日本におけるクラフトビール・地ビール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/28 06:24 UTC 版)
「クラフトビール」の記事における「日本におけるクラフトビール・地ビール」の解説
詳細は「日本の地ビール」を参照 2018年時点で、日本にはクラフトビール・メーカーが141社ある(帝国データバンクの調査)。 日本では、1994年の酒税法改正によりビールの最低製造数量基準が2,000キロリットルから60キロリットルに引き下げられ、全国各地にマイクロブルワリーに相当する小規模なビール醸造会社が登場して、「地ビール」と総称されるようになり、一時は300社以上の地ビール会社があった。当初のブームは2003年頃には終息し、地ビール会社の数は200社ほどに落ち着いたが、以降は「地ビール」に代えて、「小規模なビール醸造所でビール職人が精魂込めて造っているビール」、「品質を重視して、ビール職人が手塩にかけて造るビール」といった含意で「クラフトビール」をキーワードとし、小規模ビール生産者のビールを市場に送り出す取り組みが拡大し、ヤッホーブルーイングが2004年から取り組んだ電子商取引を中心に規模拡大に成功したことなどを契機に、新たにクラフトビール市場が成長し始めた。特に2010年代に入るとクラフトビールの人気が一層高まったとされており、統計によっては10%を超える成長を見せた年もあった。 日本の文脈では、「地ビール」という呼称が優勢であった初期から、これを「craft beer」と同じものと見なす用語法があり、社名やブランド名に「クラフトビール」を盛り込んだ地ビール会社も、仙南クラフトビール、月夜野クラフトビールなど、1990年代から存在していた。日本地ビール協会もその英文の正式名称を「The Japan Craft Beer Association (JCBA)」としていた(後に「The Craft Beer Association」と改称)。『新明解国語辞典』は1997年の第5版から「地ビール」を語彙として収録しているが、その語釈は「ドイツ、イギリス、アメリカなどで、その土地の需要を満たす目的で作られる(比較的)生産量の少ないビール。」(カッコ内は第6版で削除)などというもので、諸外国の事例に言及することによって「地ビール」を「craft beer」と同じものと見なす用語法を支持している。また、全国地ビール醸造者協議会 (Japan Brewers Association, JBA) は、「個性あふれるビールを少量生産するメーカーのビールを「地ビール」といいますが、特に酒税法等の法律で定められた用語ではありません。クラフトビールと呼ばれることもありますが、双方、明確な定義はありません。」とし、この二つの用語が同義で置き換えられることもあるが、双方とも「明確な定義」はないとし、語義に曖昧なズレが生じ得ることも示唆している。 しかし、地ビール・ブーム衰退の反省から品質重視を前面に出したクラフトビールへと転換したことを踏まえ、両者の違いを強調し、地ビール・ブームと2004年以降のクラフトビール・ブームの担い手の違いが強調されることも、さらに後述のように2015年ころから大手ビール会社が本格的にクラフトビール市場に参入したことを踏まえて担い手の違いが強調されることもある。 アメリカ合衆国におけるブルワーズ・アソシエーションの定義は、そのままでは日本のブルワリーには当てはまらないと考えられている。日本では、クラフト・ブルワリーとはみなされないオリオンビールも、ブルワーズ・アソシエーションの定義における規模の条件は満たすことになる。また、地ビールの中には、黄桜の「京都麦酒」、木内酒造の「常陸野ネストビール」など大小の日本酒メーカーが生産している例や、日本酒メーカーや大手ビール会社が出資している例も、少なからずあり、事業の資本的独立が重視されているわけではない。 なお、日本の酒税法は、原材料によって税率の異なる酒類を複数設けており、クラフトビールの中でもフルーツビールなどは税法上のビールにはならず、発泡酒とされていた。2017年に酒税法が改正され、税法上のビールとして認められる麦芽比率が67%以上から50%以上に引き下げられたほか、麦芽の重量に対して5%以下の割合で果実や香辛料等を副原料として使用することが認められることとなり、従来発泡酒と区分されていた一部のクラフトビールも正式にビールと名乗れるようになった。 地ビールへの課税については、2003年から時限措置として本来の税額の20%を免除する措置が取られていたが、2010年にはこの優遇措置が原則15%に圧縮された。この措置は税法上のビールだけが対象であり、税法上の発泡酒などには適用されない。
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