西洋における恋愛
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 07:47 UTC 版)
ヨーロッパとアメリカでは状況が異なるので分けて説明する。 ヨーロッパ 上の節で説明したように、キリスト教では恋愛については厳しい態度をとる考え方を教えており、素直な信徒はその教えを自分のうちに取り込み自分自身の考え方ともするものなので、ヨーロッパ人の恋愛についての見解は、クリスチャンかそうでないか、またクリスチャンだとしても、まじめなクリスチャンか形ばかりのクリスチャンかで、見解は分かれる傾向がある。また恋愛についての教えはカトリックとプロテスタントでも傾向が異なり、プロテスタントのひとつひとつの教派ごとに態度がかなり異なる。 19世紀や20世紀初頭までは西ヨーロッパ諸国ではカトリックの信徒の割合がおおむね9割ほどと、とても高かった。それが20世紀の間に右肩下がりに減り、その結果、恋愛についてカトリックの教えを意識しない人々が増えてきた。たとえばフランスでは1960年では86.6%がカトリックだったが、2013年時点では75.3%にまで低下している。しかも幼児洗礼などを受けて一応カトリックに分類されるが、実際には教会にはほぼ全く行かず神父の説教も聞かず聖書も読まず、カトリックの考え方をほぼ知らず、それから離れた生き方をしている人の割合も増えてきている。そうした人々はカトリックの教えに縛られないで恋愛について比較的自由に考えるようになっている。フランス人は基本的には各人の選択を重んじるので、カトリックから離れた場合は、たとえば、恋愛に興味がある人は恋愛すればよいし興味が無い人はしなければよい、などと考えるわけである。 恋愛と一緒に暮らすこと(同棲)は別のこと、と考えるか、それらを結びつけて考えるかは、ヨーロッパでも国ごとにかなり異なる。スペインでは20歳以上で結婚していない人が同棲している割合は8.8 %である。それに対して、ポーランドやギリシャでは、同じタイプの人々で同棲している人の割合は、スペインの1/4しかいない。一方(性的におおらかなことで有名な)スウェーデンでは結婚したカップルの99%がその前に同棲を経験している、という。このようにヨーロッパ内でも国ごとにずいぶんと異なっている。 なおフランスでは恋愛して同棲するとしても、同棲と結婚は切り離して考える人々が増えてきている。フランスでは、そもそも古くからある「結婚」という制度は、男女の間でのお金や財産の移動に関する規定をともなう(女が男の収入をあてにして寄生するような)制度だと、その本質を見抜き、それを嫌う人々の割合が増えてきており、男女が本当に純粋に愛し合うならそんな制度の枠内に入るべきではない、と考え、男女が長年一緒に暮らす場合でも PACSという枠組みを選び、お金はそれぞれ別という方式を積極的に選び、「結婚」という形は断固としてとらない、という人々の割合がすでに5割を超えた。ここ数十年のフランス人は、そういう「金目当て」のような不純なことが相当に嫌いであり、そういうものは抜きでいたい、と男性も女性も望んでいる。特筆すべきことは、金目当ての動機が織り込まれた不純な「結婚」という制度を、女性の側から積極的に断固拒否している、ということである。フランスはジャンヌダルクの国であり、フランス女性は幼いころから物語の本でも歴史の教科書でもじっくりジャンヌダルクの生きざまを読んで育つわけなので、フランス女性の精神のDNAには自立精神、男性に依存したりせずむしろ男性を先導して引っ張ってゆく気骨などが根付いている[要出典]。 異性愛と同性愛 なお、ヨーロッパでも同性愛やポリアモリーなどの恋愛をする人々もいる。 西洋の文学では、男性が男性に恋する気持ち(男性の同性愛の気持ち)も表現されてきた歴史がある。シェイクスピアは『ソネット詩集』で、オスカー・ワイルドは『ドリアン・グレイの肖像』で、トーマス・マンは『ベニスに死す』で、男性が男性に恋する気持ちを表現した。フランスのジャン・ジュネは『泥棒日記』『薔薇の奇跡』などでそうした気持ちを描写した。 現代歌謡曲でもそうした同性への恋愛感情が表現されているものが多数ある。男性への恋愛感情を打ち明けられない辛さ・悲しさを正面から歌った作品もある。反対に喜ばしくそうした恋愛感情を表現している歌もある。また、(誰にでもあからさまに同性愛と分かってしまわないような婉曲的な表現方法で、あるいはゲイの人や察しの良い聴き手に限って分かるように)さりげなく表現されているものも多い。たとえばエルトン・ジョンの'Your song'『僕の歌は君の歌』、Whamワム(ジョージ・マイケル) 'Wake Me Up Before You Go-Go'「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ」等々等々である。
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