市民図書館、知的自由、プライバシー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/03/04 09:27 UTC 版)
「アメリカ図書館協会」の記事における「市民図書館、知的自由、プライバシー」の解説
ALAにはジュディス・クラグ (Judith Krug) が率いる「知的自由擁護事務所」(Office for Intellectual Freedom) がある。この事務所はALAが「あらゆる個人が、いかなる制約も受けず、いかなる観点に基づくものであれ、情報を探求し享受する権利であり、どのような問題、主張、運動が展開されたものであれ、表明された思想へのアクセスを保証するもの」と定義する、「知的自由」を奨励することを任務としている。ALAはこれに関して「読む自由宣言」(Freedom to Read Statement)および「図書館権利宣言」 (Library Bill of Rights) をとりまとめている。 知的自由を擁護する立場から、ALAは図書館の所蔵資料の検閲に反対している。ボストン郊外の中等学校から書籍を排除する動きに対して、ALA「知的自由擁護事務所」の副代表デボラ・キャルドウェル=ストーン (Deborah Caldwell-Stone) は、「我々は書籍が排除されること無く保持されることを望んでいる。(排除の試みは)究極的にはあらゆる議論から思想を排除することに他ならない」とインタビューで述べている。また、児童ポルノに関連する議論については「誰かの〈ポルノグラフィー〉は他の者の〈ミロのヴィーナス〉であり、あるいはミケランジェロの〈ダヴィデ像〉である。…ある人のいう〈ポルノグラフィー〉はスポーツ雑誌の水着特集であるかもしれない」と述べている。 1970年、ALAは史上初のレズビアン、ゲイ、両性愛者および性転換者の専門職団体である「ゲイ解放対策委員会」を創設した。 1999年、ラジオのパーソナリティであるローラ・シュレッシンガー (Laura Schlessinger) はALAの知的自由擁護路線に対して異議を唱えるキャンペーンを行った。これは特に、ALAがそのウェブサイトに設置した十代向けのあからさまな性教育サイトへのリンクの削除を拒否したことに対するものであった。しかしながら論説筋は、シュレッシンガーは「まるでALAが〈子供〉向けのポルノはOKだと言っている、というかのようにALAの立場を歪め、間違った印象を与えた」として非難した 。 ALAは図書館使用者およびACLUとともにアメリカ合衆国のインターネットにおける児童保護法 (Children's Internet Protection Act) について提訴している。この法令は図書館が提供するインターネットアクセスに対して連邦E基準のフィルタリングを課すもので、児童による「猥褻物、児童ポルノ、あるいは未成年者に有害な視覚表現」へのアクセスを避けるための「技術的対策」を求めるものであった。審理において連邦地方裁判所は当該法が憲法違反であるとして廃止を求めたが政府は上訴し、2003年6月23日、合衆国最高裁判所はこの法は政府の資金提供の見返り条件として合憲であると判断した。当該法を支持する中で、最高裁判所は合衆国訟務局長の口頭弁論時の見解を敷衍して、この法律の合憲性は「政府が主張するのように、成人ユーザーの要求に対しては遅滞なく図書館員がフィルター装置を解除、あるいはフィルタリングソフトウェアを無効にする限りにおいて」保証されるものであるとしている。 2003年、ALAはいわゆる米国愛国者法 (USA PATRIOT Act) の一部は「図書館使用者の憲法に保証された権利およびプライバシーの権利を侵害する危険がある」としてこれに反対する決議を採択した。以来、ALAとそのメンバーは議会に働きかけ、また地域コミュニティへの教育活動やメディアに対して当該法が図書館使用者のプライバシー権を侵害する潜在的な危険を孕んでいるということを訴え、この法律を改正しようと努めている。また、ALAは愛国者法の合憲性を問うた個人による訴訟案件についても意見書を送っている。この中にはコネチカットの四名の図書館員による、図書館の統合後に図書館使用者に関する情報を求めるFBIによる召喚状 (National Security Letter) が送達されたことに対する訴訟も含まれている。数か月の法廷論争の末、FBIが召喚状を撤回することで審理は終えられた。 ALAは知的自由、プライバシー、市民図書館を擁護するALAを支援する方法の一環として、ユーモラスな「ラディカル図書館闘士」(radical militant librarian) バッジを図書館員に販売している。このバッジのデザインは、情報自由法 (Freedom of Information act, FOIA) の要請に基づいてFBIの電子プライバシー情報センター (Electronic Privacy Information Center, EPIC) が提出した資料を皮肉ったものである。この資料の中には、FBIのエージェントが当局が愛国者法215条による秘密権限を行使しないことに不満をもらしつつ「ラディカルな図書館闘士ども」を愚痴っている一連のEメールが含まれていた。
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