斜面崩壊・地すべり・土石流の形態と被害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 23:02 UTC 版)
「土砂災害」の記事における「斜面崩壊・地すべり・土石流の形態と被害」の解説
種類/(主な別名)特徴被害の様相斜面崩壊 /(山崩れ、崖崩れ、土砂崩れ、岩崩れ、急傾斜地崩壊) 傾斜20度以上の急斜面で、土塊が突発的に崩れて下方に押し出され、1日当たり10mm以上の速さで移動する。 斜面の表層2 - 3m程度が崩れるもの(表層崩壊)は頻度が高く、風化した斜面ではどこでも起こりうる。特に水成堆積岩や火山灰、花崗岩の風化土(真砂土)が分布する地域や雨量の多い地域で起こりやすい。 斜面の下深くの岩盤まで崩れるもの(深層崩壊)は頻度が低い。大量の雨水の浸透により地下水脈の水圧が上昇して起こると考えられ、大雨や地震などを引き金に発生する。 崩れ落ちる時間はごく短いため、住宅の近くで発生すると、逃げ遅れるなどして死者が出ることも多い。 土塊の重量が重いほど、また斜面の傾斜が急なほど、崩壊の力が大きい。 災害の規模は地すべり・土石流に比べると小さいものが多い。ただし、深層崩壊などの大きなものは、土石流を誘発したり、天然ダムを形成しその決壊が下流の広範囲に影響するなど、災害の規模が大きい。 地すべり 傾斜5度 - 20度程度の緩い斜面で、地下の特定の層(すべり面)を境にして、土塊が形状を保ちながらずれる。1日当たり10mmに満たないくらいのゆっくりとした速さで移動し、数日以上動き続ける。 斜面崩壊に比べてすべり面が深く、規模が大きい傾向がある。 主に粘性土(地すべり粘土)がすべり面となる。地すべり粘土が分布する地域に多発する。 日本では3種の地すべり地帯が知られている。1.第三紀層の風化粘土が丘陵地に分布する長崎県北松地域や北陸地方、2.断層運動による破砕帯や過去の造山運動による結晶片岩が分布する中央構造線沿いの徳島県・愛媛県など、3.温泉の化学成分により風化が進んだ温泉余土が分布する箱根、霧島、別府、鳴子などの温泉地帯 である。 寒冷地では、雪解けに伴い発生する周年性の地すべり、周氷河作用による地すべりが起こりやすい地帯がある。 継続性、再発性がある。始めゆっくりと動いていたものが一転して速くなったり、停止した後再び動いたりすることがある。発生地の多くが過去に近辺で地すべりが発生したところである(過去の地すべりの「二次すべり」である場合が多い)。 過去の地すべり発生地には、馬蹄型の崖、階段状の斜面、斜面下方の隆起など、特徴的な「地すべり地形」が現れる場合が多く、これを判別することによって地すべりの起こりやすい所を特定できる。 進行が遅く、前兆が捉えられやすいため、人的被害はあまり出ないことが多い。ただし、1985年に長野県長野市地附山で26人が死亡・55棟が全壊した地すべり災害のように、大きな人的被害が出た例もある。 土塊の移動規模が大きいため、物的被害は大きい。 土石流 /(鉄砲水、山津波、泥流) 斜面や川床の土砂が流動化し、谷沿いに流れ出す。土砂と水とが同程度混合したものを指し、土砂の割合が少なければ河川の洪水流となる。しばしば大きな岩や流木を含み、段波となって何度も押し寄せることがある。 3つの形態がある。1.渓流内(川床)の不安定な土砂が大雨で流動化するもの、2.大雨などによる斜面崩壊・地すべりの土砂が、大量の湧水や表流水とともに流動化するもの、3.斜面崩壊・地すべりが河川を塞いで天然ダムを形成、その後水位が上昇して決壊し流れ下るもの である。 山間部や火山地帯など土砂生産が活発な土地に多い。また、傾斜約15度以上の渓流付近で発生しやすい。平地に流れ出て緩やかになり、傾斜2度の付近で停止し堆積する例が多い。ただし、運動量が大きく、カーブを曲がらずに直進する傾向がある。 地質条件に依らず突発的に(ゲリラ的に)発生するため、いつどこで発生するのか予測が難しい。土質力学では流動性が非常に高い「土砂流」に分類される。流れはふつう時速20 - 40kmと速く、ときに時速60kmを超える場合もあり、逃げるのは困難。斜面崩壊・地すべりに比べて、居住地に発生したとき、死者が出るなど人命に関わる被害になりやすい。 その土地における過去の雨量と土石流発生の有無から導き出される、下限の累加雨量(数十分から数日単位)を求めておくことで避難の目安となる。
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