芸術的大練習曲集とは? わかりやすく解説

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ベルティーニ:芸術的大練習曲集

英語表記/番号出版情報
ベルティーニ:芸術的大練習曲集Grandes études artistiques Op.122出版年1838年 

作品解説

2011年5月 執筆者: 上田 泰史 

 練習曲タイトルに「芸術的」という形容詞用いたのはおそらく彼が最初である。当時練習曲集は「性格的」、「旋律的」、「演奏会用」、「サロン用」など、その作品性質用途を示す言葉と共に出版されることが多かった。これらの言葉購買者に自作品の実用的な特性伝えたり、作曲者どのような観点からエチュードというジャンルアプローチしたのかを示す重要なメッセージでもある。「芸術的」という言葉は、「エチュード」という言葉のもつ「機械的な指の訓練」というネガティヴニュアンスと鋭いコントラストをなしている。この曲集で、ベルティーニ各曲トリル連打など個別練習音型を、熟練作曲手腕豊かな着想調和させている。「芸術的練習曲」とは、つまり実用性という範疇越えて楽曲の構成着想の展開において価値があるような練習曲、という意味と解することができるだろう。

 25からなるこの練習曲集各曲が6頁前後で、長い曲では10頁に及び、しかもテンポ比較的ゆったりとしているため、通演のためには優に演奏会一回分の時間要する。この規模ゆえか、彼の練習曲最大労作が最もマイナーなもののひとつに数えられるのは皮肉である。それぞれの曲は明確なテクニック上の目的持ち中には容易ならざる跳躍を含むものがあるが、基本的に音の層は薄く今後エチュード大観」に登場するアルカンやラヴィーナ、リスト見せるような過激さは見られないその代り練習テーマとなる一つないし複数決まった音型を用いながら着想はゆったりと展開される主要な音型は展開のなかで、入念な配慮のもと多様な仕方両手配され巧み転調によって豊かな変化もたらされる

 ベルティーニ静かに曲を始めることを好んだ。ほぼ全ての曲はpで開始されffで始まるのは第4、1217番の3曲のみである。喧騒を嫌う彼の特性からだろうかいずれの曲もどこかひと気のなさを感じさせる楽譜mp, mfといった中庸強弱記号ごく稀にしか用いないのは19世紀作曲家としては珍しい。


No. 1 Lento 変ホ長調
左手アルペッジョ練習曲右手息の長い旋律静かに歌う。

No. 2 Allegro moderato  ヘ長調
アルペッジョ左手伴奏跳躍主な技術上の目標とする。中間部アルペッジョ左手移行し劇的なエピソード形作る

No. 3 Moderato 変ホ長調
片手分散和音旋律同時に奏でる多声的パッセージと、手の交差練習曲一貫した伴奏音型は波打つ水面思わせる

No. 4 Allegro moderato ホ短調
半音階連打練習曲。この曲集では例外的に情熱的な推進力を持つ一曲

No. 5 Allegro ハ短調
伴奏左右の手交互に演奏する練習曲中間部ではより遠い調性への逸脱繰り返される再現部では旋律装飾加えられる

No. 6 Presto 変イ長調
和音連打オクターヴ練習曲中間部ではオクターヴの音型が左右の手対話的に扱われ一時的に遠隔調ホ長調移行する

No. 7 Moderato ヘ長調
オクターヴ音程にまたがる大きなアルペッジョ練習曲右手第1番同様、無言歌風のゆったりとした旋律奏でる

No. 8 Presto 変ホ長調
オクターヴ左手跳躍練習曲勇壮な舞曲

No. 9 Moderato scherzando ロ短調
オクターヴ跳躍練習曲手のひらを返すようにして跳躍し中声部の旋律奏でられる。

No. 10 Allegro moderato 変ホ短調
左右の手交互に連打の音型を奏する練習曲ロ長調中間部雰囲気一変させトリルをともなうリズミックパッセージ置かれる

No. 11 Allegro moderato 嬰ハ長調
オクターヴ亘る広い音域分散和音練習曲中間部では分散和音左手移行し右手明確な旋律奏でる

No. 12 Allegro con brio ハ長調
連続する六度五度四度等の練習曲。これらの音程はほぼ一貫して右手が担う。

No. 13 Allegro moderato ホ長調
手の交差練習曲右手と左手急速に交代しながら交互に旋律の音を取り合う

No. 14 Allegretto 嬰ハ短調嬰ハ長調
急速なオクターヴ連打練習曲軽やかな右手オクターヴ音型は中間部左手に移る。

No. 15 Lento religioso 変イ短調
トレモロ練習曲トレモロ生み出す神秘的な中にオクターヴ旋律浮かび上がる中間部では音の層がさらに厚くなり再現部直前劇的なクライマックス迎える。

No. 16 Andante イ長調
トリル練習曲左右の手に、二拍おきにトリル配置され一貫した音型の中で楽想巧みに展開される

No. 17 Allegro vivace spiritoso 変イ長調
手の跳躍和音練習曲中間部オクターヴ付点リズム両手交互に現れる

No. 18 Allegro moderato 変ロ短調
分散和音中に縫いこまれた旋律線を際立たせるアクセント練習曲

No. 19 Andante 変ニ長調
大きく手を開いて3オクターヴにまたがる分散和音演奏し旋律伴奏する練習曲中間部では半音階モチーフ現れる再現部伴奏型が変化し旋律には装飾施される

No. 20 Allegretto ロ短調
ジグザグ型の分散和音歌唱的な旋律練習曲分散和音の音型は順次左手右手双方適用され最後に両手でこれを演奏する

No. 21 Lento-Allegretto poco andante ホ長調
伴奏パート右手と左手交互に取り合う練習曲高音域の旋律パート中声部の伴奏和音パート低音域のバス・パート三層が、2手で巧みに弾き分けられる再現部伴奏パートでは同時に打鍵される冒頭和音アルペッジョ変る

No. 22 Allegro moderato 変ロ長調
連続的にポジション変更するアルペッジョ練習曲

No. 23 Allegretto agitato 嬰ハ短調
右手歌唱的な旋律左手オクターヴ連打跳躍練習曲中間部コーダ嬰ハ長調転調する

No. 24 Allegro moderato 嬰ヘ短調
同じポジション急速に反復されるアルペッジョ伴奏歌唱的な旋律練習曲一貫して同じフィギュレーションによるが、自在な転調によって多彩な変化与えられる

No. 25 Allegretto quasi andante ハ長調
オクターヴ連打練習曲楽譜3段ないし4段分かれており、「譜読み」の練習曲をも兼ねる。




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