雇用保険被保険者証
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/25 08:13 UTC 版)
事業主はその雇用する労働者が被保険者(日雇労働被保険者を除く)となったときは、翌月10日までに、所轄公共職業安定所長に雇用保険被保険者資格取得届を提出しなければならない(第7条、施行規則第6条1項)。平成28年1月からは、資格取得届には被保険者の個人番号を記載しなければならない。以下の場合には、資格取得届に労働契約に係る契約書、労働者名簿、賃金台帳その他その事実を証明できる書類を添付しなければならない(施行規則第6条2項)。 その事業主において初めて資格取得届を提出する場合 所定の期限を超えて資格取得届を提出する場合 過去3年間に失業等給付の返還または納付を命ぜられたことその他これに類する事情があったと認められること 資格取得届の記載事項に疑義がある場合その他資格取得届のみでは被保険者となったことの判断ができない場合 その同居の親族その他特に確認を要する者として公共職業安定局長が定める者に係る資格取得届を提出する場合 公共職業安定所長による被保険者資格の確認(確認自体は届出がなくても公共職業安定所長が職権で行うことができる。また被保険者自らが確認の請求をすることもできる)を受けると、雇用保険被保険者証(以下「被保険者証」)及び雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)(以下「取得確認通知書」)が被保険者に交付される(第8条、第9条、施行規則第8条~第12条)。被保険者証・取得確認通知書の交付はその被保険者を雇用する事業主を経由して行うことができ(規則第9条)、実際にはほとんどの場合事業主経由での交付である。事業主は、原則として両方とも被保険者(労働者)に渡す必要があるが、実務上は被保険者証を事業主が保管し、取得確認通知書を被保険者に渡すこととしている場合が多い。被保険者証を事業主が保管している場合でも在籍中のみであり、退職時には被保険者に返却される。被保険者証は、新たに雇用保険適用事業所へ雇用された場合、新事業主へ提示が必要となるので、離職票と共に紛失しないように保管しなければならない(新事業主は被保険者証の提示を受けて資格取得届に被保険者番号を記入すれば足り、資格取得届に被保険者証を添付する必要はない)。被保険者証そのものに有効期限の記載はないが、新たな事業所で資格を取得すると被保険者証も新しく交付され、その時点で古い被保険者証は回収となり効力を失うが、被保険者番号は原則変わらない。変わると被保険者期間の算定等で不利益が発生するから、注意が必要。 実務上は、被保険者番号さえ分かれば手続に問題はないので、古い被保険者証であってもそれが今まで使用していた被保険者番号と同一であれば問題はなく、もし被保険者証そのものがなくても(以前の被保険者証を紛失した場合、あるいは前に勤務していた事業者が被保険者証を加入者本人に渡していなかった場合など)、資格取得届の内容からハローワークが保有する被保険者台帳を照合するので(規則第15条)、今までの被保険者番号で継続して被保険者となることができる。また、被保険者証は健康保険証や社員証と違い身分証明書としては通用せず、悪用されにくいため、回収されない場合も多い。あくまでも、同じ被保険者番号を継続させることが重要である。なお、被保険者証を確認できる書類が一切なく、ハローワークにおいても確認ができない場合は、新規加入となり、新たな被保険者番号と被保険者証が交付される。裏面に「二重に交付を受けることの無いように」の旨、記載があるが、この「二重に」は、「別の被保険者番号で」という意味であるから、同じ被保険者番号で被保険者証が複数ある場合は、最新の被保険者証以外は処分しても良い。被保険者番号が異なる場合は、統合手続が必要となるので、ハローワークに申し出る必要がある(原則、後から発行された番号が生きる番号となる)。 なお、雇用保険に関する手続は、原則在職中は事業所を経由、離職後は本人が直接手続をする(複数の番号がある状態の際に行う統合手続きは、本人がハローワークで手続きを行う必要がある。この場合、基本は後から発行された番号側を、現事業所が使用することになるため、先の番号のデータを後の番号のデータに移す形で統一の手続きを取る。ただし、旧番号での保険給付の権利が消滅している場合は、統一ではなく、旧番号の「抹消」の手続きに移ることとなる)。 被保険者又は被保険者であった者は、いつでもハローワークに被保険者となった・ならなくなったことの確認の請求(雇用保険被保険者資格取得届出確認照会)を無料ですることができ(第8条)、事業主は労働者が当該請求をしたことを理由として解雇その他の不利益な取扱いをしてはならない。これに違反した事業主は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる(第83条)。この請求は口頭ですることができ、また当該請求に時効の定めはない。 なお、被保険者が氏名を変更した場合、従来は速やかに氏名変更届を提出することとされていたが、法改正により平成30年3月30日以降は個人番号を変更した場合あるいは雇用継続給付の支給申請の際等に併せて氏名変更届を提出すればよいこととされた(改正後の規則第14条)。さらに、令和2年1月1日からは規則第14条が削除され、同日(電子申請は同年6月1日)からは氏名変更届単独での提出はできなくなった(氏名変更届は必ず他の届・申請と抱き合わせで提出することとなる)。
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