塩害について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 08:25 UTC 版)
ここでいう塩害とは一般的にいう塩害とは異なる。この作品中での塩害は東京湾羽田空港沖に建設中の埋め立て用地基礎に落下した、巨大な塩化ナトリウムの結晶を視認したことにより人が感染・塩化し、死に至る病が広がっていることを指す。入江はこの巨大な結晶を「暗示性形質伝播物質」と呼び、紛れもない生物だと明言している。これに感染・塩化し、死に至った人間の亡骸である「塩の柱」もこの病の感染源となる。ただし直接的に塩を目視しない限り感染効果はなく、そのためテレビ等の映像では塩害にはならない。また塩害発生の初日以降、感染力も徐々に弱まっている。それでも役所が機能を停止するまでに出された塩害による死亡届は延べ300万人分を超え、最低でも推定数百万人以上はいると言われている。入江がこの塩害は結晶を見ると伝染すると考えた理由の大きなものとして、この死亡者の中に視覚障害者が一人もいないという、確率的にありえない事態が起こっていたからであった。 この物語の舞台は結晶が落下した半年後と考えられる。この落下により真奈は両親を失い、また国家が臨時国会期間中だったこともあってか国会に登院しようとした議員・政府要人がことごとく被害にあい、内閣・各省庁も事実上の壊滅状態に陥る。初日の犠牲者は東京だけで推定5、600万に上るとされ、関東圏の人口は3分の1に減り、日本全国で推定8,000万の人口が半年で失くなっている。また日本だけでなく世界各国にも大小さまざまな結晶が落着したため、海外にも塩害が広まっている。一時放送各局は報道合戦状態で華やかだったが、スポンサーが無くなるとともに採算の合わなくなった局から閉鎖、最終的にはNHKだけしか残らなかった。残ったNHKも放送局として機能せず、再放送だと疑われるニュースだけを延々と流すだけであった。かろうじてラジオが機能しているかどうかというだけで、情報も入ってこない閉鎖された世界となっていた。 辛うじて臨時政府は存在するが、残された地域行政を統括して配給とライフラインの保全をすることに手一杯であり、自衛隊も上層部の全滅によって駐屯地や基地ごとに活動する状態と化している。「塩害特例」という形で治安維持法が復活したものの、警察などのシステムは機能せず、秋庭のように引き出し(技術や知識)を持たない俗に言う社会的弱者は、配給により食料を手に入れるくらいしか生活するすべがない。生きるのが苦しい人々は、誰も住んでいない家や学生などの弱者が住んでいる家、誰もいなくなった商店等を襲撃して物資を手に入れるようになり、治安は悪化を超えてまさに無秩序。生きることが狩る側と狩られる側の戦い無しでは不可能に近い時代となっている。真奈も塩害により狩られる側の人間となったが、そこで秋庭に助けられ暮らす場所を与えられた。
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