貧困問題による誤解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 17:39 UTC 版)
子ども食堂への出入りが、周囲から貧困家庭との見られかねないという懸念から、本当に貧困状態にある子供はこうした食堂を利用しにくいのではといった意見があり、実際にそうして出入りを敬遠する子供がいたとの報告もある。同様の理由で、特に女子は来店しにくいとの指摘もあり、実際に来客の男女の比率が8対2だったとの報告もある。群馬県太田市の子ども食堂でも、30人から40人の利用者を見込んでいたところが、実際の利用者は10人から20人程度であり、これも貧困世帯が対象とのイメージが広がっていることがその原因と見られている。 マスメディアによって子ども食堂のことが多く報じられたことで、子ども食堂イコール貧困対策というイメージが広がり過ぎ、来店しにくくなっている子供ができたとの指摘や、親が出入りを禁じるなどの状況が生まれていると危惧する声もある。前述の「気まぐれ八百屋だんだん こども食堂」も、マスメディアに取り上げられ始めた当初は、貧困対策としての視点からの報道が多かったという。 子ども食堂の開催希望が、その場所を求めて公民館に申し込んだところ、「困窮者が集まる地域と思われる」「貧困の子供はいない」と難色を示され、どんな子供でも楽しむことのできる場所だと説明を繰り返した末に開催に漕ぎつけたように、貧困対策というイメージから抵抗を持たれるケースもあり、日本各地で模索が続けられている。子ども食堂の存在を知るには情報収集力を要し、足を運ぶには行動力や交通費を捻出する経済力も必要だが、貧困の最中にある人々にはそうした力がないとの指摘もある。児童虐待を受けている子どもが、親が発覚を恐れて行くことを禁じていると危惧する声もある。 「誰でも利用できる場所」としている子ども食堂には、「貧困や孤食など、本当に支援を必要とする子どもにどうすれば来てもらえるか」が共通の問題であり、「冬休み中に毎日開催したが、来てほしい子どもが1回しか来なかった」「地域の幼稚園の子供と保護者が1クラス丸ごと来店し、本当に来てほしかった子どもが来店を遠慮していた」「困っている親子というより、安く健康的な食事ができるから来ている普通の親子が多い」「夕食の手抜きを目的とした母親の来店が増えている」との声もある。 子ども食堂から子どもの貧困、貧困家庭、貧困対策のイメージを遠ざける例としては、店の名前に敢えて「子ども食堂」と名付けず、「子ども」だけを付けたり、「子ども」すら店名に含めないところもある。また、店の名前はもちろん、活動内容自体も「子ども食堂」とは名乗らず、「こどものいばしょ」と謳っている場合もある。また、貧困家庭というレッテルを貼られることのないよう、利用対象を「地域住民全員」に設定している店もある。開設当初から「誰でも来店できる食堂」という概念を重視し、「恵まれない子どもたちのために」といった弱者支援のような態度をとらない店もある。高齢者や障害者にも立ち寄ってもらうため、名称を「地域食堂」にするケースもある。 自ら助けを求めにくい子供たちへの対策の一つとしては、東京都文京区で2017年10月から始められた「こども宅食」が挙げられる。これはLINEで申し込んだ利用者に対し、食材や加工食品などを自宅あてに直接配送するという、全国的に見ても前例のないもので、利用者から好評を博している。
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