産経新聞の排除
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2012年2月23日、前原は産経新聞が用いていた「言うだけ番長」という表現を問題視し、取材拒否の通告と、実際に同日夕に国会内で開いた記者会見で記者の出席を拒否、さらに民主党政策調査会への取材も認めないと通告した。産経新聞によれば、23日昼、人事異動のあいさつのため国会内で前原と接触したところ、前原は衆院議員会館の自室で記者に対して、「ことあるごとに『言うだけ番長』と書く」理由を産経会長名の文書で要求した。そして、回答がない限り産経には政策調査会の取材を認めないことを通告したという。また、産経新聞の記者が会見場にいるため「(会見は)始められない」とし、その後別室で、参加する記者たちに名刺の提出を要求したという。産経新聞の記者が名刺を差し出したところ、党職員が「産経新聞はお断りしています」と入室を拒否した。前原は「受容限度を超えた。記者に批判する権利はあるが、事実に基づかなければならない」と記者会見で述べたという。 朝日新聞では、2012年2月25日社説にこの問題を取り上げ、政治家は常に批判にさらされるものであり、取材拒否は、政治家としての狭量ぶりを印象づけると前原を批判するとともに、民主党に対しても批判している。政治評論家の浅川博忠は、「総理を目指す政治家としては、度量が狭過ぎる印象を与えてしまった。批判も包み込む『大きさ』をみせるべきだった」と指摘した。毎日新聞論説副委員長の与良正男は「大人気ないですよ。民主党政権はすぐにメディアを選別したがる傾向が強い」と批判した。東工大教授の尾崎弘之は「前原さんは逆に宣伝しちゃいましたね。自分はこう呼ばれているんだということを。知らない人もこれで注目しますよ」と批評した。政治評論家の三宅久之は、民主主義下では、与党を批判するのは健全な政治のために当然の行為であり、政党助成金を受け取っている公党の要職にある者が、謙虚に受け止めることなく、気に入らない者を排除することで自分の正当性を守ろうとする対応は、政治家として幼稚と批判した。政治家の間でも批判や擁護の声があがった。 産経新聞は「主張」で、「報道内容が気に入らないからと特定のメディアを締め出して、自己正当化を図るような行為は断じて許されない」とした上で、記者の排除に対して、他の報道機関も前原や民主党に抗議したことを明かした。さらに、自衛隊施設での行事で、民間人の政権批判を封じることを目的とした防衛事務次官通達を出したことや、新たな人権救済機関「人権委員会」の創設を目指していることなどを引き合いに出し、この問題を「民主党の体質」と結び付けて批判した。 「言うだけ番長」は、「言葉ばかりで、結果が伴わない人」との意味を、漫画「夕やけ番長」をもじって表現したもので、メディアの批判として許容範囲であり、公人への人権侵害や名誉毀損には当たらない、と産経新聞は主張している。これまでも読売新聞に「『言うだけ番長』という不名誉なあだ名もある」(11年10月30日付朝刊)など少なくとも2回、さらに西日本新聞や沖縄タイムスといった地方紙のほか、週刊新潮やサンデー毎日といった週刊誌、夕刊紙でも同様の表現が見受けられる。産経新聞より先に使った例は、分かった範囲では2011年8月のサンケイスポーツ記事が見つかっている。なお、週刊ポスト2012年3月16日号によると、産経新聞が作った造語ではなく、それ以前に永田町では有名な通り名にしかすぎないという。最終的に、2012年2月28日の会見で前原は産経新聞の出席を認め、産経新聞の排除を撤回した。
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