第一審・大阪地裁堺支部(裁判員裁判)
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「堺市連続強盗殺人事件」の記事における「第一審・大阪地裁堺支部(裁判員裁判)」の解説
2014年2月12日、被告人Nの初公判が大阪地方裁判所堺支部(森浩史裁判長、裁判員裁判)で開かれた。弁護側が事実認定は争わず、死刑制度の是非についてを焦点とする異例の審理となった。 初公判の冒頭陳述で検察側は「Nは以前に放火事件で服役中『金持ちの人を襲う』という大まかな犯罪計画を立てていた。仮釈放後に同居していた内妻や、保護観察官に『仕事を始めた。多額の現金を用意できる』と嘘を重ねた挙句『嘘がばれると内妻に見放され、仮釈放が取り消されて刑務所に戻る羽目になる』と考え、計画を実行した」と動機を明らかにし、その上で「できるならNを生きたまま焼き殺してやりたい」「死刑を望む」などの被害者遺族の捜査段階での調書を読み上げた。一方で弁護側も冒頭陳述を行い「絞首刑は残虐で違憲。死刑は避け、刑務所で反省の日々を送らせるべきだ」と主張した。 2月19日に開かれた第5回公判で、Nは被告人質問で森裁判長の質問に対し「死刑は当然だと思うが、この命で償えるものでも許されるものでもないと思う」などと述べ、また弁護側の質問に対し「逮捕当初、自供しなければ、捜査当局が犯行を立証するのは難しいと考えていたが、内妻の『正直に話して』という言葉を弁護人から伝えられ、自供を決意した」と説明し「自供すれば極刑になるだろうと思った」と、自供段階ですでに死刑を覚悟していたことも明かした。 2月24日の公判では証人尋問が行われ、立命館大学産業社会学部教授の岡本茂樹が「無期懲役囚は仮釈放をもらうために懲罰を避けたいと考え、刑務官らに言われたことに従うだけ。自分の感情を抑制したロボットのような生活を送る」と表現し、その上で「死刑と無期懲役で雲泥の差があるとは思わない。無期懲役は先の見えない恐怖があり、魂を殺す刑だ」と証言した。また、岡本は無期懲役囚と長年交流した経験を踏まえ「無期懲役囚は当初、先の見えない恐怖で『死にたい』と考えるが、そのうちに被害者の苦しみも理解する」と指摘し、昨秋からNと手紙のやり取りや面会を続けていると明かし「(Nには)被害者の痛みを分かってもらい、人の役に立つことをしてほしい」と述べた。また、同日には元刑務官の坂本敏夫も証言台に立ち「死刑囚が執行を知らされるのは当日朝で、恐怖の毎日を送っていると思う」などと述べ、死刑執行の様子を説明した。 2月26日の公判では意見陳述で被害者遺族である尾崎の姪が「おじは『妻のためにも一日でも長く生きなければ』と言っていた。おば(Oの妻)を置いていくことがどれだけ悲しく、無念だっただろう。(Nが)どんな償いをしても許すことはできない」、主婦の遺族も「自分の命だけを惜しむことなく、極刑を受け入れることが最低限の償いだ」(夫)「被害者参加制度を利用し、すべての公判に参加してきたが、反省は何一つ伝わってこない。命一つでは納得できないが、死をもって償うことを強く望みます」(長男)とそれぞれ意見を述べた。その後、論告で検察側は「弁護側は『絞首刑は残虐で違憲』と主張するが、死刑は一定の凶悪な事件を起こした者に命をもって償わせる刑であり、ある程度の苦痛が伴うことは避けられない。絞首刑の合憲性は最高裁判例でも認められており、日本国憲法に違反しないことは明らかだ」と述べた上で、Nが内妻についた「仕事をしている」との嘘を隠すため、何の落ち度もない2人を殺害して金を奪ったり、遺体を焼いたりした犯行について「あまりに非道で、鬼畜の所業と言わざるを得ない。まれにみる凶悪な犯行で罪責は極めて重大であり、命をもって償わせることはやむを得ない」として、Nに対し死刑を求刑した。一方で弁護側は「絞首刑は首が切断される可能性もあり、残虐で違憲だ」として無期懲役を求め結審した。 2014年3月10日に判決公判が開かれ、大阪地裁堺支部は「死刑制度は日本国憲法に違反しない」とした上で、「自己中心的な考えから、短絡的に立て続けに強盗殺人を起こした。極めて残忍で冷酷非道と言うほかない」として、検察側の求刑通り被告人Nに死刑判決を言い渡した。弁護側は大阪高等裁判所に控訴した。
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