数論的性質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/17 07:27 UTC 版)
α を無理数とする。任意の正数 ε に対して、ある正定数 c = c(ε) が存在して、 | α − p q | > 1 q μ + ε {\displaystyle \left|\alpha -{\frac {p}{q}}\right|>{\frac {1}{q^{\mu +\varepsilon }}}} が q > c を満たす全ての有理数 p/q に対して成立するような、μ の下限 μ(α) を、α の無理数度 (measure of irrationality for α) という。もし、このような数が存在しない場合、 μ ( α ) = ∞ {\displaystyle \mu (\alpha )=\infty } とする。つまり、無理数度は、α を有理数で近似したとき、どのくらいの精度で近似できるかの指標を与える。たとえば任意の有理数の無理数度は 1 になる。 フルヴィッツは、1891年に以下のことを証明した。(フルヴィッツの定理) 任意の無理数に対して、 | α − p q | < 1 5 q 2 {\displaystyle \left|\alpha -{\frac {p}{q}}\right|<{\frac {1}{{\sqrt {5}}q^{2}}}} を満たす既約分数 p/q が無限に多く存在する。また、上記の定数 1 / 5 {\displaystyle 1/{\sqrt {5}}} は最良であり、より小さな正数に置き換えることはできない。つまり、全ての無理数に対して、無理数度は、2 以上である。 リウヴィルは、1844 年、α が n 次の実代数的数(実数である代数的数)のとき、μ(α) ≤ n であることを証明し、このことから、リウヴィルは超越数が存在することを初めて証明した。 実代数的数に対する μ(α) の評価は、その後、トゥエ (A. Thue)、ジーゲル、ゲルフォント (A. O. Gel'fond)、ダイソンらにより改良され、最終的に ロスにより、μ(α) = 2 であることが証明された(ディオファントス近似を参照)。この功績によりロスは 1958 年フィールズ賞を受賞した。 上記のことから、無理数度が 2 よりも大きい実数は超越数となるが、超越数ならば無理数度が 2 よりも大きくなるわけではない。たとえば、自然対数の底 e の無理数度は、2 である。 ほとんど全ての実数に対して、無理数度は 2 であることが知られているが、無理数度が分かっていない数がほとんどである。たとえば、円周率 π の無理数度が 2 であるかは不明である。現状、8.0161 以下であることが証明されているにすぎない(畑 1992年)。
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数論的性質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/26 04:58 UTC 版)
( a b c d ) {\displaystyle {\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}}} の行列式が1であるということは、分数 a/b, a/c, c/d, b/d がすべて既約であること、つまり、共通因子を持たないこと(もちろん分母が 0 ではないという条件で)を意味する。もっと一般的には、p/q が既約分数であれば、 a p + b q c p + d q {\displaystyle {\frac {ap+bq}{cp+dq}}} も既約となる(繰り返すが、分母は 0 ではないという条件で)。既約分数の任意のペアは、このように関連つけることができる。つまり、任意の既約分数のペア p/q と r/s に対して、 r = a p + b q {\displaystyle r=ap+bq} と s = c p + d q {\displaystyle s=cp+dq} となるような ( a b c d ) ∈ SL ( 2 , Z ) {\displaystyle {\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}}\in \operatorname {SL} (2,\mathbf {Z} )} が存在する。 モジュラー群の元は、2次元の周期格子上の対称性をもたらす。 ω 1 {\displaystyle \omega _{1}} と ω 2 {\displaystyle \omega _{2}} を 2つの比率が実数でないような 2つの複素数とすると、点の集合 Λ ( ω 1 , ω 2 ) = { m ω 1 + n ω 2 : m , n ∈ Z } {\displaystyle \Lambda (\omega _{1},\omega _{2})=\{m\omega _{1}+n\omega _{2}:m,n\in \mathbf {Z} \}} は、平面上の平行四辺形の格子となる。異なるベクトルのペア α 1 {\displaystyle \alpha _{1}} と α 2 {\displaystyle \alpha _{2}} が全く同じ格子を生成することと、 SL ( 2 , Z ) {\displaystyle \operatorname {SL} (2,\mathbf {Z} )} の行列を用いて ( α 1 α 2 ) = ( a b c d ) ( ω 1 ω 2 ) {\displaystyle {\begin{pmatrix}\alpha _{1}\\\alpha _{2}\end{pmatrix}}={\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}}{\begin{pmatrix}\omega _{1}\\\omega _{2}\end{pmatrix}}} と書けることは等価である。このため、楕円函数のような二重周期函数(英語版)(doubly periodic function)は、モジュラー群対称性を持つ。 有理数に対するモジュラー群の作用は、格子点 (p, q) が分数 p/q を表している正方格子として可視化すると、最も容易に理解することができる(ユークリッドのオーチャード(英語版)(Euclid's orchard)を参照のこと)。この格子においては、既約分数は原点から見ることのできる点である。分数上のモジュラー群の作用は、見ることのできる点を見ることができない(既約な)点へ変換することは決してないし、逆も成り立つ。 p n − 1 / q n − 1 {\displaystyle p_{n-1}/q_{n-1}} と p n / q n {\displaystyle p_{n}/q_{n}} が 連続した2つの連分数の近似分数あれば、行列 ( p n − 1 p n q n − 1 q n ) {\displaystyle {\begin{pmatrix}p_{n-1}&p_{n}\\q_{n-1}&q_{n}\end{pmatrix}}} は GL(2, Z) に属する。特に、a < b かつ c < d である正の整数 a, b, c, d に対し、bc − ad = 1 であれば、a/b と c/d は max(b, d) に対応するファレイ数列において隣接する。連分数の近似分数の特別に重要な例として、フィボナッチ数列とペル方程式の解がある。どちらの場合も、モジュラー群の半群を形成するように数列を並べることができる。
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