豊島事件とは? わかりやすく解説

豊島事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/26 15:29 UTC 版)

豊島事件(としまじけん)とは、朝鮮民主主義人民共和国によるスパイ事件[1][2][3][4]1977年昭和52年)4月6日摘発(検挙[2][3][4]1972年(昭和47年)、京都府下の海岸から不法入国した北朝鮮工作員の申栄萬は在日韓国・朝鮮人を工作員として獲得したうえで、その居宅に住み、他人名義の外国人登録証に自分の写真を貼付して「なりすまし」をし、工作活動に従事していた[3][4]。しかし、大韓民国(韓国)の軍事情報を入手するなどの任務遂行が行きづまって転向し、警視庁に自首した[3][4]

概要

藤森正夫こと申栄萬は、1940年(昭和15年)から1943年(昭和18年)まで日本本土に滞在した経歴を持っており、北朝鮮では朝鮮人民軍中尉政治将校)の肩書をもち、朝鮮労働党対外連絡部に所属していた[1][2][3][4]。申が北朝鮮で高等農業学校の校長職にあった1969年(昭和44年)6月、北朝鮮当局によって召喚され、工作員となることを命じられた[3][4]。工作員として採用された申は2年10カ月にわたって、政治教育、日韓それぞれの国内情勢、暗号通信受信要領、暗号解読要領などのスパイ教育を受けた[1][4]。そして、1972年4月26日、無線機乱数表、暗号表、暗号用薬品、工作資金などを携行し、

という密命を受けて、京都府与謝郡伊根町の海岸から不法に入国した[1][4]

申栄萬は密入国後、北朝鮮からの指示で栃木県在住の在日韓国人を工作員として獲得し、その居宅に住み着いた[3][4]。そして、在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総連)中央本部の幹部を通じて他人名義の外国人登録証明書を不正に入手し、これに自身の写真を貼って偽造し、背乗りによる工作活動を展開した[3][4]。その後、申栄萬は滞留先の在日韓国人の親族、知人にあたる大韓民国国軍海軍)要人を獲得対象として選び、韓国の軍事情報の収集を計画して北朝鮮に報告した[4]。北朝鮮当局はこれに対し、栃木の滞留先の韓国人を北朝鮮に派遣するよう命じ、そのためにまず東ドイツ(ドイツ民主共和国)に同人を渡航させるよう、申に指令した[4]。ところが、滞留先の栃木の韓国人はこれを拒否したため、申の計画は頓挫した[4][注釈 1]

こうした状況下で、申には北朝鮮からの帰還命令が発せられたが、彼は金日成個人崇拝の下で苛酷な窮乏生活を国民に強いる北朝鮮国家への疑問、密航後の日本での自由民主主義の保証された暮らしの尊さへの実感から帰還を思いとどまり、1977年4月6日、警視庁に自首した[3][4]。警視庁は、藤森正夫こと申栄萬(当時52歳)を逮捕し、乱数表、暗号表、無線機など諜報活動を裏づける多数の証拠資料を押収した[1][3][4]。申のスパイ活動を助けた補助工作員5名も逮捕された[1]

1977年12月26日東京高等裁判所は申栄萬に対し、出入国管理令および外国人登録法違反、有印公文書偽造の罪で懲役1年6月、執行猶予3年の判決を下した[3][4]。申は1980年(昭和55年)、韓国に出国した[3]

脚注

注釈

  1. ^ 申栄萬による獲得工作員の養成は、
    1. 日本・韓国を自由に往来できる民団系、
    2. 中立系のコリアンや帰化コリアンの抱き込み、
    3. 獲得した工作員を日本から密出国させ、北朝鮮で工作員教育をほどこす、
    4. 当該人物に適した任務の付与、日本への密入国、
    5. 日本で工作員としての実務教育をほどこす、
    6. 韓国への派遣、韓国でのスパイ組織埋設任務、
    という手順を踏んでいた[1]

出典

参考文献 

関連文献

  • 外事事件研究会『戦後の外事事件―スパイ・拉致・不正輸出』東京法令出版、2007年10月。 ISBN 978-4809011474 

豊島事件(産廃不法投棄)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/21 03:52 UTC 版)

豊島 (香川県)」の記事における「豊島事件(産廃不法投棄)」の解説

豊島総合観光開発豊島開発)が1975年から16年間にわたり、豊島西端海岸近く産業廃棄物大量に不法投棄して問題となった1990年発覚し当時戦後最大級の不法投棄事件と言われた。これを受け、翌1991年には廃棄物処理施設設置届出制から許可制となるなど規制強化されたが、1999年発覚し国内最大規模と言われ青森県岩手県境の不法投棄事件を防ぐことができなかった。

※この「豊島事件(産廃不法投棄)」の解説は、「豊島 (香川県)」の解説の一部です。
「豊島事件(産廃不法投棄)」を含む「豊島 (香川県)」の記事については、「豊島 (香川県)」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「豊島事件」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「豊島事件」の関連用語

豊島事件のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



豊島事件のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの豊島事件 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの豊島 (香川県) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS