日章旗の掲揚や君が代の斉唱における問題
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「卒業式」の記事における「日章旗の掲揚や君が代の斉唱における問題」の解説
学習指導要領では、「その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする」と定められている。 1990年代(平成2年-平成11年)以降、この要領に卒業式(及び入学式)における日章旗の掲揚、君が代の斉唱が指示されている事について、これを「強制」であると主張し、国旗掲揚・国歌斉唱に反対する教師が存在する。これに関連して、様々な問題が発生している。 卒業式ガイドラインのようなものを策定するなどして、各学校・校長へ指示・指導を行なっている都道府県あるいは市町村・特別区の教育委員会もある。ガイドラインとは、例えば以下のような内容のものである。 式場正面中央に日章旗を掲揚し、児童・生徒は日章旗に正対する。 式次第に「国歌斉唱」と明記する。 君が代の斉唱は教師のピアノ演奏で行い、一同起立し、日章旗に注目する。 警備要員を除く全教職員が参列する。 しかし、教職員や児童・生徒の中には、「『思想・信条の自由』に反し不服である」などとして、君が代斉唱時の起立をしなかったり、君が代を斉唱しなかったりする者もいる。教職員のこれらの意見や行動は、日本国内の教育の場に対して混乱を招いているとして、教育委員会が前述のガイドラインを職務命令とし、これに反する教職員を訓告・戒告・減給等の処分にする例が年々増加している。 東京都では東京都教育委員会(都教委)が、都立高校の卒業式(入学式も)において、国旗を壇上向かって左側に掲げ、国歌斉唱の際は国旗に向かって起立し、ピアノ伴奏を伴って歌うこととしており、これに違反した者は職務上の責任を問われる(懲戒処分など)としているが、これに対して反発する一部の教職員もいる。違反を理由に処分された教職員らは、都は日本国憲法第19条に定める思想・良心の自由を侵しているとして、都教委を相手に処分の取り消しなどの裁判を起こしており、東京地裁において、原告の教師側が勝訴したこともある(詳しくは国旗及び国歌に関する法律を参照)。 これらの件に関連して、国旗及び国歌に関する法律(国旗国歌法・平成11年8月13日法律第127号)制定における答弁の中で、時の首相小渕恵三は「教育現場に強制をするものではない」としているが、同じく時の文部省(当時、現・文部科学省)教育助成局局長・矢野重典(のち、文部科学審議官・国立教育政策研究所所長、独立行政法人日本学生支援機構理事を経て公立学校共済組合理事長)は、参議院国旗・国歌特別委員会で、学校での日章旗掲揚や君が代斉唱の指導について「教職員が国旗・国歌の指導に矛盾を感じ、思想・良心の自由を理由に指導を拒否することまでは保障されていない。公務員の身分を持つ以上、適切に執行する必要がある」と述べている。 なお、大学については教育基本法第7条第2項より「自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない」とされており(ちなみに大学においては学習指導要領は存在しない)、国立大学法人といえども国旗掲揚や国歌斉唱がなされないことが多い。 また私立の宗教系学校についても、建学の精神の観点から行われないことが多い。
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