大韓民国の国璽
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大韓民国の国璽は、大統領令である「国璽規定」に基づき、憲法公布文の全文、重要な外交文書や勲章・褒章証及び国家公務員任命状などに使われる。現在の国璽は5代目で、2011年10月25日から使用されている。印文は訓民正音(ハングル)で「대한민국 (大韓民国)」と横書き(2行横書で上側が「대한 (大韓)」、下側が「민국 (民国)」)で刻されている。 初代 初代国璽は大韓民国が建国された翌年の1949年5月に製作され、1962年末まで使用されたが、この国璽は行方不明となっている。6.6cm四方の正方形で、印文は漢字篆書で「大韓民国之璽」と彫られていた。握り部分の形状は龍の形とされるが、文化広報部(当時:現在の文化体育観光部)が国家記録院に渡した1958年の写真資料では、握り部分が犬の形をしており、デザイン自体も不明である。追跡調査で、国璽の製作所がソウル市中区忠武路の「天上堂」である事が判明している。なお、行方不明の初代国璽を見つけるため、懸賞金をかけると報道されている。 2代目 第2代国璽は1962年に製作され、1963年から1998年末まで使用された。7cm四方の正方形で、印文はハングル篆書体で「대한민국 (大韓民国)」と横書きで彫られている。材質は銀製、把手には亀の模様が施されている。初代国璽を紛失したため、以降、役目を終えた国璽は国家記録院で永久保存されている。 3代目 第3代国璽は1999年1月26日に政府樹立50周年の記念事業の一つとして行政自治部(当時:現在の行政安全部)の依頼で製作された。10.1cm四方の金印で重量は2.15Kg、印文の字体は「訓民正音」の版本体で、把手には一双の鳳凰が無窮花の花びらを口に挟み天を舞う姿が施されている。3800万ウォン相当(当時)の18金を使用して韓国科学技術院で製作された。金75.2%、銀11.8%、銅11.6%、亜鉛1.4%の18金製で、1999年当時で5450万ウォンの製作費が掛かった。行政安全部によると、第3代国璽は年平均1万6000回使用され、9年間で14万4000回前後使用された。国家公共記録物の保存・管理実態調査の一環として、2005年に韓国原子力研究院に送って精密検査を行ったところ、国璽にひびが入っている事が判明したため、新しく製造される事となった。第3代国璽は1999年2月から2008年2月21日まで使用されていた。なお第4代国璽が廃棄されたため、第5代国璽が造られるまで第3代国璽をレーザー溶接で補修して使用した。 4代目 第4代国璽は、2005年10月に製作することが決定され、2006年3月に国璽製作諮問委員会の設置、同年9月から11月の一般公募(国璽模型国民大賞)などを経て、書体(訓民正音体)や製作方法、諸元、製作者に玉璽篆刻匠人の閔弘圭(ミン・ホンギュ)を決定した後、2007年4月から製作が行われた。2008年1月30日に「第4代国璽献呈式」が行われ、「国璽製作団」から第4代国璽及び国璽儀装品16種が引き渡された。鳳凰が座した形の把手が施され、縦横高さはそれぞれ9.9cm、材質は前回と同様に金合金である。また、韓国原子力研究院で実施された非破壊検査でも問題ないことが判明している。総製作費は2億2000万ウォンと報道されている。 2010年8月20日、第4代国璽の製作団は伝統方式ではなく現代式で国璽を製作し、さらに余った金を横領していた疑惑に関連して韓国警察庁が調査に着手した。また余った金で印鑑を作り、公職者に提供した疑いも出ている。閔弘圭は当初、伝統方式で作製したと疑惑を否定していたが、9月2日の取調べで「京畿道利川にある作業場の電気窯で製造した」、「国璽を製作する伝統技法は知らない」と証言した。10月4日に行われた国会行政安全委員会国政監査で、孟亨奎行政安全部長官は国璽にハングルで刻まれた『大』の字の下に閔弘圭の名前が漢字で刻まれているのを発見したことを明らかにした。その後、警察による調査で、国璽の取っ手の鳳凰のくちばしの下に閔弘圭の姓が漢字で刻まれていることや、鳳凰の尾の内側の左右に、縦書きで「太平年」「万歳璽」という字が刻まれていることが明らかになった。 2008年2月22日から使用されていたが、上記の事件に伴い廃棄された。 5代目 2011年10月4日、第5代国璽が公開された。縦横高さはそれぞれ10.4cm、重さは3.38kg。金2.6kgに銀、銅、亜鉛などを加えた合金で制作されており、強度を高め亀裂を防ぐイリジウムも含まれている。持ち手には一対の鳳凰とムクゲがあしらわれており、印文の「大韓民国」の文字は訓民正音解例本の書体に従っている。内部は空洞となっており、持ち手部分と印文が一体で鋳造されている。制作費は2億1500万ウォン。
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