電気機関車から暖房用電源の供給を受けるもの
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「電気暖房 (鉄道)」の記事における「電気機関車から暖房用電源の供給を受けるもの」の解説
1959年(昭和34年)の東北本線の電化を皮切りに地方主要幹線の交流電化が進み、東北・上信越・北陸地区の幹線については電気機関車に暖房用電源供給機器を搭載、これに合わせて従来の蒸気暖房装置に加えて電気ヒーター併設改造を実施した客車が運用を始めた。電気機関車の場合は架線電源が利用可能であり取り扱いが容易であること、機器の小型化や軽量化などによって保守の効率も大きいことから機関車へ電気暖房供給用交流電源装置を搭載する方式が主流になった。 改造工事は1958年度、東北本線用の客車125両から始まり、以降毎年約200 - 400両のペースで1962年度までに2,272両について行われた。その後、交流電化区間の延伸にあわせて断続的に施工された。非電化区間や直流電化区間へも運用されることと、さらには電気暖房を導入しなかった九州など西日本地区への転属も考慮して、既存の蒸気暖房装置はそのまま残された。識別のため車両番号は元番号に2000を加えていた。 この電気暖房システムは、まず交流専用電気機関車に採用された。交流機関車は主変圧器の3次巻線から簡単に暖房用電源として単相交流1,500Vを取り出すことができるためである。その後、搭載機器が多く重量制限の厳しい交流直流両用電気機関車や直流専用電気機関車にも、電動発電機 (MG) または静止形インバータ (SIV) により直流1,500Vを単相交流1,500Vに変換する電気暖房装置が搭載されるようになった。これらの機関車の電気暖房装置が動作している場合は、客車側から容易に確認できるよう電暖表示灯(EG灯)が装備されている。 機関車から供給される単相交流1,500Vは、電源供給用ジャンパ連結器を介して客車へ送られる。連結作業時に1,500Vもの高圧が通電したままであると非常に危険であるため、ジャンパ連結器のカバーを開けると通電が停止するようになっている。また、機関車においても危険防止のため、通電状態でEG灯を消灯するように設定されている。客車に引き込まれた単相交流1,500Vは、各車両に搭載している変圧器によって200Vまで降圧され、客車内の座席下に設置された電気ヒーターに送られる。 日本国有鉄道(国鉄)時代末期の1985年(昭和60年)、一部の12系客車は東北地区で運用されていた旧型客車使用の普通列車を置き換えるため2000番台に改造された。2000番台は冷暖房用発電機の有無に影響されることなく短編成化を可能とし、既存の普通列車と電源供給の仕様を合わせるため、編成内に冷暖房用発電機を有するシステムから、電気機関車から暖房用電源の供給を受け、オハフ13形に搭載された変圧器により編成の冷暖房用電源を賄うシステムに変更された。ただし冷房装置を含め既存のシステムを流用するため、客車に引き込まれた単相交流1,500Vは、200Vではなく440Vに変換して利用していた。 快速「海峡」用の50系5000番台客車も12系2000番台と同様に、冷房電源を電気機関車からの電気暖房電源にて供給される仕様になっている。 国鉄当時、非電化区間が多かった九州・北海道や全区間非電化であった四国については、12系客車使用の普通列車などを除いて、国鉄分割民営化後から客車列車全廃まで蒸気暖房のままとなっていた。 なお2015年(平成27年)現在、日本国内で電気機関車から暖房用電源の供給を受けて電気暖房を行うことのできる客車は高崎車両センターに配置されている旧型客車6両(32系1両と43系5両)のみである。
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