是非について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 02:43 UTC 版)
この噂は「もし本当だとしたら大変なので、人に伝えなければならない」という善意によって広まる。現実的な危機感を煽る内容に、知っていれば誰にでも実行可能な対処法が示されているとき、人はその噂を有益な情報であると思い込み、善意で多くの人に知らせようとする心理が働く。このチラシの場合、「法外な賠償金を要求される」などと不安を煽りつつ、具体的なナンバーや「このチラシを持ち歩いていれば対処できる」といった現実的な対処法が書かれていることが、噂を広める効果を上げている。チラシを手にした者は「大切な家族や知人たちの元へ恐ろしい犯罪が迫る前に、自分の手で阻止しなければならない」という使命感に駆られ、真偽の定かではない噂の拡散に手を貸してしまうのである。 また、いったん噂やデマを信じ込んでしまった人には、それが否定されることに対して嫌悪感を抱き、信憑性を擁護しようとする心理が働くため、「ナンバープレートが知られているのに逮捕されない」といった不自然な点についても「ナンバーは偽装されたものだから警察も動けないのであり、特定の地名に偏っているのも、暴力団との繋がりを連想する地名の方が脅しが利くからだろう」といったもっともらしい理由を想像力で補完して、尾ひれをつけ足そうとする。さらにこの噂は、他人に伝えた後で嘘だと明らかになったとしてもさしたる罪悪感を感じず、「真実でなくてよかったね」と胸をなで下ろして済んでしまうような内容であることが、善意による拡散を後押ししている。 チラシに込められた「車間距離を取って安全運転しよう」というメッセージに共感し、支持する人々もいる一方、列挙されたナンバープレートなどの内容などは古びたデマでしかないため、ドライバーや自治体などに混乱をもたらすことへの懸念もある。内容を真に受けてチラシを持ち歩いていた者が本物の当たり屋に遭遇した場合に、チラシに書かれたナンバーが相手と一致しないことで、かえって「これは当たり屋ではない」という先入観を与えるかも知れない。また、チラシでは特定の地域の人々が、事実に基づかない情報に基づいて「悪者集団」として名指しされ、排除対象として扱われているため、単なる交通安全を促す注意喚起として肯定できないという面もある。具体的には、チラシに書かれた特定の地域・ナンバーを見て、「○○(地名)は運転マナーが最悪」「△△(地名)はガラが悪い」などと偏見を持たれるようになるとも考えられる。初期に流通した1986年の11月のチラシに列挙されたナンバーは前述のように私怨で付け加えられた情報であると考えられており、リストには何者かが他者を陥れるために、悪意で追加したナンバーが含まれている場合もある。 なお、仮にチラシに書かれているような手口の当たり屋グループが過去には実在していたとしても、その後のドライブレコーダーの普及などの要因により、チラシに書かれているような手口は通用しなくなっているとする指摘もある。例えば2004年にはインターネット上で仲間を募って自転車による当たり屋行為を繰り返していた実在のグループが検挙されたが、100件繰り返しても成功したのは1割程度で、あまりに効率が悪かったという。
※この「是非について」の解説は、「当たり屋グループ」の解説の一部です。
「是非について」を含む「当たり屋グループ」の記事については、「当たり屋グループ」の概要を参照ください。
- 是非についてのページへのリンク