政治・文化とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 言葉 > 状態 > あり方 > 政治・文化の意味・解説 

政治文化

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/22 09:56 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動

政治文化(せいじぶんか Political culture)は政治学における概念のひとつ。ある政治体制国家に固有な政治に関わる文化であり、その体制の背後にあって体制を支えているものとみなされている。従ってこのような政治文化が政治体制を規定するという考えに立てば、体制が変動する際、政治文化が変化すれば変動は容易である。同様に体制が変動しても政治文化が変化しない場合、変動後の体制は根付きにくく再び変動する可能性が高くなる。しかしながら政治文化はその体制内に存在する人々に数世代にわたって共有されているものなので、体制以上に変化しにくいものでもある。

アーモンド/ヴァーバの政治文化論

政治文化に関する研究は、アメリカの比較政治学者ガブリエル・アーモンドシドニー・ヴァーバが有名である。アーモンドとヴァーバは政治システム論比較政治学に導入したうえで、政治システム間の入力・出力などの作用(パフォーマンス)の差異を説明するものの一つとして政治文化を考えた。彼らによると、文化とは社会的対象に対する心理的指向である。これに基づいて政治文化は、政治的対象に対する心理的指向と定義される。すなわち、政治文化とはその政治システムの構成員が政治に対してどのような態度・関心を持っているかによって決まる。その上で政治文化は未分化型・臣民型・参加型の3種類に分類される。これらの分類は政治システムの機能、すなわち入力と出力のどの部分にどのような態度を示すかによってなされる。これらの3つの型はいわゆる理念型(もしくはモデル)であり、実在の政治システムは3つの型の要素を併せ持っている。例えばアーモンドとヴァーバの行った5ヵ国の政治文化に関する調査では、アメリカおよびイギリスの政治文化は参加型と臣民型の混合形とされている。

未分化型とは入力にせよ出力にせよ、政治システムあるいは政治に関して明確な態度・関心・指向を示さない政治文化のあり方である。従って政治に参加するものとしての自己への指向もない。典型的には、政治的・経済的・社会的役割が分化していない前近代的な社会に見られる。例えばアフリカ部族社会における政治文化はこれに近い。

臣民型の政治文化においては、構成員は次のような指向を示す。人々は政治システムへの入力、すなわち政治システムに対して利益を表明して要求を行う過程には関心を持たない。そのかわり、政府が下した決定の内容とそれをどのように施行するのかという出力に関心を持つ。従って、自身が政治に参加していくという意識はほとんど持たない。

参加型の政治文化では、人々は出力のみならず入力にも関心を持つ。従って、自身が政治に参加しているという意識が強い。すなわち、要求を行うことで政府の行動に影響を与えることができると考えている。

既に上述したように、一定の政治文化が体制に影響を与えるという仮定が政治文化論の前提として存在する。この観点からすると、参加型の政治文化は臣民型・未分化型のそれに比べて民主主義体制との親和性が高い。

