連帯債務及び保証
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/06 21:43 UTC 版)
連帯債務者の一人による相殺(439条、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で旧436条から繰り下げ)相殺には絶対的効力があり、連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する(1項)。 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる(2項)。2017年の改正前の旧436条は「連帯債務者の一人が相殺を主張しない間は、他の債務者はその連帯債務者の負担部分について相殺を援用することができる。」と規定していたが、反対債権を持つ連帯債務者が相殺権を行使しない場合に、他の連帯債務者がそれを援用してその債権を処分することまで認めるのは不当であると指摘されていた。2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)では他の連帯債務者は反対債権を有する連帯債務者の相殺権を援用できるのではなく、その負担部分の限度で履行を拒絶することができる(履行拒絶権)と変更された。 例えば、債権者Aに対し債務者B、C、Dが60万円の連帯債務(負担割合は平等)を負っていたとする。また、BはAに対して60万円の貸付債権を有していた。この場合、Bが60万円全額について相殺を主張すれば、連帯債務は消滅しC、DもAに対する支払いを免れる(BからC、Dに対してする求償は別論)。一方Bが相殺を主張しない場合、C、DはBの負担割合である20万円について履行を拒絶できる。 保証の場合保証人は、主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができる(457条2項)。主たる債務者が債権者に対して相殺権を有するときは、相殺権の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において、保証人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる(457条3項)。 2017年の改正前の旧457条2項は「保証人は、主たる債務者の債権による相殺をもって債権者に対抗することができる。」と規定していたが、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で相殺の抗弁に限らず主債務者の有する抗弁事由一般について保証人も主張することができることが明文化された。 また、旧457条2項の「対抗することができる」は、保証人に主債務者の相殺権の行使(主債務者の権利を処分すること)まで認める趣旨の規定ではなく、主債務の相殺によって債務が消滅する限度で保証人も履行を拒絶することができるにとどまると解されていた。そのため2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)では保証人は主たる債務者が相殺等でその債務を免れるべき限度において債権者に対して債務の履行を拒むことができるとする規定が新設された(457条3項)。
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