花被による花のタイプ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/01 14:34 UTC 版)
花は、花被の有無や分化に基づいて、以下のように類別される。 2a. ミドリハコベ (ナデシコ科) の異花被花. 5枚の萼片と5枚の花弁 (深く切れ込んで10枚に見える) がある. 2b. チューリップ属 (ユリ科) の同花被花. よく似た外花被片と内花被片が3枚ずつある (花蓋片) . 2c. ミチヤナギ属 (タデ科) の単花被花. 花被 (萼とよばれることが多い) は5裂する. 2d. ヒトリシズカ (センリョウ科) の無花被花. 1個の花は1個の雌しべと3個の雄しべからなり、花被を欠く. 有花被花 (chlamydeous flower): 花被をもつ花。両花被花 (dichlamydeous flower): 複数輪の花被をもつ花。異花被花 (heterochlamydeous flower) (上図2a, 下図3): 花被が、外側の萼と内側の花冠に分化している花。最もふつうに見られる花であり、オモダカ (オモダカ科)、ツユクサ (ツユクサ科)、ヒナゲシ (ケシ科)、スミレ (スミレ科)、カタバミ (カタバミ科)、エンドウ (マメ科)、サクラ (バラ科)、キュウリ (ウリ科)、マツヨイグサ (アカバナ科)、アブラナ (アブラナ科)、ハイビスカス (アオイ科)、ハコベ (ナデシコ科)、アジサイ (アジサイ科)、ツツジ (ツツジ科)、サクラソウ (サクラソウ科)、クチナシ (アカネ科)、オオバコ (オオバコ科)、ミント (シソ科)、トマト (ナス科)、アサガオ (ヒルガオ科)、スイカズラ (スイカズラ科)、タンポポ (キク科) などに見られる。 同花被花 (等花被花) (homochlamydeous flower) (上図2b, 下図4): 萼と花冠の分化が不明瞭である花。ふつう花被片は2輪に配置されており、上記のようにふつう外花被片と内花被片とよばれる。ハゴロモモ (ハゴロモモ科) やクスノキ (クスノキ科)、ユリ、チューリップ (ユリ科)、ヒガンバナ、スイセン (ヒガンバナ科)、イグサ (イグサ科) などに見られる。 単花被花 (monochlamydeous flower) (上図2c, 下図5): 1輪の花被をもつ花。この花被は慣習的に萼とよばれることが多い。しかし他の花の萼・花冠との相同性は必ずしも明らかではないため、花被とよぶべきともされ、また花被とよんでいる例もある。近縁種との比較から、明らかに萼を失って花冠が残ったと考えられる単花被花も存在する (シャクなど)。カンアオイ (ウマノスズクサ科)、ミズバショウ (サトイモ科)、ミクリ (ミクリ科)、イチリンソウ (キンポウゲ科)、アケビ (アケビ科)、ソバ (タデ科)、クリ (ブナ科)、ケヤキ (ニレ科)、クワ (クワ科)、ワレモコウ (バラ科)、グミ (グミ科)、ケイトウ (ヒユ科)、ヤマゴボウ (ヤマゴボウ科)、オシロイバナ (オシロイバナ科) などに見られる。 無花被花 (achlamydeous flower) (上図2d, 下図6): 花被を欠く花。裸花 (naked flower) ともよばれる。センリョウ (センリョウ科) やコショウ (コショウ科)、ドクダミ (ドクダミ科)、マムシグサ (サトイモ科)、アマモ (アマモ科)、ガマ (ガマ科)、カツラ (カツラ科)、ヤナギ (ヤナギ科)、トウダイグサ (トウダイグサ科) などに見られる。 異花被花 3a. サジオモダカ (オモダカ科) の異花被花 3b. シロガネスミレ (スミレ科) の異花被花 3c. セイヨウミミナグサ (ナデシコ科) の異花被花 3d. ブルーベリー (ツツジ科) の異花被花 3e. トキワハゼ (サギゴケ科) の異花被花 同花被花 4e. ハゴロモモ属 (ハゴロモモ科) の同花被花 4a. アボカド (クスノキ科) の同花被花 4b. ホトトギス (ユリ科) の同花被花 4c. キバナタマスダレ (ヒガンバナ科) の同花被花 4d. イグサ属 (イグサ科) の同花被花 単花被花 5e. ウスバサイシン (ウマノスズクサ科) の単花被花 5a. アケビ (アケビ科) の単花被花 (雌花) 5b. クレマチス (キンポウゲ科) の単花被花 (花被片は1輪のみ) 5c. クリ (ブナ科) の単花被花 (雄花) 5d. ヨウシュヤマゴボウ (ヤマゴボウ科) の単花被花 無花被花 6a. アメリカハンゲショウ (ドクダミ科) の多数の無花被花 6b. コンニャク (サトイモ科) の多数の無花被花 (上部が雄花、下部が雌花) 6c. カツラ (カツラ科) の無花被花 (雌花) 6d. ホッキョクヤナギ (ヤナギ科) の多数の無花被花 (雌花) 6e. トウダイグサ属 (トウダイグサ科) の無花被花からなる杯状花序 (雌しべのみからなる雌花と雄しべのみからなる雄花) 一般的に、被子植物においては、萼と花冠の分化が不明瞭で連続的なものが原始的な特徴であると考えられている。アンボレラ (現生被子植物の中で最も初期に分かれたものと考えられている) やシキミ (マツブサ科) などにその例が見られる (下図7a–c)。このような萼片と花弁の連続的な分化は、花の発生のABCモデルにおける各遺伝子の発現範囲の境界が不明瞭であることに起因すると考えられている。ただしこのような特徴は、サボテン科など比較的派生的な群に見られることもある (下図7d)。いずれにしても被子植物の中では、萼と花冠が未分化な状態から、明瞭に分化した状態への進化が独立に何回も起こったと考えられている。古くは花被を欠くこと (無花被花) が原始的な特徴と考えられていたこともあったが (この仮説に基づく被子植物の分類体系としてエングラー体系などがある)、現在では無花被花は花被の二次的な欠失によって生じたものと考えられている。 7a. アンボレラ (アンボレラ科) の雄花とそのつぼみ. 花要素はらせん状に配置. 7b. シキミ (マツブサ科) の花. 花被片はらせん状に配置. 7c. シキミ の花の裏面. 花被片は外側の萼状から内側の花冠状へ連続的. 7d. ゲッカビジン (サボテン科) の花. 花被片はらせん状に配列し、外側から内側へ連続的.
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