日本の官僚
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 08:38 UTC 版)
中央官庁で勤務する官僚は、国会対応に追われ、連日の庁舎泊まり込みや月150時間ほどの時間外労働が常態化しており、残業を終えると深夜になることも珍しくないため、霞が関には午前1時でもタクシーが行列を作っている。特に労働政策を所管する厚生労働省は、残業時間の長さから『強制労働省』と揶揄されていることから、長時間労働の抑制対策に乗り出している。 しかしながら、2020年12月25日に河野太郎規制改革大臣による記者会見より、「霞が関がブラック化している」と危惧して2020年の10月と11月に調査した在庁時間調査より、霞が関で働く国家公務員の全体の5~6%が人事院が定める超過時間の上限の月100時間を超えていた。更には、過労死ラインにあたる月80時間超えは11~12%、45時間超えは35~36%も在庁つまり時間外残業を行っていた実態が明らかとなった。その要因として、内閣人事局によると、前述にもあるように国会議員の質問への対応や、政策の企画立案、予算編成作業が挙げられた。 特に20代のキャリア(I 種・総合職)職員は特に深刻であり、100時間を超えた者は17~18%、80時間超えは20代キャリア職員全体の約3分の1、45時間を超えた者を含めると約3分の2を占めていた。平均在庁時間も全体で約2時間であるのに対して、20代キャリア職員は約3時間と1時間長く、若手キャリア職員に仕事の荷重が多く圧し掛かっている。 そのため、20代キャリア職員の退職が年々増加しており、2013年の21人から2019年の87人と約4倍に増加している。また、退職の意向を持っている30歳未満の国家公務員の内、長時間労働を理由としたものが男性が約34%、女性で約47%であり、規制改革大臣河野太郎は2020年11月18日に自身のブログにて、このことについて問題提起した。そしてブログ内には、国家公務員の総合職を目指す者が減少していることにも触れており、申込者のピークである1996年の45,254人から2019年には20,208人と半分以下に減ってきており、長時間労働が公務員採用に負の影響を及ぼしている。 また、在庁時間調査による結果は、以下の通りであり、30代以下と40代以上と I 種・総合職とそれ以外の職種で明確な差があった。また、この調査より、令和2年度臨時国会での全ての国会議員の質問等の終了時間に当たる最終通告時間が正規の業務終了時間を過ぎたケースが約3分の2に上ること、その内の約55%が20時過ぎとなっていることが判明している。 霞が関で働く国家公務員(課室長級の管理職職員含む)の正規の勤務時間外在庁時間別の職種・年齢別内訳(2020年10月・11月)正規の勤務時間外在庁時間内訳月別職員数(人)全体20代かつI 種・総合職I 種・総合職Ⅱ・Ⅲ種一般職専門職・その他20代以下30代40代50代60代以上50,682 約2700 11,467 25,359 13,856 8,859 14,588 16,862 9,384 989 45時間超10月18,680 1,788 5,106 8,127 5,447 4,138 6,661 5,963 1,860 58 11月17,499 1,772 5,025 7,567 4,907 4,096 6,253 5,474 1,624 52 80時間超10月6,247 886 2,208 2,283 1,756 1,646 2,365 1,839 387 10 11月5,522 841 2,118 1,980 1,424 1,533 2,152 1,513 320 4 100時間超10月2,940 472 1,132 946 862 800 1,195 796 147 2 11月2,617 452 1,117 843 657 761 1,051 682 120 3 注在庁時間は、職員が正規の勤務時間外に在庁した時間である。具体的に、登庁してから正規の勤務開始時間までと勤務終業時間から退庁までの時間の合計である。また、土日祝日の出勤やテレワークでの正規の勤務時間外も含んでいる。 在庁時間45時間超は、80時間超と100時間超も含まれている。80時間超も同様に100時間超も含まれている。 20代かつⅠ種・総合職職員の職員数(全体)は、概数である。 霞が関で働く国家公務員(課室長級の管理職職員含む)の正規の勤務時間外在庁時間別の職種・年齢別内訳の割合(2020年10月・11月)正規の勤務時間外在庁時間内訳月別割合(%)全体20代かつI 種・総合職I 種・総合職Ⅱ・Ⅲ種一般職専門職・その他20代以下30代40代50代60代以上45時間超10月36.9 65 44.5 32.0 39.3 46.7 45.7 35.4 19.8 5.9 11月34.5 64 43.8 29.8 35.4 46.2 42.9 32.5 17.3 5.3 80時間超10月12.3 32 19.3 9.0 12.7 18.6 16.2 10.9 4.1 1.0 11月10.9 31 18.5 7.8 10.3 17.3 14.8 9.0 3.4 0.4 100時間超10月5.8 17 9.9 3.7 6.2 9.0 8.2 4.7 1.6 0.2 11月5.2 18 9.7 3.3 4.7 8.6 7.2 4.0 1.3 0.3 注在庁時間は、職員が正規の勤務時間外に在庁した時間である。具体的に、登庁してから正規の勤務開始時間までと勤務終業時間から退庁までの時間の合計である。また、土日祝日の出勤やテレワークでの正規の勤務時間外も含んでいる。 在庁時間45時間超は、80時間超と100時間超も含まれている。80時間超も同様に100時間超も含まれている。 20代かつⅠ種・総合職職員の割合は、少数1桁を四捨五入している。 また、中央官庁の官僚だけでなく、自衛隊等も含めた国家公務員全体で見た場合、2020年は約67万人の内約4万人が週60時間以上労働しており、比率にして約6.6%(週労働35時間以上の者に限れば約7.8%)である。更に49時間以上の者も含めた場合、約10万人となり約14.9%(週労働35時間以上の者に限れば約19.6%)となる。そして、前述より河野太郎規制改革相は、「霞が関がブラック化している」と危惧していたが、霞が関だけでなく地方公務員を含めてみた場合、前表の業種別で見た週労働60時間以上の割合は、2007年以降微減しているものの、週労働40時間以上の労働者に限れば12%前後で推移しており、他の業種が減少している中で、時間外労働の縮減が進んでいない現状がある。また、2007年は9業種が公務員より長時間労働の割合が多かったが、2020年は3業種と減少しており、河野太郎の言葉を借りれば、「公務員が相対的にブラック化している」現状がある。
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