があり、中国には中国の民主主義がある。アメリカは自らの民主主義を押し広めるべきではない」「アメリカは軍事力と金融覇権を用いて他国に圧力をかけ、国家安全保障という概念を乱用し、正常な貿易を妨害し、一部の国を煽って中国を攻撃している」「アメリカの人権問題は根深く、この4年間に浮上したものではなく、黒人への殺戮は昔からある。他国に矛先を向けるべきではなく、アメリカこそ人権でより良い対応を取るよう希望する」とアメリカを非難した。 これに対してブリンケンは「国務長官として世界の100近い国と話し、最初の外国訪問として日本と韓国も訪れたが、私が聞いている話は貴方の主張と大きく異なる。私が聞いているのはアメリカの復活と同盟国や友好国への関与に対する深い満足と中国の行為に対する深い懸念である」「私たちが世界に関与する上での指導力は完全に自発的に構築された同盟や友好関係によるものだ」「アメリカは国内ではより完全な団結を目指し、不完全さや過ちを認め、開放的に透明性をもって立ち向かってきた。課題から目を背けたり、存在しないように装ったり、隠したりしない」と述べた。 楊は「アメリカを好意的に見過ぎていた。基本的な外交儀礼を守るべきだ」「貴方たちは強者の立場で我々と話す資格は無い。もし貴方たちが、我々としっかりと付き合いたいのであれば我々は互いに敬意を払って付き合うべきだ」「我々が西洋人から受けた苦しみはまだ足りないというのか。外国から押さえつけられた時間がまだ短いというのか」と述べて過去の歴史を引き合いに西洋を非難した上で「中国の首を絞め、抑圧しようとしても最後に損をするのは自分自身だ」と述べた。 アメリカの報道機関はこの会談を「言葉の戦争」と報じ、中国の国営メディアは「アメリカ側は中国の政策を根拠無く非難した。これは外交儀礼に反しており、中国は厳正に対処した」と報じた。ブリンケンは会談の中で同盟国や友好国の懸念も伝えたと明かしており、尖閣諸島沖への中国公船侵入にも言及したとみられる。一方で、ブリンケンは「イラン・北朝鮮・アフガニスタン・気候変動について、我々の利害は重なっている」と述べており、中国国営新華社通信も米中は気候変動をめぐり共同作業グループを設置したと発表した。 この会談における楊の「台湾は中国の不可分の領土」という主張に対して、台湾の蔡英文総統は「中華民国は主権国家だ。台湾は中華人民共和国に属したことは無く、将来もあり得ない」という談話を出して反論した。
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