議会公聴会
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この「提督たちの反乱」をめぐる一連の騒動については、海軍力の増強に尽力したことでも知られるカール・ヴィンソン下院議員が委員長を務める下院軍事委員会(HASC)が調査に乗り出し、公聴会を開いたうえでジョンソンをはじめ多くの当事者から意見・証言の聴取を行った。 下院軍事委員会が出した調査の最終報告書によれば、一部で疑われたジョンソン国防長官やスチュアート・サイミントン空軍長官(サイミントンもジョンソンと同様航空機業界の経営者出身だった)が航空機の調達に関連して不正を行ったり、賄賂等による蓄財を行った形跡は認められなかったと結論された。 B-36の性能をめぐっては、兵器システム評価グループ(Weapons Systems Evaluation Group、WSEG)を新設して評価を行うこととされた。WSEGの新設により、以後新規の兵器・装備を開発・調達する際には、1つの軍種が単独で提案した兵器・装備であっても、必ず国防総省や統合参謀本部の主導の下、四軍の間で統合的に評価を行うこととされた。 また、ユナイテッド・ステーツ級の建造計画中止をめぐっては、「大型空母は海軍の活動に必要な艦船である」と結論付けられ、海軍の悲願だった大型空母(スーパー・キャリア)の建造は議会の「お墨付き」を得た格好となった。さらにこの過程で、下院軍事委員会は、ジョンソンが行ったユナイテッド・ステーツの建造中止決定を支持する旨の証言を行った陸軍参謀総長・空軍参謀総長の2人について、その見識・資質に強い疑問符を投げかけるという極めて厳しい態度を示した。また同時に、ジョンソンの委員会や議会に事前に諮ることなく独断で建造中止を決定した行為に対して、「国防(総省)に限らず、各省庁の高官は、議会(の面々)のみならず自らの代表者である議員を通じて意思を表明する全てのアメリカ国民に対しても、義務と責任を負っている。当委員会は、公の問題についての意思決定が今回のように行われることは断じて容認できない。」と述べ、強い非難の意を表した。このようにジョンソンらユナイテッド・ステーツを建造中止に追い込んだ側に厳しい意見が突きつけられた一方で、海軍側でも“Op-23”の研究・調査開始から間もなくして出回った「匿名の怪文書」について、処分が下された。この怪文書は、海軍次官付の文民補佐官の1人だったセドリック・ワース(Cedric R. Worth)が作成・流布させたものであることが明らかになり、調査委員会は、この行為を理由にワースを解雇すべきであると勧告した。これを受けて、ワースは海軍部内における査問会議を経たうえで解雇された。 過去の騒動に判断・処分をつける一方で、下院軍事委員会は今回の騒動をめぐって浮き彫りになった「軍の統合的・一体的な管理運用」についても、一定の勧告・提言を行っている。委員会は、より効果的な四軍の統合を目指す動きを強く支持すると表明しながらも、同時に「統合を目指す動きがより大規模かつ拙速になり過ぎることがある」とも述べている。このことは、特に統合に積極的な陸軍・空軍側の動きに対して、ユナイテッド・ステーツ建造計画をめぐり対立した海軍側の抵抗を挙げ、「(妥協の余地の無いほど)厳格かつ強力な統合論者など国防総省内部には居ないだろう」という趣旨のことを述べているものと考えられている。 最終的に、下院軍事委員会はデンフェルド大将を海軍作戦部長から解任した判断は誤りだったと結論付けた。マシューズ海軍長官は「戦略方針や軍の統合に関する広範な見解の不一致」を理由に1949年10月27日付でデンフェルド大将を解任しているが、本当は同大将が議会で行った証言の内容を受けての「報復人事」だったとし、「正統な議会制民主政治に対する挑戦」だとマシューズの行為を不当なものだったと断じた。
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