政府による処方規制
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2011年、厚生労働省は「自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム:過量服薬対策ワーキングチーム」の調査を受け、3剤以上の処方についての必要性を適正化する取り組みを始めた。 2012年3月、厚生労働省は自立支援医療費支給認定実施要綱の第4項を改正し、地方公共団体は自立支援医療行政に関し、以下の管理が求められるようになった。 支給認定時に診断書を確認し、同一種類の向精神薬が3種類以上処方されているか確認する。 その際に、3種類以上処方されている場合は、指定自立支援医療機関から理由を求める。 支給認定時の確認にて該当した者は、その後の支給期間中も診療録等で治療状況を把握する。 2014年度の中央社会保険医療協議会による診療報酬改定では、多剤処方を行った場合には「精神科継続外来支援・指導料」をゼロ算定、および処方料・処方箋料・薬剤料をマイナス算定する方針が答申された。しかしこれに日本精神神経学会は反対声明を出すという経緯があり、いくつかの条件を満たす場合には減額されない例外が設けられた。また、1回の処方において抗不安薬を3種類以上、睡眠薬を3種類以上、抗うつ薬を4種類以上・抗精神病薬を4種類以上投与した医療機関は、定期的に状況を集計して厚生労働省へ報告することが必要になった。 向精神薬多剤投与により減額されない例外(厚生労働省通達) (イ) 他の医療機関で既に向精神薬多剤投与されていた場合、初診から6か月間まで (ロ) 現在投与されている向精神薬を切り替える場合、最大3か月の移行期間(年に2回まで) (ハ) 臨時に投与した場合。連続投与期間は2週間以内または14回以内。1回投与量については1日量の上限を超えないこと。投与中止期間が1週間以内の場合は連続する投与とみなす。 (ニ) 抗うつ薬又は抗精神病薬に限り、精神科の診療に係る経験を十分に有する医師として別紙様式39を用いて地方厚生(支)局長に届け出た者が、患者の病状等によりやむを得ず投与を行う必要があると認めた場合 臨床経験を5年以上有する医師であること。 適切な保険医療機関において3年以上の精神科の診療経験を有する医師であること。 精神疾患に関する専門的な知識と、ICD-10の「3」の「(1) 疾病,傷害及び死因の統計分類基本分類表」に規定する分類をいう)において F0 から F9 の全てについて主治医として治療した経験を有すること。 精神科薬物療法に関する適切な研修を修了していること。 — “平成26年3月5日付け保医発0305第3号「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について” (プレスリリース), 厚生労働省 近畿厚生局, (2014年3月5日), http://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/iryo_shido/documents/kouseishinyaku-tuuti.pdf 2016年度の診療報酬改定においては、減額裁定される条件が「3種類以上の抗不安薬、3種類以上の睡眠薬、3種類以上の抗うつ薬又は3種類以上の抗精神病薬の投薬」へと強化された。さらに薬剤総合評価調整管理料(250点)が新設され、入院および外来において6種類以上の処方薬がなされている場合、これを2種類以上カットした場合には診療報酬算定されるようになった。2017年より、抗不安薬・睡眠薬の添付文書を改訂して長期連用を避け、依存症や、急な大幅な減薬による離脱症状についての注意が追加され、依存のリスクを高める類薬の重複処方についても注意が促されていた。 2018年度より「4種類以上の抗不安薬および睡眠薬の投薬を行った場合」に減算されることが追加され制度上の通常の想定は3剤までとなり、ベンゾジアゼピン系(あるいは同じ作用機序)の抗不安薬、睡眠薬が12か月以上の継続処方の場合は、診療報酬の減算(▲13点)となった。 2018年度診療報酬改定 第5部 投薬 3種類以上の抗不安薬、3種類以上の睡眠薬、3種類以上の抗うつ薬、3種類以 上の抗精神病薬又は4種類以上の抗不安薬及び睡眠薬の投薬(臨時の投薬等のもの 及び3種類の抗うつ薬又は3種類の抗精神病薬を患者の病状等によりやむを得ず投 与するものを除く。)を行った場合 18点 1以外の場合であって、7種類以上の内服薬の投薬(臨時の投薬であって、投薬 期間が2週間以内のもの及び区分番号A001に掲げる再診料の注12に掲げる地域 包括診療加算を算定するものを除く。)を行った場合又は不安若しくは不眠の症状 を有する患者に対して1年以上継続して別に厚生労働大臣が定める薬剤の投薬(当 該症状を有する患者に対する診療を行うにつき十分な経験を有する医師が行う場合 又は精神科の医師の助言を得ている場合その他これに準ずる場合を除く。)を行った場合 29点 1及び2以外の場合 42点 — “平成30年度診療報酬改定について” (プレスリリース), 厚生労働省, (2017年), https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html
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