絶大な権限
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党則上総裁に次ぐ副総裁は常設の役職ではないため、副総裁が空席の場合は幹事長が党の実質的ナンバー2とされる。副総裁は党の重鎮が就任していることから副総裁はただの名誉職ではなく党の意思決定について強い影響力を持つものの、平常時においては明文上の具体的職掌はないため、副総裁が在職している場合でも幹事長は党のナンバー2の序列とされる見方もある。党の最高責任者である総裁が内閣総理大臣と兼務している場合は総裁の代行として党務全般を握る。ただし、自民党の参議院議員団に関する党務については同党参議院幹事長が担当する。 任期は1年だが、任期途中で辞職した場合はその残り任期が後任者の任期となる。また、総裁が新たに選任された場合は残任期間に関わらず任期は終了する。かつては再任の制限は無かったが、2021年9月に総裁に就任した岸田文雄の意向により、幹事長を含めた党役員について党則で「1期1年連続3期まで」とする規定が2022年3月に制定された。 幹事長は人事局・経理局・情報調査局・国際局などの党の組織を掌握している。また、党の総合調整機関である役員会に参加する。55年体制以降現在まで自民党が与党で同党総裁が内閣総理大臣である場合がほとんどのため、幹事長が総裁に代わって党務全般を管理するのが通常で、党の人事・財政についても大きな権限を握っている。自民党が初めて下野した細川内閣時代以降、党が銀行から融資を受ける際には幹事長が連帯保証人となっている。党則上、幹事長代行・幹事長代理・副幹事長や幹事長の下に置かれる各局の局長・次長、国会対策委員長の決定権を持つ。党の役職だけでなく国会の委員長ポストや閣僚を含む政務三役ポストの人事にも組閣本部のメンバーとして影響力を及ぼしている。また、首相官邸に内閣人事局が置かれるまでは高級官僚の人事にも影響力を及ぼしていた。 党のスポークスマンの役割も担い、定例記者会見を行う。テレビ等で各党幹部を集めて討論を行う際、特に選挙や国会運営・政局の絡むテーマなどでは、党の政策責任者である政調会長に代わって出演することもある。 幹事長経験者がその絶大な権限を駆使して党務で実績を上げれば、経験や人脈・知名度等によって政治的地位をいっそう高められるため、総裁候補と目されることも多く、過去の総裁24名のうち半数の12名までが幹事長経験者であった。なお、谷垣禎一は幹事長経験なくして総裁に就任したが、その後総裁となった安倍晋三の下で幹事長に就任している(現在までで唯一の例)。 かつては、党執行部が首相官邸よりも権力を握る「党高政低」と称され、首相臨時代理予定者1位に指定され実質的内閣ナンバー2である内閣官房長官よりも格上とされてきたが、小泉内閣以降、首相直轄の「経済財政諮問会議」などを活用して首相官邸が政策決定の主導権を握っていることから、内閣と党執行部との力関係が大きく変化した。特に第2次安倍内閣以降、首相官邸が党執行部よりも権力を握る「政高党低」になったことから、「本来の議会内閣制の形」へと変化したとされ、首相への権力集中が進み、政策の主導権が執政府へ集中する首相主導体制の構築により党執行部が政府の方針に全面的に従うことが増えていったという、近年における自民党の変化もある。 田中角栄は自民党幹事長について「何回やってもいい面白い仕事だ」と述べたことがある(一方で総理総裁については「一回やれば結構だ。血圧と血糖値が上がる商売で、とても身が保たない」と答えている)。
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