貧困ビジネス問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/25 16:48 UTC 版)
「ネットカフェ難民」の記事における「貧困ビジネス問題」の解説
「貧困ビジネス#インターネットカフェ」も参照 政府や自治体のみならず、エム・クルーやツカサ都心開発などの民間企業も独自にネットカフェ難民や生活困窮者の支援に乗り出しているが、支援とは名ばかりの違法行為も横行しており、社会的弱者を食い物にする「貧困ビジネス」であると指摘されている。 蕨駅西口や西川口駅西口などに店舗を展開するネットカフェ「CYBER@CAFE(サイバーアットカフェ)」は、2007年に埼玉県蕨市の蕨駅前に1号店を開店した。 蕨市で2008年3月に住民登録を申請した男性の「住所」が、市が受理後に「CYBER@CAFE」の店舗であることが判明した。市は「想定外のことでもあり、当惑と苦渋の決断だった」として、条件つきでの住民登録を認めた。これに対し、総務省自治行政局は「市はぎりぎりの判断だっただろう。通常ではないが、短期賃貸マンションなどの延長線上の行為と考える。安定した居住場所の確保という支援策を前提に考えるべきだ」との見解を述べた。また同店は男性に対し、住民登録の条件として「当面居場所を変えないという意思表示」との名目で、30日分の料金5万7,600円の前払いを求めた。この事例はネットカフェでの住民登録第1号ということで、多くのマスメディアが取材して話題になった。 その後、蕨市が住民登録を認めたことを逆手に取り、同店は「日本で唯一、住民票登録ができるネットカフェ」として宣伝し、同年12月までに店舗を「住所」として10人を蕨市に住民登録させた。同年9月に部屋を増設し、隣接する2つのビルに58室を設置、翌年に10室増やす計画としていた。その後、東京都内にも進出し、歌舞伎町と北千住駅西口にも出店している。また佐藤の出身地である北海道での新規事業も計画し「世界自然遺産に登録された知床が新たな舞台になります」と語った。 「CYBER@CAFE」の部屋は、板で仕切られた1畳半のスペースにパソコンと椅子だけがあり、長期滞在者向けに横になれる「フラットフロアー宿泊個室」もある。鍵はなく部屋を施錠することはできない。 同店を運営する株式会社明幸グループ(1998年3月設立)代表取締役CEOの佐藤明広は、マスメディアの取材に対し「ネットカフェ難民のために何かできないのかな、と」「ネットカフェを漂流の場ではなく、人生の足場に」との思いでこの店をオープンさせたと述べている。しかしこの件を取材した朝日新聞は「貧困ビジネスに直結しかねない」として、藤田孝典の「ネットカフェは暮らす場所ではない。大切なのは生活を安定させる手だてを考えること」というコメントを掲載した。 また、NHK総合の『クローズアップ現代』は2008年11月4日放送分の「援助か搾取か “貧困ビジネス”」で、同店の経営手法には脱法行為が多いと指摘している。同番組内で報道された内容は以下のとおり。 住所不定のため定職に就くのが困難なホームレス状態にある人々を「住民票登録ができる」との謳い文句で誘い集めている。 通常料金は1時間400円だが、長期滞在者には1時間80円にまで割引し、長期滞在の方が「割安」という印象を与えている。 しかし実際は、長期滞在の利用料を負担に感じる者も多い。1か月分の内訳は、滞在費が1,920円×30日=5万7,600円 シャワーが1回あたり300円 洗濯サービスが1回あたり500円 住民票登録、郵便物引き取りサービスが月額3,000円 そのほか飲食代も含めると、月に約7万円を店に支払うことになる。 布団や枕などの寝具は置かず、膝掛けの貸し出しにとどめ、価格も「宿泊料金」とはせず時間単位で表示している。 宿泊施設とみなされると旅館業法が適用され、部屋面積や防災管理などの法的義務が生じるため。 番組内での指摘に対し、同店店長でもある佐藤明広は「(当店は)旅館ではない。基本的にはアパートという考え方」「法律のギリギリのところで、という考え方をされるかもしれないが」などと、脱法行為を否定している。しかし同店に「居住」する男性は、NHKの取材に対し「(ここに)留まるしかない、出たくても出られない」と訴えている。
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