新型コロナウイルス感染症の拡大による影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 17:32 UTC 版)
「競輪」の記事における「新型コロナウイルス感染症の拡大による影響」の解説
2020年、日本国内で新型コロナウイルス感染症が蔓延・拡大したことを受けて、競輪でも感染拡大防止のため2月27日より当面の間、日中・ナイターも含め全てのレースで無観客による開催となった。本場だけでなく競輪場外車券売場も閉鎖され、またファンの多くが高齢者であることから競艇などと比べて車券の売り上げ額が一時的に大きく落ち込み、例えば記念競輪(GIII)としては初の無観客開催となった奈良競輪開設69周年記念「春日賞争覇戦」では、総売り上げ額は17億6353万9100円と、前年度の54億929万8600円に対し32.6%と大幅ダウンした。それ以降も、九州地区から参加した選手の親族に新型コロナウイルス感染症の陽性反応が出たため4月2日からの玉野競輪が公営競技としては初めて新型コロナウイルス感染症による影響で中止となったほか、元選手で競輪評論家である井上茂徳氏の新型コロナウイルス感染発覚と、それを受けて4月8日から開催予定であった名古屋競輪が初日朝に急遽中止を決定するなど、混乱が続いた。 さらに、改正・新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が日本国政府より発令された4月7日以降、記念競輪でも平塚記念、西武園記念の中止が決定したほか、全国的に開催を取り止める競輪場が相次いで出てきており、遂には5月5日から静岡競輪場で行われる予定だったGI・第74回日本選手権競輪も開催中止の断が下された。特に、2020年4月に限れば、S級だけで15%強に当たる130人強があっせんが全て中止となり、中には岩本俊介や松岡健介のように3開催連続して中止にされた選手もいる。約款により、開催初日に急遽中止が決まれば各グレードの総賞金額の30%が参加選手に対し均等に支払われるが、前もって中止となった場合は支払われないため収入が大きく減少しており、選手・関係者に大きな影響が出た。実際に、2020年は取得賞金額が1000万円以上の選手はS級創設以降最小となる590人に留まり、平均取得額も東日本大震災被災地への復興資金捻出のため賞金額を大幅に減額した2011年〜2012年並みの905万円と、大きく減少となった。 同じ公営競技でも、競輪の場合は通常時でも競艇や競馬(中央競馬・地方競馬とも)、オートレースよりも参加選手の人数が多い上に狭い検車場で多くの人数がごった返すこと、選手宿舎が4人相部屋であることなどから(いわゆる『3密状態』になりやすい)、主催者である各自治体が感染拡大を防止するため中止の判断をしたとみられる。またそれ以外にも、レース中の事故に備えて待機させる医師を確保できず、止む無く開催中止とした競輪場もあった。なお、緊急事態宣言が発令された後は、競艇などでも暫くは競輪同様に多くが無観客で開催された。 特に4月から5月にかけては開催中止が相次いだため、選手側にとってもコンディション維持や収入面で影響が出てきたことから、当面の間競輪開催においてはGI・GIIの特別競輪を除いて参加選手の人数を抑制し、かつあっせんは極力選手の登録地の近くとして移動を抑制することで開催中止を回避しつつ感染拡大を防ぐ取り組みを行うこととなった。また、同年6月以降からは、体制が整った競輪場・専用場外売場から順次、観客の入場を再開している。7月以降は暫定的に開設記念やGIなどグレードレースを除いた全てのレースで7車立てとするなど極力密にならないよう配慮した上で開催を継続している。ただ、7月下旬には選手で初めて感染者が発生し、それ以降も複数名の選手で陽性者が現れたほか、2021年に入っても再度緊急事態宣言が発令されたことで一部の競輪場では無観客開催や場外発売を中止したり、陽性者との濃厚接触者と疑われる選手が参加した競輪場では開催中止ないし途中打ち切りとなるなど、混乱は続いた。 ただ、その一方で、長い目で見ると、特に電話投票、インターネット投票での売り上げが伸びており、2019年度の電話投票売り上げ額は3625億8208万8800円と7年連続増加かつ前年度比118.4%と急増し、2765億8612万1700円(前年度比86.0%)であった場外売り上げ額を初めて上回った。また、電話投票利用者数も6428万1066人で、前年度比115.8%と急増した。ナイター競輪においては2020年5月5日から3日間開催された玉野FIIで施行者の想定を5倍近く上回る16億4千万円を売り上げたほか、ミッドナイト競輪においても、2021年1月23日から25日まで開催された松阪FIIでは総売上額が14億7168万3300円となり、1開催の総売上記録を更新しただけでなく、最終日の25日においては5億7901万4000円の売上があり、ミッドナイト競輪1場・1日あたりの売上記録も更新した。 一時的に混乱が見られた競輪界であったが、2020年はグランプリ・GIは中止となった日本選手権競輪と無観客開催かつ多くの場外発売が中止となった高松宮記念杯競輪を除いて全て売上額は対前年比で上回ったほか、2021年4月1日にJKAが発表した2020年度の車券総売上高は、対前年度比で113.6%となる7499億9019万6400円となり、結果として7年連続増、かつ対前年比で10%以上もの大幅増となった。対前年比で10%以上もの売上高を記録したのは、1990年度以来30年ぶりであった。2021年度も8年連続の増加となっただけでなく、総売上高9631億3007万1000円と2004年度以来17年ぶりとなる9000億円台、かつ対前年度比128.4%と大幅アップを果たした。 このように売上高の増加が続いていることを受けて、2019年10月、2021年4月、2022年4月と段階的に全てのレースで賞金額の増額が行われており、特にKEIRINグランプリでは本賞金のみで1億1880万円となった。
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