連帯保証人の兄を「知らんぷり」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 16:00 UTC 版)
「帝京大学医学部裏口入学事件」の記事における「連帯保証人の兄を「知らんぷり」」の解説
このように帝京大学が帝京学園に多額の債務を負わせて行ったという校舎移転事業だが、この移転事業が始まった2001年当時の帝京大学の総資産は3673億2000万円、それに対する帝京学園の総資産はわずか136億3000万円だった。この資産の莫大な格差にもかかわらず、記事によれば、帝京大学は自らの新本部棟、病院棟建設事業のため、中高の校舎等を立ち退き、移転させた帝京学園に補償をせず、代わりに51億円もの債務を負わせたことになる。 2001年の裏口入学の疑惑以前から帝京大学は、帝京大学元総長の実弟が理事長の座にあった帝京学園とは無関係であると主張し、1991年10月28日には「帝京大学と帝京学園は別の学校法人です」という全国広告まで出していた。この背景には1991年、実弟が帝京高校校長室の机の裏に盗聴器を仕掛けたかどで、学園理事長の退任に追い込まれるという事件があった。しかし帝京大学元総長は、「無関係」広告の直後の1992年1月8日、帝京学園の理事会に出席し、理事長を退任した実弟に「帝京学園会長」職を与え、実弟の妻に現状維持の報酬を支給するなどの「約束事項」を定めた。元総長は帝京学園では私立学校法上の理事でさえなかったが、事実上の最高決定権を行使していたことになる。 しかし2001年に帝京大学の裏口入学問題が表面化し、今度は実弟による口利き疑惑が問題化されると、帝京大学の広報課は再び「帝京学園と大学とは別法人であり、弟氏は医学部のある大学とは無関係。裏口入学なんて事実無根」とした。このように帝京大学は、帝京学園を「表と裏とを使い分ける」 仕方で操っていたのだった。 こうして帝京大学が表面上は帝京学園と無関係と装い、実際は帝京学園を実効支配するといういびつなガバナンスの構図の中で、帝京大学は自らの本部棟と病院棟新築工事を行い、その土地確保のための帝京中高の移転事業を帝京学園の出資で行わせ、帝京学園側に巨額債務を作らせたのであった。この時期が、裏口入学によって帝京大学が「合計83億円」の「代償」を生じさせた時期に重なる事実を鑑みると、実質的に帝京大学はこの「代償」の多くを、事件に直接責任のない2001-3年当時の帝京学園にすり替えた構図が浮かび上がる。帝京学園の「引っ越し」によってかかる費用は、本来帝京大学が帝京学園に補償金として支払うべきものだからである。 しかも、帝京大学理事長の代が変わり、この債務が問題として表面化した2019年になっても、帝京大学による実効支配は続いていたことが元総長長男の言葉からうかがえる。 「(2019年時点で)総資産5850億円の帝京大学は、日本大学に次いで私大の総資産ランキング2位。超リッチな帝京大学が総資産100億円程度の帝京学園の経営を逼迫させているにも拘らず、弟夫婦は私の声に一切耳を傾けないのです」。 帝京大学は莫大な資産を持っているにもかかわらず、はるかに資産の少ない帝京学園に対する債務の責任をいまだに果たしていないという主張である。 これにもとづけば、帝京大学は裏口入学の道義的な責任を亡くなった事務局長に負わせ、さらに事件から生じた経済的責任である「83億円」の「代償」の多くを「債務」として帝京学園に負わせたことになる。 あまつさえ、帝京学園として被った債務だけが問題ではないようだった。帝京学園は私学事業団からも14億円の債務を負い、その連帯保証人を個人が請け負わなくてはならない模様であった。元総長長男はこう続けたという。 「私は私学事業団から借金の連帯保証人になるように求められていますが、佳史は知らんぷり。結局、権力を握る弟夫婦による苛めの構造があるのです。」 ここからは現在の帝京大学が帝京学園の債務の責任、そして裏口入学事件の責任を認めす、それどころかトカゲの尻尾切りに逢った実兄とその学園に事件の「代償」を転嫁し、しかも債務への連帯保証人まで、その責任のない実兄個人に負わせて「知らんぷり」という構図が浮かび上がる。 ここには現在まで引き続く帝京大学のワンマン体制があると、記事は唱えている。 「帝京学園をはじめとする各学校法人の理事らは佳史氏のイエスマンばかりで、独裁体制に異議を唱える者は皆無だという。」 つまり帝京大学だけでなく、その他の法人や帝京学園まで、帝京大学理事長のイエスマンばかりで固められているから、このように極めて理不尽な出来事がグループ内の法人に押しつけられても誰も異論を唱えないのだという。裏口入学事件発覚後約20年が経過した時点でも、帝京大学グループ内のワンマン体制は、元総長から代は変われど事件当時と変わっていないことになる。帝京大学現総長の実兄である、帝京学園理事長は語る。 「佳史は、傘下の学校法人でも理事や評議員、或いは資産管理者等に就き、権限を行使しています。しかしその結果、生じたトラブルの責任は各学校法人の理事に押し付ける。帝京グループのガバナンスにおいて、極めて大きな問題です」 証言に則れば、裏口入学事件の実行責任や、事件から生じた経済的「代償」を、そこに直接の責任のない者たちが請け負わされたようなかつての帝京大学グループ一族支配体制の構造にも、いまだ本質的に変化がないことになる。
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