研究の起源
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『沈黙の春』が発表された直後の1960年代後半からすでにDDTなどがホルモン的作用をする可能性が指摘されていたが、一般には1997年に出版された『奪われし未来』が指摘したことから注目された。またフォム・サールらがDES(ジエチルスチルベストロール)について「低濃度でだけ」影響が現れる場合があると報告したが、従来の毒性学によれば低濃度で出た影響は「高濃度でも」見られるはずであることから、学術的にも問題視された。 日本では1998年5月に環境庁(当時)が発表した「環境ホルモン戦略計画 SPEED '98」にて、「内分泌攪乱作用を有すると疑われる化学物質」67物質をリストしたことにより、強い不安感が高まり、一気にメディアに「環境ホルモン」の言葉が登場するようになった。ただし、その後に検証実験事実が蓄積されるに従い、ほとんどの物質は哺乳動物に対する有意の作用を示さないことが一部に報告されている。その知見などを踏まえ、環境省は上記リストを取り下げた。現在では、リストは単に調査研究の対象物質であり、このリストに掲載されていたことをもって環境ホルモン物質もしくは環境ホルモン疑惑物質などと言うことは根拠がなくなったとされている。 定義をそのまま解釈すればホルモン類似物質である医薬品をも含むことになるが、実際には、より狭義に、環境中に意図せず存在する化学物質が体内へ取り込まれる危険性が予想される場合にのみこう呼ばれている(#環境ホルモン以外の内分泌攪乱物質を参照)。本来のホルモンと同様、非常に低濃度でも生体に悪影響を及ぼす可能性があるため、有害物質が高濃度に蓄積されて初めて問題になりうることを前提とした従来型の環境汚染の濃度基準では規制できないのではと危惧され、社会問題化した。 特にヒトや動物の生殖機能は、男性(雄)も女性(雌)も、性ホルモンと呼ばれる一群のステロイドホルモンの影響を非常に強く受けて微妙な調節がなされているため、体外のホルモン類似物質の影響を受けやすいとされている。河川、湖、海岸付近など、人間社会の近くに生息する魚類、貝類などの調査により、環境水中の内分泌攪乱化学物質の影響で生殖機能や生殖器の構造に異常が生じる現象が報告されている。ただし、こうしたメス化は、化学物質の作用ではなく、下水から排出される屎尿、つまり女性の尿に含まれる女性ホルモンのせいではないかという報告もあり、現在では人間の人口が爆発的に増えたため人のもつホルモン自体が他の生物に影響をあたえたものも多く指摘されている。
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