提携により導入された技術
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「東急7000系電車 (初代)」の記事における「提携により導入された技術」の解説
1960年2月、東急車輛社内に臨時の技術開発部が設けられ、技術者がバッド社に赴いて技術研修が行われた。帰国後もバッド社との緊密な連携のもとに技術の習得が進められ、いくつもの画期的な新技術が導入された。 鋼製車両との鋼材の厚み比較 鋼製車両ステンレス製車両減少率屋根板 1.6mm 0.4mm 75% 側板 2.3mm 0.8mm 65% 台枠 4.5mm以上 5.0mm以下 - 側骨組 3.2mm 1.5mm 53% 垂木 2.3mm 1.0mm 57% 本系列では従来のステンレス鋼よりも強度を高めた高抗張力ステンレス鋼を含む厚さ0.4mm - 5.0mmの鋼材を採用し、日本国内での調達が困難だった一部の部材や加工装置はアメリカから輸入された。屋根板には厚さ0.4mmの部材が用いられるなど、従来より薄い部材が用いられた箇所もある。これらの部材の溶接に際し、もともと熱に敏感なステンレスには従来からスポット溶接が採用されていたが、バッド社がスポット溶接の際の電流・時間などの条件管理を通じて開発した、「ショット溶接」と呼ばれる工法が本系列では新たに採用された。図面に指定された部品形状、精度などを厳格に守る必要から、自動電流調節装置や自動溶接条件記録装置が用意され、工程では多くの治具が使用された。 床下配線や床下機器の取り付けでは台枠が完成した時点で裏返して艤装する「反転艤装」と呼ばれる方式が採用された。これもバッド社が採用していた工法であり、上下を反転させずに終始上を向いて作業をする従来の工法に比べて、作業者の負担を減らすことができる上、本系列では事前に製作された10分の1スケールの模型を確認しながら施工する方法で作業効率が向上し、この工法は以降のステンレス車両の製造にも取り入れられた。しかし、従来の工法では構体が完成した時点までに電機品が用意されていればよかったが、反転艤装の場合は台枠が完成するまでに全ての電機品を用意する必要があり、工程が長い電機部品が必要な場合は車両の製作期間全体が長くなってしまう欠点があった。 生産ラインの構成では、普通鋼車両の生産ラインから生じた鉄粉がステンレス鋼の表面に刺さって腐食することを懸念したバッド社が、オールステンレス車両の生産ラインを鋼製車両のものと分離することを求めたため、オールステンレス車両専用の工場を新設して対応、新工場が1961年9月に完成した。各工程で使用される機械のうち、溶接機械や加工機械など特殊性の高いものはアメリカから輸入され、東急車輌がオールステンレス車両の製造にあたって設備投資した2億3518万円のうち、輸入分はおよそ4分の1にあたる6254万円分を占めた。機械や装置類の中には、電源電圧の違いに対応する改造が行われたものがあるほか、バッド社から派遣された担当者は1人で扱えても東急車輌側の担当者は2人がかりでないと扱えない機械類があったため、これらについては操作法の変更が行われた。 製図法、部品表作成、材料手配など一連の設計業務などは全てバッド社の方式に沿うことになり、過去の類似設計に頼ってこれまで強度計算を行っていなかった細かい部位の強度計算も行われた。 作業の各段階では数ステップの品質試験が義務づけられており、それらをクリアしなければ部材を次の工程に送ることはできない決まりになっていた。 バッド社との契約には英文のバッド社のライセンス下で製造されたことを示す銘板を「東急車輌」の銘板と併設することが含まれており、バッド社側は当初、車両の内側と外側の両方に銘板を設置することを求めていたが、東急車輌側が外側設置に難色を示したため、車内のよく見える位置のみに設置することで決着した。
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