政府による人事介入
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 12:56 UTC 版)
第1期から会員を務めた伏見康治によると、科学技術行政協議会に出席する委員を日本学術会議(以下、学術会議)から推薦し、政府がその人物を委員として発令することになっていた。しかし、羽仁五郎と山田勝三郎については政府は発令を出さず、欠員を生じながら協議会が開催されていたという。 2014年(平成26年)、会員105名の推薦時に政府が理由説明を要望。会員任命はそのまま行われたが、最終選考に残った12名を加えた117名の名簿も政府に提出した。2016年(平成28年)、補充人事で官邸から事前説明を求められ、日本学術会議は優先順位を付けて候補を提示。しかし官邸から難色を示されため、日本学術会議は補充を断念した。これに伴い、翌2017年の会員推薦でも事前説明を実施した。当時は大西隆会長の時代であり、元外交官でジャーナリストの佐藤優は、大西会長が事前説明というルール変更を一旦受け入れたことの問題点を指摘した。 2020年(令和2年)10月1日、新会員の任命が行われたが、任命権者である菅義偉首相は理由を明かすことなく、学術会議が推薦した105人のうち6人が除外された。2004年に組織内部からの推薦を受けて会員に任命される制度となって以降、除外される措置は初めてであった。『しんぶん赤旗』のスクープが契機となり、学術会議の独立性や学問の自由が損なわれるとの批判が巻き起こる。2020年10月1日付で会長になった梶田隆章は翌2日、説明と6人の任命を求める要望書を同会議に提案し、同月3日に同会議は内閣府に送付している。 同月5日、菅義偉首相は記者会見を行い、(1)学術会議は政府機関であり会員は公務員、(2)(当時の中曽根康弘首相が拒否権はないと答弁した)1983年当時は学会推薦であったが、現在は個々の会員が推薦する形に変わっており会員が自分の後任を指名する事が可能、(3)学術会議は従来よりそのあり方について議論されており、総合的、俯瞰的な活動が求められているといった点から任命について法に基づき判断する必要がある、と釈明した。その後、2016年の補充人事で官邸が難色を示して補充を断念したこと、2017年の会員推薦時には事前説明を実施していたこと、6名に難色を示したのは杉田和博官房副長官であったことも明らかになる(詳細は「日本学術会議会員の任命問題」や「菅義偉内閣#日本学術会議会員の任命問題」を参照)。 90以上の学会が共同声明を出し、大学や市民団体も抗議声明を出した(その総数は10月末には600団体を超える)。また、ネイチャーなどの世界的学術雑誌も批判を行い、野党第一党である立憲民主党の枝野幸男代表なども「明確な違法行為」と非難した。一方で任命を拒否された大学教授の教え子に対する嫌がらせも発生したという。また、同年10月7日には自由民主党の下村博文・政務調査会長は政府へ提言し、日本学術会議の在り方自体を検討・議論し直す考えを示し、日本学術会議のあり方問題が議論されていく(詳細は「#2020年の見直し論議」節を参照)。
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