立法への反対
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/14 23:12 UTC 版)
技術的環境や市場は急速に変化しており、弊害のない意味のある規制を維持し続ける能力が政府にあるかを疑問視する向きもある。深く検討しないまま規制することで、インターネットサービスプロバイダがDoS攻撃やスパムをブロックしたり、コンピュータウイルスの拡散を防止したりといった有益な対策のためにパケットのフィルタリングをすることも法的にできなくなる可能性がある。BitTorrentを開発したブラム・コーエンは「私は、インターネットが検閲が実際に行われているテレビのように絶対なって欲しくないと思っている。しかし、実際にネットワーク中立性を法制化する場合、ISPがスパムを捨てたり攻撃を防いだりといったことができなくなる可能性があり、そのような不合理を生じさせないような規制は非常に難しい」と発言している。 The Internet Freedom Preservation Act of 2009 などの最近の法案では、妥当なネットワーク管理を規制から除外することでこのような懸念を和らげようとしている。 ウォール・ストリート・ジャーナルでは、「政府の役割は、コムキャストにネットワーク管理方法を指示することではない。むしろ、消費者がコムキャストのインターネットサービスに不満があるなら、別の選択肢が得られるようにすることだ」という記事が掲載された。 ジョージ・メイソン大学フェローの Adam Thierer は「我々の経済の基幹部門を統制する政府機関は、最も影響を強く受けるところに影響力を行使する傾向がある」と主張し、結果として「我々が耳にした話を総合すれば、FCCがネット中立性を法制化しようとしているのは『消費者優先』または『ネットの自由とオープン性を守る』ことが目的だというが、数十年前に通信業や放送業を規制した際のように、一部の利益団体が法制化を利用して利益を得ようとしていることは無視できない」とした。 Aparna Watal(Attomic Labs 法律役員)は最近公表した研究で、明白な規制の危機に際して立法で対応しようという主張に反対する3つの理由を述べている。第一に「一般的な見方に反し、コムキャストの裁判の判決は委員会 (FCC) のISPへの権限を無効にするものではない。委員会が権限の根拠とした法律の条項は裁判では手続き上の問題で採用されなかったが、委員会が通信業者の不公平および不当な課金・慣習・規則を監督する権限を有することを示している」と説明している。第二に「これまでに問題となるような明白な出来事がほとんどなく、消費者への影響も限定的であるため、ネットワーク中立性を立法で強制したり、委員会が干渉主義的な方針を採用するのは不適切であり、時期尚早である」と示唆した。また、「メディアの素早い注目と世論の反発」がISPによるトラフィック操作を防ぐ効果的な取締りツールになるとしている。さらに「ネットワーク中立性を法制化するよりも、ISPにネットワーク管理業務の開示を要求したり、消費者が簡単にISPを乗り換えられるようにするなど、消費者保護の規則を設けるなどの穏便な方法が好ましい」と示唆している。最後に「委員会はブロードバンドサービスを規制しており、インターネット上のコンテンツやアプリケーションを直接規制していない。しかし、コンテンツの分類が不変とするのは不正確である。インターネットは複数の層が協働して機能しており、ある層の性能を意図的に制御すれば、他の層に影響を及ぼすことになる。そう考えれば、転送層で何がなされようとネットワーク中立性は維持されているとも言える。委員会にインターネットに繋がっているブロードバンドのパイプラインを規制させ、間接的にその上を流れるデータの規制に関与することを軽視すれば、今後数年間、複雑かつ重複し破綻した規制状態となるだろう」と説明している。
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