超伝導電磁石
(超電導電磁石 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/01 21:18 UTC 版)
超伝導電磁石(ちょうでんどうでんじしゃく、superconducting magnet、SC magnet)とは、超伝導体を用いた電磁石のことである。超伝導体は電気抵抗がなく発熱の問題もないので、通常の電磁石よりも強力な磁力を発生させることができる。核磁気共鳴分光法(NMR)、核磁気共鳴画像法 (MRI) ですでに実用化されており、もっとも超伝導現象を一般的に用いているものである。今後は磁気浮上式鉄道での実用が期待されている。超伝導磁石と書かれることもあり、工学分野では超電導電磁石(超電導磁石)とも書かれる。
- ^ 仲村髙志 (2013年8月23日). “超伝導バルクを用いた NMR/MRI 応用”. 第 12 回 高温超電導バルク材 「夏の学校」 in 岩手. SlideShare. 2016年3月2日閲覧。
- ^ “高温超伝導バルク磁石を駆使して世界初のMRI画像を撮影”. 理化学研究所 (2011年5月11日). 2016年7月17日閲覧。
- ^ MgB2
- ^ http://company.jr-central.co.jp/company/technologies/mgb2.html
- ^ JR東海 - プレスリリース2007年4月20日、2007年度春季低温工学・超電導学会
- ^ MRI Technology becomes Helium-free
- ^ 核融合エネルギー入門 ジョゼフ・ヴァイス著 白水社文庫クセジュ ISBN 4-560-05875-X p.93
- ^ 東芝が見せた意地、原子力技術を医療へ
- ^ Next-Gen Wind Turbines Use MRI Tech To Generate More Energy
- 1 超伝導電磁石とは
- 2 超伝導電磁石の概要
- 3 応用
- 4 関連項目
超電導電磁石
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/07 04:59 UTC 版)
車両側に浮上と推進の両用に強力な磁界を安定して得るため超電導電磁石が使用されている。超電導リニアで使用されている超電導電磁石のコイルは、ニオブ・チタン (NbTi) 合金系の極細多芯線を銅母材に埋め込んだものである。超電導とは電気抵抗がゼロになる現象で、この状態で閉ループを構成すれば電圧を加えることなく永久に電流が流れ続ける。これを永久電流と呼ぶが、これにより、外部からの電力供給をすることなく、約1 T(テスラ)の磁界を発生する強力な電磁石を構成することができる。コイル内を流れる電流は700 A程度(実験車両MLX01の場合)である。 ニオブ・チタン系合金で超電導状態を保持できる温度は4K(-269℃)であり、常にこの温度以下に保つ必要がある。超電導リニアでは、液化ヘリウムを用いて超電導電磁石を冷却し、超電導状態を維持する工夫がなされている。具体的には、超電導電磁石は、外部からの熱進入を抑えるため液化ヘリウムの入った内槽容器に入っている。さらに内槽容器は輻射シールド板が設けられ、液化窒素で約77K(-196℃)に冷却される。内槽容器は外槽容器に収めたのちに内部の空気を真空引きして、真空断熱状態としている。仮に温度上昇によって超電導状態が解除されると線材に電気抵抗が発生して大電流が保持できなくなり、急激に磁力が失われる(クエンチ現象)。 宮崎実験線で使用されていたML-500では、浮上用と推進用の超電導電磁石を別々に用意していたが、その後大きな超電導電磁石が製作できるようになり、MLU001からは浮上用・案内用・推進用のすべての超伝導電磁石が兼用となった。さらに、前述のクエンチ現象の回避のためコイル自体の発熱を抑える工夫がなされている。宮崎での様々な工夫・知見は、山梨実験線MLX01の超電導電磁石に結実し、クエンチは皆無となり、即実用可能な状況となって久しい。この状況を踏まえ、新たにリニア用高温超電導電磁石を開発する動きとなり、大いに成果が上がっているが、その裏には、開業運転の重責を担うであろうニオブ・チタン (NbTi) 合金系の超電導電磁石の存在が大きいであろう。 2001年(平成13年)に超電導になることが発見された二ホウ化マグネシウム (MgB2) による新しい超電導電磁石コイルの開発が、JR東海と独立行政法人物質・材料研究機構などの共同で始まった。この新しいコイルは、約20K(-253℃)で超電導状態の維持が可能であり、冷凍機による直接冷却が可能で、液化ヘリウムによる冷却の必要が無い。さらに電流低減が1日あたり約0.5%でロスが少ない。 さらには、酸化物超電導物質による高温超電導の研究が活発に行われている。特に、ビスマス系超電導体やイットリウム系超電導体の線材による超電導電磁石コイルが超電導リニアなどにも使える材料として研究されている。それらも寒剤(液化ヘリウム等)が要らない直接冷却が可能なため、配管や穴あき加工をしたコイル締結金具等が要らないことや、約90K(-183℃)ほどで超電導状態を維持できる可能性があることで、実用化されれば、超電導電磁石にかかるコストを大幅に低減でき、軽量化にもつながる。一方、現状ではニオブ・チタン系合金なみの長尺線が製造しにくいこと、線材の価格が比較的高価であること等が指摘されている。実用化の面で、近年はビスマス系線材による高温超電導電磁石の進展が目覚しく、ビスマス系線材のコイルを液化ヘリウムおよび液化窒素といった寒剤無しで20Kで直接冷却をするタイプの高温超電導電磁石が、山梨実験線のMLX01に搭載され、走行試験で553 km/hが確認された。一方、イットリウム系超電導体は、この高温超電導電磁石では永久電流スイッチ等に使われている。最近になって、ビスマス系線材そのものの強度・性能・長尺化等が、その走行試験当時より飛躍的に向上してきている。
※この「超電導電磁石」の解説は、「超電導リニア」の解説の一部です。
「超電導電磁石」を含む「超電導リニア」の記事については、「超電導リニア」の概要を参照ください。
超電導電磁石
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/07 04:59 UTC 版)
前述のクエンチ現象が発生する恐れがあるため、電磁石はそれぞれ独立した系となっており、仮に1つの電磁石がクエンチ現象により急激に磁力を失っても他のコイルに波及しないようになっている。また磁力を失った場合は、車両側の接地ブレーキで軌道と接地して制動、補助支持車輪を出して車体を保持する。また磁気を失ったコイルと対になるコイルの磁力を消してバランスを取る。 仮にクエンチ現象で発熱が起きると、液化ヘリウム・液化窒素が気化して体積が膨張するが、安全弁により大気中に放出されるため装置が破裂することは無い。またヘリウムは、不活性ガスであり人体への影響はないが、空間に充満すると酸欠の恐れがある。
※この「超電導電磁石」の解説は、「超電導リニア」の解説の一部です。
「超電導電磁石」を含む「超電導リニア」の記事については、「超電導リニア」の概要を参照ください。
- 超電導電磁石のページへのリンク