近年のムエタイ、国際式(ボクシング)との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/13 09:33 UTC 版)
「ムエタイ」の記事における「近年のムエタイ、国際式(ボクシング)との関係」の解説
前述したように、ムエタイは賭けの対象となるので八百長は厳禁である。だが最近では八百長が発覚し選手、プロモーターが追放されるケースがある。もっとも八百長自体は以前からあったとは思われるが、生活費を賭け、目の肥えた観客は「疑わしきは、選手・試合問わず罰せよ」の方針で厳しく追及してくる。裏を返せばムエタイに限らず賭けの対象になる競技で八百長をすると莫大な利益が生まれるという見本でもある。 ボクシング(ムエタイと比較して、国際式と表記される。以降は国際式と表記)王者を大勢輩出しているタイ国だが、国際式の前にムエタイを経験しているケースが以前はほとんどであったが、近年[いつ?]は最初から国際式のみのキャリアの選手も増えている。 ムエタイから国際式への転向で目立つのは、3戦目で世界王者になったセンサク・ムアンスリン、4戦目で世界王者になったウィラポン・ナコンルアンプロモーションを筆頭に、ムエタイの下地の強さを活かして短期間で世界王者になる選手が多いことである。サーマート・パヤクァルンのように、ムエタイと国際式を掛け持ちする選手もいる。また、国際式とムエタイが同じ興行で行われることも多い。 ムエタイから国際式に転向する長所は、国際式国内王者レベルだとムエタイの方がファイトマネーは高いが、世界王者になると国際式の方が格段に稼げる点が大きい。ナックモエの体格、階級から見ると、ラスベガスでの大興行が行われるアメリカに呼ばれるケースは少なく、日本での世界戦が現実的で稼げる場所といえる。シーサケット・ソー・ルンヴィサイは国際式転向後にアメリカで世界戦を複数回経験した希少なケースである。また、体格の点で転向するケースもあり、カオサイ・ギャラクシーはパンチが強く脚が短いので国際式に勧められたと語っている。 一方で、転向が裏目に出るケースもある。首相撲からの膝蹴りでムエタイでは飛び抜けた存在であったディーゼルノイ・チョータナスカンはムエタイでは強すぎて賭けが成立しなくなってしまい、仕方なく国際式に転向したがパンチは不得意で戦歴は芳しくなかった。 タイの田舎の貧困から抜け出すには、男はムエタイ選手、女は娼婦になるしかないというのが昔のタイの姿であった。だが近代化が進み、日本よりも大卒の価値が高いタイでは、特に男子を無理してでも大卒にして高給取りを狙うケースが増えており、ムエタイに良い人材が流れない傾向がある。ただ、ガオラン・カウイチット(K-1MAX準優勝)のようなムエタイで学費を稼ぐケースもないわけではない。一方で女子ムエタイも盛んに行われるようになった。2大聖地では試合はおろか女性がリングに上がることすら許されないが、他の競技会場ではほとんどが女子の試合が可能となっており(中には、リングが穢れないように白いシーツを敷いてからという前近代的な村もある)、中でもランシット・スタジアムでは1990年代より開かれている。中には、アリー選手のように美少女拳士として名を上げ、アイドルになる例もある。 ムエタイ選手は賭けの対象となるため、選手というよりは競走馬のような扱いに近く、憧れや尊敬の対象にはなりづらい。K-1MAX優勝者ブアカーオ・ポー.プラムックが「日本で若い女性に声をかけられて驚いた。タイでは考えられないことだ」と発言していたのも、タイでのムエタイ選手の扱いがどれだけ低いものであるかを裏付けている。 2000年代に入って以降、経済成長が著しいタイでは、もともとは賭けの対象で、貧困層のスポーツとみなされていたムエタイから一般層が離れている傾向がある。そこで、国技であるムエタイの隆盛を目指すため、タイ政府も協力し(大会の記者会見にはタイの副首相も出席した)、より広い層にエンターテインメントとして楽しめる競技を国を挙げて目指してTHAI FIGHTは発足された。大会の様子はタイのテレビ局である3チャンネルで生中継され、トーナメントの優勝者には賞金200万バーツ(約550万円)とスポンサーであるISUZUのピックアップトラック1台が与えられる 。 2011年には日本を含む世界5カ国で大規模な興行を実施する予定である 試合にはタイ人だけでなく、世界中のナックモエが出場している。 通常のムエタイは3分5ラウンド制だが、THAI FIGHTでは3分3ラウンド制を採用。そのため、通常のムエタイよりもパンチの打ち合いなども多く、試合がアグレッシブなものとなっている。THAI FIGHTのプロモーターであるアカポン・アンマニーは、「THAI FIGHTではTHAI FIGHTのスタイルで試合をすべきであり、通常のムエタイスタイルの試合は嫌いだ。そういう試合をする選手は試合後に呼び出して注意する」と言う旨の発言を日本のメディアのインタビューでしている。
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