脚注

参考文献

  • Armond, G. A., G. B. Powell, Jr. 1978. Comparative Politics: System, Process, and Policy, Little, Brown.
    • ガブリエル・A・アーモンド、ブリングハム・パーウェル著、本田弘、浦野起央監訳『比較政治学 システム・過程・政策』時潮社、1986年
  • Armond, G. A., and S. Verba, eds. 1963. The Civic Culture: Political Attitudes and Democracy in Five Nations. Princeton: Princeton Univ. Press.
    • ガブリエル・A・アーモンド、シドニー・ヴァーバ著 石川一雄・薄井秀二・中野実・岡沢憲芙・深谷満雄・木村修三・山崎隆志・神野勝弘・片岡寛光訳『現代市民の政治文化――五カ国における政治的態度と民主主義』勁草書房、1974年
  • Benedict, R. 1934. Patterns of Culture. Boston: Houghton Mifflin.
    • ルース・ベネディクト著、米山俊直訳『文化の型』講談社学術文庫、2008年
  • Benedict, R. 1946. The Chrysanthemum and the Sword: Patterns of Japanese Culture. Boston: Houghton Mifflin.
    • ルース・ベネディクト著、長谷川松治訳『菊と刀 日本文化の型 上下』社会思想研究会出版部、1948年
  • Dogan, M. ed. 1988. Comparing Pluralist Democracies: Strains on Legitimacy. Boulder, Colo: Westview Press.
  • Douglas, M. 1970. Natural Symbols: Explorations in Cosmology. London: Barrie & Rockliff.
  • Douglas, M. and Wildavsky, A. 1982. Risk and Culture. Berkeley: Univ. of California Press.
  • Erikson, R. S., McIver, J. P. and Wright, G. C., Jr 1987. State political culture and public opinion. in American Political Science Reveiw 81:797-814.
  • Hall, P. 1986. Governing the Economy: The Politics of State Intervention in Britain and France. New York: Oxford Univ. Press.
  • Inglehart, R. 1988. The renaissance of political culture. in American Political Science Review 82:1203-30.
  • Kroeber, A. L. and Kluchohn, C. 1952. Culture: A Critical Review of Concepts and Definitions. Cambridge, Mass.: Harvard Univ. Press.
  • Lindblom, C. 1977. Politics and Markets: The World's Political-Economic Systems. New York: Basic Books.
  • Thompson, M., Ellis, R. and Wildavsky, A. 1990. Cultural Theory. Boulder, Colo.: Westview Press.
  • Mead, M. 1942. And Keep Your Powder Dry: An Anthropologist Looks at America. New York: Morrow.
  • Mead, M. 1953. National character. in A. L. Kroeber, ed. Anthropology Today: An Encyclopedic Inventory. Chicago: Univ. of Chicago Press.
  • Rye, L. W. 1968. Political culture. in D. L. Sills, ed. International Encyclopedia of the Social Sciences. New York: Macmillan/Free Press.
  • Wildavsky, A. 1983. Choosing preferences by constructing institutions: a cultural theory of preference formation. in American Political Science Review 81:3-21.
  • Williamson, O. 1975. Markets and Hierarchies, Analysis and Antitrust Implications: A Study in the Economics of Internal Organization. New York: Free Press.
    • オリヴァー・イートン・ウィリアムソン著、浅沼万里、岩崎晃訳『市場と企業組織』日本評論社、1980年

政治・文化

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 08:48 UTC 版)

スラヴ人」の記事における「政治・文化」の解説

多くスラヴ戦士がしばしばドイツ人ギリシャ人雇われたことが知られている。いくつかのスラヴ戦争は、アラブ商人傭兵としての役割果たしたスラヴ人の間では、高貴な戦士死体ボートで燃やす習慣広まった。後にこの習慣スカンジナビア人とバルト人によってスラヴ人もたらされた。 近隣ゲルマン人ローマ人社会では、家族女性は夫の奴隷と見なされ、軍事従事することを許可されなかったが、これとは異なりスラヴ人には男性女性へ分割概念がなかった。 スラヴ語共通性基盤とするスラヴ全体共通性強調する態度汎スラヴ主義呼ばれ国民楽派第一次世界大戦民族国家旧東欧の概念など重要な主体性ともなったが、文化・宗教面ではスラヴ各民族ごとに異な主体性持っており、過去何度も繰り返されポーランド・ロシア戦争のほか、近年では1990年代ユーゴスラビア紛争2010年代20年代ウクライナ紛争どのように血を流し合って対立する矛盾した面を持っている

※この「政治・文化」の解説は、「スラヴ人」の解説の一部です。
「政治・文化」を含む「スラヴ人」の記事については、「スラヴ人」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「政治・文化」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



政治・文化と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「政治・文化」の関連用語

1
江戸表 デジタル大辞泉
78% |||||



4
中央語 デジタル大辞泉
50% |||||


6
36% |||||


8
ハイデルベルク デジタル大辞泉
34% |||||

9
華北 デジタル大辞泉
34% |||||


政治・文化のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



政治・文化のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの政治文化 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのスラヴ人 (改訂履歴)、西ゴート王国 (改訂履歴)、政軍関係 (改訂履歴)、シュヴァルム=エーダー郡 (改訂履歴)、政治 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS